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ジューダス・クライスト【第二十話】お題:異世界転生・歴史探訪 嘘つき同士の友情・最期の晩餐 希望と空虚・臆病者 据え膳食わぬは男の恥 正解と正しいは違う 「絵守君。 君は僕を王にしたかったようだがね。 僕は王じゃない。 王であればその器に注がれた 皆の希望の重さを背負い 此処を潔く動かずに、死を選んだだろう。 だが僕は違う。 僕はお猪口一杯分の願いしか 背負っちゃいない。 それでいて皆の希望でできた海を 自由自在に動けるのさ。 その海の先には何があると思う?奇跡さ」 奇跡は己の中には顕れない。 何故なら奇跡は己の規格外の場所 すなわち器の外にあるからだ。 そして私のお猪口は 希望の海の離れ孤島に 奇跡的に辿り着いていた。 そこには ビキニパンツ一丁でサマーベッドに寝転ぶ グラサンにスキンヘッドの 浅黒細マッチョがいた。 私は直感した。 こいつが、こいつこそが奇跡だ。 「さあ、見せてあげよう。 これが君によって叩き起こされた イエス・筆山…否。 ジューダス・クライストの真の力だ。 『奇跡なんて起きっこない』というその思い 裏切って全部救ってやるよ。 おい、いつまで寝てやがる! 起床の時間だ!奇跡!」 私はお猪口から孤島に向かって大跳躍し 成層圏ギリギリまで上昇。 そこから大気を全身に吸い込んで これを逆方向に口から噴射。 弾道ミサイルの勢いで孤島へと急転直下。 呑気に鼻提灯を作って寝ている奇跡の鳩尾に 成層圏からのダイビングニードロップを クリティカルにお見舞いした。 孤島の地面が爆ぜ、表土が吹き飛び その地表には直径十二mほどの クレーターが穿たれた。 奇跡はサマーベッドごと 体を立位体前屈のように折り曲げながら 地中に5mくらいめり込んだ。 肋骨や脊椎、その他諸々が あらゆる臓器と共に爆砕した奇跡は 勢いその口から 大量のコッペパンを吐き出した。 奇跡が吐き出すコッペパンはとめどなく やがて希望の海全域を 自由に踏んで渡れるほど 隙間なく埋め尽くした。 そして、現実でも 同じようなことが起こっていた。 「そんなに暇で退屈なら 大仕事をくれてやるよ。 ウェスパニアヌス!」 私の掌から噴出した 那由他の彼方たるコッペパンは 神殿内のローマ軍を埋め尽くした。 パンは押し合い潰れ合い練り合って 白きマグマのようにローマ軍を 窒息・圧死させながら 外に押し出していった。 ローマ軍はそのまま一気に 街の中央を割って後方まで押し戻された。 湿った小麦の塊に押し潰された彼らは もはやパンと混ざって、その表面に 葡萄パンの粒々のように浮き上がっていた。 街の広場中央には 所々に黒い粒状になった ローマ兵の成れの果てを装飾した 何とも因果で巨大なパンが完成していた。 その中央。 ローマ葡萄パンの頂上辺りに あの野郎がいた。ウェスパシアヌス。 さっきまでふんぞり返って 余裕をかましていたその面貌からは すっかり血の気が引き 面白いくらい真っ青に塗り改められている。 彼の胴体はローマ葡萄パンの中に呑まれ 首だけがひょっこり出ている状態だった。 ウェスパニアヌスの顔は その頂点に添えられたブルーベリーのように ローマ葡萄パンを彩る ワンポイントアイテムと化していた。 「さあ仕上げだ!焼きたてにしてやるぞ!」 「筆山君!もういいんじゃないかな!?」 「うるさい! こんなコンビニ価格百二十円みたいな 冷えたコッペパン これが神のパンって言えるかい? 否!そういえば僕は以前 焼きたてのパンになりたいと 願ったことがあったが 運命もヤキが回ったもんだ。おかげで僕は 焼かれるより焼く方に 回ってしまったんだからね!」 言い終えて私は再び丹田に力を入れて チャクラ的なものを練り上げた。 今度はそれに 『私をクサした文壇の 大御所気取り作家の顔』 を思い浮かべて拵えた怒りの熱を加えた。 そしてそれを、前回と同じ要領で 己が掌から噴出させた。 掌から溢れ出るものが、コッペパンから 紅蓮の炎へと変わった。 それは街を覆い尽くし ローマ葡萄パンをコンガリ焼き上げた。 その頂上で ウェスパニアヌスが地獄のような顔で 悲鳴をあげて苦しんでいる。 はは。おもろ。 「神に背いた天罰、思い知ったか! この大御所気取りの三流文筆家が!」 「凄いぞ筆山君! ところでいい加減 僕たちも熱くなってきたというか 街全体が火の海というか このままじゃジェノサイドヘヴンというか」 確かに当の私も もはや一酸化中毒で倒れそうだった。 しかし止まらない。 さっきから炎が止まらない。 なんということだ。 偉大なる神の手が 滅びの魔手に染まっていく。馬鹿な。 そんな不道徳なことがあってたまるか。 私は奇跡に文句を言いに 再び己が心象世界へと潜っていった。 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁 ※公式LINEが凍結してしまったので 再登録お願いします🙏ブログ一覧
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ジューダス・クライスト【第十八話】お題:異世界転生・歴史探訪 嘘つき同士の友情・最期の晩餐 希望と空虚・臆病者 据え膳食わぬは男の恥 正解と正しいは違う ピラト軍への勝利は、あまりに軽く訪れた。 がために、群衆は暫し歓喜を躊躇し 喝采を逡巡していた。 街や神殿の広場からは 既に戦いの熱が薄れ始めていた。 あちこちに打ち倒したローマ兵の骸だけが 揺るがぬ戦勝の証として 消えずに残っている。 やがて、幾何かの時を経て 「勝った」という言葉が 誰のものとも知れぬまま あちこちで口にされ始めた。 絵守は、それを観察するように 城壁の上に立っていた。 「終わったんですか?」 誰かが問いかけてきた。 絵守は応えない。 終わりには、まだ軽過ぎる。 終わるには、まだ早過ぎる。 むしろ、幕が開くのはこれからだ。 その時。遠くで空気が僅かに震えた。 最初は風のように感じたそれは 果たして風ではなかった。 地が鳴っている。 「来る」絵守が振り返る。 人々もひとり、またひとりとそれに倣った。 地が鳴っている。 遠く、だが確実に近付いてくる。 規則的な震え。 一歩ごとに重く揃い 逃げ場を削ってくるような音。 地平の向こうに、線が見える。 線は動いている。 動きながら、徐々にその幅を太くしていく。 やがて、それは形となって顕れた。 鉄の列。否。ただの列ではない。 同じ高さの盾。同じ角度の槍。 同じ歩幅で進む足。乱れが、ない。 列は、城門の前で止まった。 一気に攻め込む気配はない。 距離を置き、形を崩さぬまま、横に広がる。 次の瞬間、空が鳴った。 見えない線が無数に引かれる。 一糸乱れぬ一斉弓撃が 細刃で満たされた面となって 城壁の上を覆う。 「伏せろ!」絵守の檄が飛んだ。 城壁に立っていた者たちは 寸でのところでこれに従い 矢刃から身を躱した。 間を置かず、スリングの回転音が 密集して風巻くような音。投石である。 重い音と共に 次々と石が飛び掛かってくる。 定めて人を狙ってはいない。 ただ投げた場所を破壊していく。 外れても石は砕け、破片は跳ね 縁が崩れ、足場が揺れる。 盾でも受けきれない重さ。 伏せても尚、安全ではない。 門の上。櫓。石の縁。 立てる場所が、戦える術が消えていく。 上方でゴリアテが ダビデに追い立てられている中 下方では別のものが進んでいた。 木で組まれた枠。四方を囲む柱。 上に渡された梁。 その中央から先端に鈍色の鉄を被せた 太い丸太が縄で吊られている。 三十人ほどのローマ兵が、その内側に入り 左右に分かれ、前後に並ぶ。 丸太に手をかける。 押し、引き、揺らす。繰り返し。繰り返し。 重さが遅れてついてくる。 縄が軋み、梁がわずかに鳴る。 そして、最大限まで丸太を引き絞った 次の瞬間。全ての重さが前へ落ちる。 鈍く重い音が響く。門が震える。 内側で何かが軋みをあげる。 ローマは繰り返す。 間断なく引く。無機質に揺れる。 そしてまた、容赦なく落ちる。 音が変わった。 門が、先ほど辛うじて跳ね返した衝撃を 今はただただ受けている。 木の奥でまた何かが軋む。 見えぬ横木が僅かに撓む。 門はまだ閉じている。 だが、閉じているという 形自体が揺らぎ始めた。 「あれを何とかしろ!」 城壁の上から伏せたまま 矢を放つ者があった。 隙を見て石を落とす者もあった。 それらは狙い通りか偶然か 破城槌の集団へ直撃した。はずだった。 破城槌の外側は盾で囲まれていた。 前方。側面。そして上方にまで油断なく。 矢が当たる。石が落ちる。 それらは盾の塊に弾かれ 滑り、流れていった。 封じたはずの上からの急襲を以て尚 破城槌の中の動きは乱れない。 三度目。槌が門を打ち据える。 今度は遅れて音が来た。 外からの衝撃ではない。 内側で何かがズレる音。 門は耐えている。 耐えているという事実が すでに時間の問題を示唆している。 続けて四度。五度。 叩き付けられた梁が軋む。 ぶち当たった蝶番が 悲鳴のような音を立てる。 内側で梁が押し当てられる。 縄が巻かれる。 人が門に体を預ける。 だが、外の動きは変わらない。 揃え、引き、揃え、落とす。 六度目。何かが外れる音。門が内側へ傾ぐ。 「持て!」内側で叫び声が上がる。 次の一撃で木が裂ける。 もう一度。何の衒いもなく槌が落ちる。 裂ける音。外れる音。崩れる音。 門が、割れた。扉が、内側へ沈む。 木が裂け、石が砕け、白い粉が立ち上る。 壊れたのではない。 支えていたものが 順に外れただけであった。 丸太はまだ揺れている。 叩くべきものがそこから失せて尚 ただ飄々と、当たり前のように揺れている。 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁 ※公式LINEが凍結してしまったので 再登録お願いします🙏ブログ一覧
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