5
彼女は折につけ私の前に現れていた。
通学電車で単語帳をめくる姿。
放課後の教室で屈託なく笑う姿。
思いがけず立ち寄った書店でのアルバイト姿。
取引先の受付嬢。
あるいは配属が一緒になった同期。
見かける度、気になっていた
ちょっとムリめの彼女。
そんな彼女の秘密の部屋に居る。
「あの時のままだ・・・」
彼女は決して笑顔を絶やさない。
「楽しいから。嬉しいから。」
そしてつつましやかに、
「見つけてくれてありがとう。」
私は夢を見ているのだろうか。
こんなにも満ち足りた気持ちになったのは
後にも先にも彼女が初めてだ。
夢なら夢で構わない。
いっそ醒めないでいてほしい。
だが今は彼女が夢を見せてくれることを
素直に受け入れようと思う。
なぜなら私はかりそめの客だから。
令和7年3月某日
スカートとPUNPEE
「ODDTAXI」を聴きながら
十六夜京也