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ジューダス・クライスト【第二十一話】お題:異世界転生・歴史探訪 嘘つき同士の友情・最期の晩餐 希望と空虚・臆病者 据え膳食わぬは男の恥 正解と正しいは違う 奇跡は、地中から這い出して DSでドラクエをしながら 孤島の椰子の木に凭れかかっていた。 「やあ君。 あの一撃を喰らってよく無事だったね」 「まあ奇跡的にね」 奇跡は何でもないようにそう応えた。 あれだけ無体な仕打ちを受けておきながら なんという器の大きさであろうか。 そもそも奇跡も己も 器におさまってないんだけど。 「時に奇跡君。 僕の奇跡が止まらないんだがね。 どうにかしてくれないか」 「嗚呼、そりゃ無理だね」 「どうしてだい?」 「君は、僕こと奇跡が なぜ滅多に起きないか知らないのか? やれやれ、教えてあげよう。 それはね、僕は一度起きたら 十年は眠らないからさ。 だから奇跡が起きる頻度は 十年に一度あれば良い方というわけだ」 「そんな馬鹿な。 だってさっき、僕は奇跡を二回起こしたぜ? 一つはパンの奇跡。その次は炎の奇跡だ」 「やれやれ。わかってないな。 いいかい?まずパンの奇跡。 これは君が僕を無理やり 叩き起こしたが故に起きた奇跡だ。 そして炎の奇跡。 これは、君が奇跡に熱を加えたことで その性質が変わったもの。 つまり、君がオコ(怒)した奇跡。 言い換えるなら、君が起こした奇跡だ。 質が変わっただけで、奇跡そのものは 一度しか起きていないのだよ」 「ええ?じゃあこの炎は 君が十年後に眠るまで 止まらないってこと?」 「そういうこと。まあ自分で蒔いた種だ。 自分で刈り取るのが 筋というものじゃないか。 ただ、その筋が中々通らないのが 人間のサガでありサーガというものだ。 せっかく撒いた種が実ったというのに。 げにいとをかし」 私は気付くと奇跡を殴り飛ばしていた。 奇跡の宿らぬ拳はしかし その膂力のみを以て 奇跡をビーチに打ち倒した。 イエス・キリストの細腕にしてこの威力。 私の殴打技術も 随分と堂に入ってきたものだ。 「この野郎。 さっきから変な言語感覚で 人を惑わせやがって。 そんなに目が冴えてるなら すぐにまた眠らせてやるよ」 浅黒く日焼けした細マッチョな奇跡は ゆっくりとした動作で起き上がった。 鼻をこすった彼の手に血が滲んだ。 「貴様…殴ったね!」 奇跡は、某連邦の白い悪魔 もとい茶色い天パのように 殴打されたことにショックを受けて 甘ったれたことを言っていた。 私は間髪入れず その立ち上がって油断している 奇跡の顔面に向かって 再度右ストレートを繰り出した。 奇跡はこれをマトモに喰らい 鼻血を噴き出しながらヨロけて 二、三歩後退した。 「二度もぶった! 親父にもぶたれたことないのに!」 「奇跡の親父って誰だよ」 「父は概念。母は因果と言います」 私が純粋な疑問から突っ込みを入れると 奇跡は丁寧に両親を紹介してくれた。 概念や因果の暴力。 想像したくもないが 割と世に溢れているような気もする。 そんなことも知らないこいつは やはり甘ったれの茶色天パ野郎だ。 しかし、さっきから その天パ野郎の様子がおかしい。 正確には口調や佇まいがおかしい。 なんだか地上げ屋の元締めみたいな 口調になっている。 「それにしても、初めてですよ。 私をここまでコケにしてくれた お馬鹿さんは」 茶色天パ野郎の頭から湯気が昇る。 いや、実際こいつは天パじゃなくて スキンヘッドなんだけど。 そのスキンヘッドが 急に鬼のような形相になって 臨戦態勢のような 朝の公園で毎朝太極拳を欠かさず行っている 老人のような構えを取った。 「絶対に許さんぞ筆山文彦! じわじわと炙り焼きにしてくれる!」 スキンヘッド天パが気焔をあげて 私をフルネームで怒鳴り散らした。 奇跡が怒りに震えている。これはまずい。 なんだか戦闘力が一気にインフレして 片目仕様のメカニカルな眼鏡が 爆散した気がした。 「落ち着けよ。 今炙られてるのは僕じゃない。 現実のエルサレムだ。可哀想に」 「いいだろう!今度は黒焦げにしてやる。 あの十二使徒のように!」 私は既視感を覚える台詞にピンときた。 ここだ。 ここでキレておかないと 恐らく取り返しが付かないことになる。 何となくそんな予感がする。 ええと、どうやってキレよう。 嗚呼、もうどうでもいいや。 「あの十二使徒のように? …ペテロやシモンのことかーッ!」 正直、私は作戦の殆どを 絵守ことユダに任せていたので ペテロともシモンとも ほとんど口を聞いた事がなかったが そんなことはどうでもいい。 私は何とか無理やりに 相手の言葉の揚げ足を取って キレることに成功した。 「な…その姿は…」 奇跡が態度を豹変させて驚愕している。 私はそこに付け込んで 調子に乗って畳みかけた。 「とっくにご存じなんだろ? 僕は現実から君を眠らせ 叩き起こすためにやってきたメサイア。 弟子に無関心でいながら 激しいこじつけによって 目覚めた伝説の救世主… スーパーメサイア人 ジューダス・クライストだ!」 私は気を全開にして奇跡に殴りかかった。 奇跡は瞬間移動してこれを躱した。 音速を超える打撃が乱舞し 異常な熱量を帯びた光弾が 縦横無尽に飛び交った。 常人には目で追うことすら敵わない 激しい戦いが繰り広げられた。 希望の海は、私や奇跡が放った 気功波によってほとんどが蒸発し その地肌が見えていた。 私の猛攻を受けてズタボロになった奇跡が 天高く舞い上がり、両手を掲げて 巨大な禍々しい エネルギーの塊を作り出した。 「この星を消す!」 奇跡がそう叫んで両手を振り下ろす。 巨大なエネルギーの塊は 私の心象世界の地表へ向かって激突。 大爆発が起きた。しまった。 正直、僕の世界そのものを 攻撃されるとは想定していなかった。 っていうか、この世界が滅んだら 一体私はどうなるんだろう。 死ぬのか?否。気を強く持て。 板垣死すとも自由は死なず。 世界死すとも筆山は死なず。 世界なんてなんぼでも拵えてやるわ。 我はジューダス・クライスト。 裏切り、救うものなり。 目の前で地が、割れた。 お猪口が その地割れの中に呑み込まれていった。 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁 ※公式LINEが凍結してしまったので 再登録お願いします🙏ブログ一覧
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ジューダス・クライスト【第十九話】お題:異世界転生・歴史探訪 嘘つき同士の友情・最期の晩餐 希望と空虚・臆病者 据え膳食わぬは男の恥 正解と正しいは違う ローマ軍は走らない。ただ一歩、前へ出る。 盾が前に出る。重なる。壁になる。 そのまま都市の中へ入ってくる。 その先頭に、鷲があった。 アクィラを掲げるレギオン。 ローマである。 だが、先ほど押し返した ピラトのそれとは違う。 私と絵守は神殿の屋上にいた。 その縁に立って、街を見下ろしていた。 「何人いる?」 私はおっかなびっくり絵守に聞いてみた。 「三軍団。いや、それ以上だ」 蒼ざめたように絵守が応えた。 「じゃあ一万五千か」 「いや それに補助兵が五千はいる。二万だ」 「無理じゃん。こっちの倍じゃん」 「嗚呼。だが問題なのは量より質だ。 こいつら、練度が違う。 普通レベルの兵じゃない」 「どれくらいだ?」 「ピエトの地元駐屯ローマ軍は補助軍 アウクシリアが中心だった。 まあ派出所のお巡りさんとでも思え。 対してこいつは 正規軍と遠征軍の複合部隊、レギオン。 本気の戦争仕様だ。 ナチスの第一SS装甲師団 ライプシュタンダルテとでも思え」 「まさにユダヤキラーじゃないか」 冗談になってなかった。 「本当に冗談じゃねえよ。 まさかウェスパシアヌスが出てくるとはな。 正直参った」 「誰だよ。覚えにくい名前しやがって」 「知らないのか。 君だって作家の端くれだろうに。 ウェスパシアヌス。 今は無名だが、後に教科書に載る。 ブリタニアで二十都市を落とし ネロの時代にユダヤ戦争を終わらせた 後の第九代ローマ皇帝だ」 「マジですか」 「史実通りなら 本来は着実に土台を固めて 詰みに持ち込むタイプなんだが… この戦力差だ。 潰せる時は正面から潰しにくるだろうな。 逃げ場を作らず、隊列崩さず 押して、踏んで、終わりってとこだろう」 「とりあえず止まんないってことね」 私の能天気な言葉と同時に ローマ軍が動いた。 合図は聞こえなかった。 しかして全体が同時に一歩を踏み出した。 それだけで、戦いは始まった。 盾が前に出る。重なる。 壁になる。そのまま進む。 群衆がぶつかる。 叫び、石を投げ、押し返そうとする。 だが止まらない。 前進が止まらない。 一歩。それだけで、前にいた者が下がる。 下がらぬ者は倒れる。 倒れた者の上を次が踏む。 「押せ!」下で指揮を執っていた ペテロとシモンが叫び ゼイロータイたちと 共に剣を振って突っ込んだ。 刃が盾に滑る。間隙が、ない。 ペテロたちはそのまま 盾に押し返されて地に臥した。 ローマ軍は、戦っていない。 ただ、進んでいる。 その動きは、波ではない。壁である。 しかも、前に進む壁。 「なんじゃこりゃ。 戦いになってないじゃん」 「嗚呼。人型のプレス機だな。 処分場だ。人がゴミのようだ」 「ムスカってる場合じゃないぞ。 ペテロやシモンたちが 踏み潰されてるじゃないか」 列は崩れない。 一人が倒れても、後ろが埋める。 ローマ軍は更に速度を上げる。 決して走らない。だが速い。 後列が前列に寄り、間隔を詰める。 圧が増す。悲鳴があがる。群衆が崩れる。 押される。潰れる。逃げ場がない。 ウェスパシアヌスは見ている。 叫ばない。命じない。 ただ確認している。 予定通りかどうかを。 これは、勝敗のある戦いではない。 結果の確認である。 と言わんばかりの 実に悠揚たる佇まいである。 「あいつ、何もしてないな。 もう最初から詰ませた気でいやがる」 私はその泰然自若とした 涼し気で太々しい態度に、選評で 「読者を退屈させ 辟易させる点においては出色である」 と私をクサした文壇の 大御所気取り作家の影を重ねてムカついた。 ローマ軍が更に踏み込む。 ついに神殿の石段が軋む。 人が崩れる。鷲が前に出る。 その下で鉄が進む。 誰もそれを止められない。 何故なら、それは 人の動きではないからである。 それは、決まったものがただその通りに 進んでいるだけの現象だった。 ポンティウス・ピラトの軍が 人間だとしたら ウェスパニアヌスの軍はシステムだ。 「野郎。 プログラマー気取りが高みの見物か」 「おい筆山君。 こりゃ僕たちも年貢の納め時だ。 大人しく投降するかないぞ」 「否。君は言ってただろう。 僕にだって奇跡が起こせるかもしれないと」 「え?そりゃあ君は今 主の身体だから、まあ…」 「中身が変ったら、奇跡も寝たまんま 起きてくれないだろうってか?馬鹿野郎。 起きないのを起こすのが奇跡だろうが!」 現状に絶望する絵守の前に 私はゆっくりと手をあげた。 それは本来、かつてパンを生み 病を癒やし、嵐を止めた救世主の手である。 私は丹田に力を籠め そこで練り上げたチャクラ的なものを 掌から放出させた。 すると、何と言うことでしょう。 私の掌から、次々とコッペパンが 溢れ出てきたではありませんか。 「なんと!君、こんなことができたのか!」 「ほら見ろ。 人間、やってみないとわからない。 否。今の僕はイエス・キリスト。 人を導く神たる存在だ」 「筆山君。 あんまり調子に乗ってもしょうがないぞ。 大体、手からパンが出せたからって この状況が覆るわけじゃないだろう」 「ほほう。神の力を侮るか人間よ。 所詮は君も十二使徒として僕のことを 信じ切れなかったようだね。 ぶっちゃけ他の使徒、全員逃げたよね。 途中から一人もみかけてないよ。 ペテロとシモンはぺしゃんこになったけど」 「史実でも彼らは全員逃げたんだ。 この状況で彼らが逃げないわけないだろう。 というかそんなことを 言っている場合じゃない。 ローマ兵はもうすぐそこまで来ているぞ。 ほら、石段を登る 無数の軍靴の音が聞こえないか」 言われてみれば凄い圧を纏った足音の塊が ここ神殿屋上の すぐ下の層まで近付いてきていた。 これはもう、やるしかない。 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁 ※公式LINEが凍結してしまったので 再登録お願いします🙏ブログ一覧
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