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ジューダス・クライスト【第十五話】お題:異世界転生・歴史探訪 嘘つき同士の友情・最期の晩餐 希望と空虚・臆病者 据え膳食わぬは男の恥 正解と正しいは違う 「最後だ。私は王か?と問え。 そして、彼らに答えさせろ」 「は?」 「群衆に言わせるんだ。王だと。 王は自称すると軽い。他人に叫ばせろ」 確かに自称王様なんてのは裸の大将だ。 人々が認めてこその王だ。 しかしそれを民に強要するってのは どうなんだろうか? 私って王様だよな? おい。王様だよな? 言わなきゃ酷いぞ。 みたいなイタキツい感じが 香らないだろうか。 でも放っておいてもいつ民が私のことを 本当に心から王様と思ってるかなんて 確かめようがないのも事実。 やはり民に胸襟を開いてもらうには 胸倉掴んで本音を吐かせる くらいのキチガイ、じゃなかった 気概がないといかんのか。 否。否否否。そうじゃないだろう。 全く。いつもいつも私ときたら。 そうやってネガティヴに考える癖が あるからダメなのだ。 要は、これは コール&レスポンスというヤツだ。 私は王様だ! みんなもそう思ってくれてるよな? セイ、ホーォ!(ホーォ!) という非常に ピースフルでハッピーでヒッピーな 紫煙に包まれてガンジャに 感謝したくなるような日月火水木金土。 日々めっちゃ吸い浸透モクモクと スモーキング太巻きブリブリエブリデイだ。 怪しいなんてもんじゃ別にねえじゃ。 兎にも角にもコール&レスポンスだ。 民たちとの初共鳴コミュニケーションだ。 私は群衆へ向かって声を張った。 「お前たちは、誰に従う!」 一瞬の沈黙。 それから、バラバラとあちこちから しかし力強い声が響く。 「主に!」 「イエスに!」 「救い主に!」 ダメだ。 コール&レスポンスの 一体感がまだできてない。 ひとりひとりの意志は固い。 だが、時にはそれが ライブパフォーマンスの邪魔になる。 やはりフェスではある一定の一体感が 担保されるべきであって 運営はそこんところに もっと力を入れていくべk 「もう一度。今度は、王と言わせろ」 絵守が思弁に横槍を入れて囁いてきた。 何て空気の読めない奴だ。 こんなオーディエンスのノリが 十人十色の状態でMCを入れたって 同じように纏まらないだけだ。 こういう場慣れしてない客が相手なら 先にある程度セトリを進めて 会場をあっためた方がマイクパf 「いつまで不満そうにしている? 王と言わせろ」 まずい。絵守がちょっと怒っている。 もしかして私の思弁が少し 口から洩れていたのだろうか。 ええい。儘よ。 私は、胸のうちに燻る アーティストとしての矜持と拘りを 見栄と一纏めにして オーディエンスへ投げつけた。 「お前たちの王は、誰だ!」 すると、波が堤を越えるように 一斉に声が上がった。 「イエスだ!」 「イエス王!」 「我らの王!」 その響きは、前庭を埋め、柱廊を打ち 神殿を覆い尽くし、果ては天を穿つように 真っ直ぐに空へと昇っていった。 私はその中心に立ちながら ほとんど眩暈のような感覚に クラクラしていた。 嗚呼、どうやら私は 彼らの王になってしまった。 というか、私は王になりたかったのか? 責任からみると、なりたくなかったと思う。 権威からみると、なりたかったと思う。 「都合の良い事ばっか言うな。 責任と権威はニコイチの ハッピーセットだろうが」 私の中のまともな私が私を叱責した。 私はまともな私に問い返した。 「私は一体何になりたかったのですか?」 「知らん。己で考えろ」 「あなたは私ではないのですか」 「己にはそれがわからんと言っている」 「誰ならわかるんですか?」 「そんなものは己で己に聞いてみろ」 「だから今がその状況じゃないですか」 「賢しいわ小童!」 まともな私はそう言うと 意識の奥へ消えた。流石私だ。 私の中のまともな私でさえも 面倒なことからはすぐ逃げる。 そして逃げた先に何もなければまだいいが 逃げた先にも道は続いている。 しかも逃げれば逃げるほど道はぬかるんで 放っておけば進むも戻るもできない 泥沼に嵌る。 私は今生でその泥沼に沈んだ。 そして沈んだ先にこの世界があった。 だとしたら私は落ちるところまで落ちて 今生の裏側に抜けたことになる。 じゃあ、この世界は 私の世界の真裏にあるのか。 神はこの世界で 私に何をさせようというのだろうか。 私はどうすれば 今生に戻ることができるのだろうか。 正直、その見当はもうとっくに付いている。 それは理屈にもならない簡単な道理だ。 逃げてこの世界に来たならば 逃げずに進んだ先に 元の世界があるに違いない。 神は私の性根を叩き直すために 私をこの夢幻転生地獄へと 堕としてくださったのだ。 実にシンプルな真理だ。 何回転生しても私が今生へ帰れないわけだ。 要は私の精神の問題だ。 では何故、私は未だ これを躊躇して正そうとしないのか。 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁 ※公式LINEが凍結してしまったので 再登録お願いします🙏ブログ一覧
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ジューダス・クライスト【第十三話】お題:異世界転生・歴史探訪 嘘つき同士の友情・最期の晩餐 希望と空虚・臆病者 据え膳食わぬは男の恥 正解と正しいは違う すると耳元に声が降ってきた。 「神の国は、ここに始まる」 その言葉を受けて 私は喉の奥に引っかかった恐怖を 急ぎ飲み下した。 そしてその言葉を繰り返した。 「神の国は、ここに始まる」 声は思いのほか通った。 加えて何とも言えない 厳かな神聖を帯びて響いた。 流石イエス・キリスト。 身体は貧相でも、声帯は救世主仕様だ。 どうですか、このリヴァーヴにコーラスを 全開でぶち込んでピッチシフターで 完璧に整えたような美声。 音響エンジニアなんてこれ聞いてたら 裸足でトンズラして廃業ですよ。 そうして私が私の美声に 酔いしれている間に 群衆からざわめきが起こった。 それは歓声の前触れのようでもあり 泣き出す直前の嗚咽のようでもあった。 「続けろ。次。 お前たちは見捨てられていない。だ」 せっかく人が群衆と共に 己が言葉の余韻に浸ってるというのに なんですかこいつは。 則天武后気取りかよ。 垂簾の政の時の高宗って こんな気持ちだったのかなぁ。ヤだなぁ。 あんな薄い御簾 後ろにいるの絶対バレてるのになぁ。 定期的に耳にかかってくる 吐息も気色悪いし。 っていうか今この状況で絵守の囁き女将が バレてないっぽいのがスゴいんですけど。 信仰心は人を盲目な羊に変えると言うが いや、今は素直に その盲信にあやかっておきましょう。 南無南無阿弥陀の妙法蓮華。 「お前たちは見捨てられていない」 私は観念して 絵守のリヴァーヴエフェクターに 暫時転生することにした。 「主の家を売る者も 主の名を盾に人を喰う者も 今宵ここで終わる」 私は復唱した。 復唱に復唱を重ねた。 己が承認欲求を鉋で削るように。 するとどうでしょう。 人間というものは不思議なもので 言葉を口にしているうちに それが絵守のものでも なんだか少しずつ己のものになってくる。 私が絵守の文句を二句、三句と重ねるうちに それは己自身の感情と混ざり合い 溶け合い、私の言葉ともなり始めた。 「主の家を売る者も 主の名を盾に人を喰う者も 今宵ここで終わる」 私の言葉は今や 私自身のパッションに滾っていた。 前庭のあちこちで、誰かが泣いていた。 誰かが拳を挙げていた。 誰かが地に額を擦りつけていた。 「いいぞ」 絵守の声が、少しだけ熱を帯びた。 「次だ。ローマを恐れるな、と言え」 則天武后がいきなり無茶を言ってきた。 「おいおい。そいつぁちょっと ハイになり過ぎじゃないかい?兄弟」 「言え。今しかない」 せっかくマカロニウエスタンの 吹き替えノリで慎重を促そうとしたのに 全然聞いてくれない。嫌な女帝だ。 私は軽く舌打ちした。 いや、したかった。 しかし群衆の手前 それも叶わなかったので 代わりになんか 神々しい感じの所作で指パッチンをした。 全然音が鳴らなかった。 こんなに掌が手汗で湿っているのに。 私には指パッチンの才能すらないのか。 マカロニウエスタンも 指パッチンも滑り倒した私は もはやリヴァーヴ機能以外 全壊して使えない ポンコツマルチエフェクターのようだった。 まだ電源が入るだけでも奇跡だ。 「ローマを」喉がつかえた。 絵守がすかさず 脊椎の急所を突いて追い打ちをかけてきた。 幸か不幸か、その衝撃で 喉のつかえが取れた。 そして出掛かっていた言葉が そのままポンと飛び出た「恐れるな」。 言ってしまった。知らない。もう知らない。 文句があるなら囁き女将に言ってくれ。 そう言えば船場吉兆は 結局廃業になったけど 私はこれでよかったのか。 則天武后は成功したけど高宗は散々な上に 息子の中宗は則天武后に憧れた 嫁の韋后に毒殺されるし 私は本当にこれでよかったのか。 廃業。簒奪。毒殺。 すべってころんで山がひくい。 嗚呼、もう 自由律俳句の世界で生きていきたい。 分け入っても分け入っても青い山。 「ローマを恐れるな!」 群衆の反応は早かった。 おお!と地鳴りのような声が 広場の底から湧く。 そうか、みんな覚悟の上か。 良かった。良かった。 じゃない。 民衆の熱に己の正義を委ねるなかれ。 彼らは何を保証するものでもない。 私が私を保証しなければ その先には腐敗しかない。 私は傀儡に非ず。 己が意志で覚悟を決めなければならない。 そして その覚悟を決めるために 残された時間はぶっちゃけない。 私は私の腐敗の入口を 足の裏で踏んだ気がした。 そんな私の内心など知る由もなく あるいは知った上で無視しているのか 絵守は尚も囁き続ける。 「ティベリウスは遠い。 ピラトはただの代官だ。 神を売る者も、民を打つ者も 今この都で裁かれる。と言え」 私に拒否権はなかった。 未だ覚悟が決まらぬのであれば 私はこのまま 腐敗したリヴァーヴを奏で続けるしかない。 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁 ※公式LINEが凍結してしまったので 再登録お願いします🙏ブログ一覧
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