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ジューダス・クライスト【第十四話】お題:異世界転生・歴史探訪 嘘つき同士の友情・最期の晩餐 希望と空虚・臆病者 据え膳食わぬは男の恥 正解と正しいは違う しかし、一体私は何を以て 覚悟が決まらないのだろう。 結局それって、色々なことから逃げてきた 逃げ癖が邪魔してる だけなんじゃないですか? 一回くらい、目のわからない賽を 振ってみたらどうなんですか? ジゴロ賽でTボーンステーキばっか 食ってるんじゃないよ。 骨まで削られて一生地下暮らしになるぞ。 ここまできたら…勝負だろうがッ…!! っと、どこぞの多重債務者の心意気を 己に被せてみたが 人の車に悪戯するようなクズの言うことを 真に受ける気には イマイチなれないのが本音だ。 じゃあ私はいつになったら 本音で覚悟を決めるのか。 いやもう考えても無駄だ。 私が己の頭で考えなくても 哀しいかな事は進んで行く。 それがどこにどう 繋がってるのかはわからない。 わからないが、考える暇がない以上は 考えるのを辞めるしかないじゃあないか。 どうせ私のことだ。 己の頭で考えていたら 私はいつものように、必ずどこかで怯み 卑屈な冗談か、場違いな自嘲か もしくは妙に文学ぶった比喩で 結局何もせず 全てを台無しにしてしまうだろう。 そもそも、そういう堕落した生活の極みに この世界があったんじゃないのか。 だったら もう繰り返すのは辞めにしないか。 とりあえず、今は絵守の声を 借りてたらいいんじゃないか。 いや、借りるのでは足りない。 さっきの、あの感覚。 絵守の言葉は重ねる度に 私の言葉に成り代わっていた。 奪うのだ。私は絵守の言葉を奪う。 私の口から出ているのは 絵守の言葉ではない。 私を経て 私というスピーカーから出る言葉は 全て真実真正に私の言葉だ。 そう。この言葉は 他の誰でもない、私の意志だ。 「ティベリウスは遠い!」 「ピラトはただの代官だ!」 「神を売る者も民を打つ者も 今この都で裁かれる!」 群衆が沸いた。 わあ、とか、おお、とか そんな稚拙な感動詞で済ませるには惜しい 空気を震わす『音』だった。 歓呼と絶叫と嗚咽と祈りが ひとつの巨大な濁流となって 神殿を満たした。 柱廊にこだまが返り、白い石壁が震え 私の足もとにまでその響きが伝わる。 これが信仰。これが心理の力。 何と凄まじい。 私は恐れと感動の 二律背反に挟まれながらも心が震えた。 「上出来だ」絵守が言った。 どこか満足げである。 なんだその教師みたいな評価は。 ムカつく。 しかし絵守よ。 君はこの群衆の喝采が 自分の手柄だとでも思っているだろう。 ところが、そうじゃない。 神様は依怙贔屓のねえお方でな。 私の舌を君の代理にした代わりに その手柄として 君の言葉を私に与えてくだすったんだ。 どういう意味かおわかりかい? わかんねぇだろうなぁ。 じゃあ、ちょいとオツムが上等な私が 凡人への施しとして 君にご教授して差し上げよう。 君の言葉は、私に盗まれたのさ。 つまり、群衆が歓喜しているのは 私の言葉に対してだ。 君に対しての礼賛じゃあない。 君が得意満面で披露した演説は 私と言うスピーカーを媒介にすることで 全て私の口から出た 真実真正の私の言葉に変わった。 いいかい。 言葉って奴はねぇ それを口にしたヤツの ものになっちまうのさ。 君はそこを疎かにした。蔑ろにした。 そりゃ私に盗られて当然だよね。 ましてや文句なんて言えないよね。 なんせ君は自分の言葉を わざわざ自分で 私の中に置いてっちまったようなもんだ。 それを私が拾って、私の口から放り出した。 そしたらそりゃもう 誰がどう見たって私の言葉だ。 例え誰が置いてったにしろ 私の中にあるものを 私の口から出したことに 変わりはないんだからね。 なんてことを実際に口にしてしまったら 今後、絵守から言葉のお零れが貰えなくなる。 私はそんなミスはしない。 賢い盗人は、自ら金蔓を 捨てるようなことはしないものだ。 搾り取れるだけ搾り取るのが 真の大泥棒のやり方よ。 絵守が考えて私が動く。 手柄は勿論、私の総取り。 まあいいじゃないか絵守。 その対価として 君はイエス・キリストであるところの 私の寵愛に預かることができるんだ。 ペテロやパウロよりもね。 本来なら裏切り者と呼ばれ 蔑まれる運命のユダな君に こんな僥倖なことがあるかい? 否。ないね。 天地がひっくり返っても これ以上のことはあり得ないよ。 だから君はこれからも全霊を賭して 私のブレーンとして奔走し 働いてくれたまえ。 君がいなきゃ私に言葉が足りないのは 認めざるを得ない事実なんだからね。 君が私を言葉で補ってこその イエス・キリストであり 私を陰で補ってこその ユダ・イスカリオテだ。 私たちは二人で一つだ。 ジーザス・クライストでも ジューダス・プリーストでもない。 ジューダス・クライストだ。 裏切りの救世主だ。 二人でローマを裏切って 世界を救おうじゃないか。 プリキュア的な感じでさぁ。 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁 ※公式LINEが凍結してしまったので 再登録お願いします🙏ブログ一覧
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ジューダス・クライスト【第十二話】お題:異世界転生・歴史探訪 嘘つき同士の友情・最期の晩餐 希望と空虚・臆病者 据え膳食わぬは男の恥 正解と正しいは違う 神殿内に、大祭司カヤパの姿はなかった。 どさくさに紛れて逃げたのか。隠れたのか。 いずれにせよ、ここはすでに ヤツのものではなくなったというわけだ。 「さあ主よ。神の国へ我らをお導きください」 絵守が私を肘で小突きつつ 連行するみたいに 祭壇に連なる白い石段の上へ 半ば無理やり立たせた。 なるほど、確かにここは見晴らしが良い。 前庭を埋めた群衆の顔が 波のようにこちらへ向いている。 幾千幾万の目玉が いっせいに私という一点へ縫いつけられている。 家系ラーメンの暖簾めいた顔は 内側から麺のようにふやけ 藤原道長やルイ14世の魂も 何処かへと吹き飛んだ。 望月は兎の杵の一撃で砕けた。 私の腰も砕けた。 もう背筋はクニャクニャだ。 嗚呼、ヴェルサイユが燃えている。 私はこんな場所に立つべき人間ではない。 どちらかと言うと芸能人の謝罪会見を見て 「言葉に誠意がねぇんだよな~」 とか一日三食のカップ麺を啜りながら 画面に向かって汁を飛ばす側である。 そんな私が一万人の命運を背負って 演説を打つ。何をご冗談を。 人には持って生まれた器 と言うものがあると言ったでしょう。 私の器はねぇ 自慢じゃないがお猪口ですよ。 そんなお猪口に一万本のワインを 灌いでごらんなさい。 お座敷が海になりますよ。 舞妓も幇間も溺死ですよ。 女将が発狂して番頭と駆け落ちして 鬼平に取っ捕まって白砂の上で 桜吹雪自慢されて 結局は山田浅右衛門の刀の錆ですよ。 嗚呼、浅右衛門さん。 あたいの肝を立派な薬にして 病床のおとっつぁんに 届けておくんなさいまし。 後生です。 それが女将の最期の言葉であった。 浅右衛門は人情で以て この約束を果たそうとしたが 女将のおとっつぁんは行方知れず。 浅右衛門は江戸を出てまで 方々を探し回った。 そしてゴビ砂漠中央まで来て 水が尽きた浅右衛門。 もはやこれまでと命尽き果てる寸前の 浅右衛門の前に夢か現か薬師如来。 「汝が秘薬を試してみよ」。 とは、女将の肝の妙薬のこと。 これも如来の思し召し。 一飲み口内納めたり。 浅右衛門が波打てば、観音菩薩に早変わり。 菩薩は私に語り掛ける 「賽の目に羞恥の概念はありません。 ですからあなたの厄災に頓着しない。 嗚呼、なんと憐れな筆山よ。 三千世界の果ての果て。 私が救って差し上げよう。 解脱の救済ここにあり。 涅槃で虚無へと帰りましょう」。 「おい。何を呆けている。 しっかりしろ。胸を張れ」 絵守が隣で見えない角度から 脊椎の急所を突いてくる。 人が現実逃避の先に 解脱の救済を得る寸前だったというのに なんて厭らしいヤツだ。 タクラマカン砂漠で干物になって 性悪女がそれを四寸ずつに切ったのを 干し魚だと嘘ついて売って そんな女は羅生門でババアに引剥ぎされて そんなババアも下人に引剥ぎされて そんな下人は行方知れずになっちまえ。 全くどいつもこいつも。 おらぁもう人間が信じられねぇ。 ってこれは黒澤明監督の方の羅生門だった。 結局私の思考は藪の中だ。 「おらぁ、おらぁもう己が信じられねぇ」 「なんだ怖気付いたのか? こんなものよりキツイ修羅場を 潜ってきたはずだろ」 「んだども、おらぁ注目されっつごどに からきし慣れてねんだしゃあねぇがら」 私は限界だった。 今まで逃げ続けてきた ツケが回ってきたのか。 まさか此処へきて己の引き籠り根性が マックスで発揮されようとは思わなかった。 考えてみれば私は今生でも こちらへ来てからも 尊敬されるということが全くなかった。 つまり私は尊敬されることに 免疫が皆無なのだ。 ましてや信仰されるなど論外だ。 「それでそんな 東北弁になってしまってるのか」 「へぇ。ほんに めんぼくねぇごどでございますだ」 「仕方がないな。船場吉兆でいくか」 「そいづぁ、どういう意味でございましょうが?」 「まずその東北弁を辞めろ」 「へぇ」 「そして今から僕が囁いた通りに喋れ」 「そいづぁあの、あんたさ 囁き女将さなるっつごどで ございましょうが?」 「良いからさっさと標準語に戻れ。 あと顎を上げろ。王は下を向かない」 そう言うと絵守は影のように 私の後ろに回り込んだ。 私は、とりあえず 顎だけを不自然に持ち上げた。 寝違えた人が必死に 首の位置を戻そうとするような感じだった。 私がグダグダとしている間も 依然として神殿は静まり返ったままでいた。 ついさっきまで石礫やら怒号やら 血潮やらで煮え返っていたこの場所が 不気味なほどの沈黙に包まれている。 彼らは待っている。 何か決定的な言葉が 発せられるのを待っている。 息を潜めて、神が何を言うかを待っている。 一万の目が 一万の願いを込めて私を見ている。 その先には どうしようもない私が歩いている。 否。突っ立っている。 ダメだ。 思考が自由律俳句に逃げようとする。 私が種田山頭火のような 豪気な性格ならよかったのに。 どうして尾崎放哉のような 偏屈甘ったれの方を引いてしまったんだ。 障子を開けてみれば何もない。 嗚呼、本当に何もない。頭が真っ白だ。 私という人間は空っぽだ。 空虚だ。 言葉使いの癖に 言葉が出てこないんじゃ廃業だ。 何が文人だ。 文鎮の重みにも劣る文句しか書けない癖に。 嗚呼、私が私を苛んでいく。 ネガティヴレインボーが 空に汚らしくかかって天を辱めている。 全身から汗が吹き出す。 指先が震える。なんか頭痛までしてきた。 足元がふらつきそうだ。 そして相も変わらず胃が痛い。 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁 ※公式LINEが凍結してしまったので 再登録お願いします🙇♀️ブログ一覧
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