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ジューダス・クライスト【第一話】(お題:異世界転生・歴史探訪 嘘つき同士の友情・最期の晩餐 希望と空虚・臆病者・快楽に溺れる 据え膳食わぬは男の恥 正解と正しいは違う・推し活沼) ――裏切りによって救われ 救いによって裏切られた。 引き籠りを始めてから五年が経った。 実家暮らしではない。 生活保護の一人暮らし。 小説が全く書けなくなった私は どの出版社からも見放され いつからか絵守も訪ねてこなくなった。 絵守はもはや大御所画家だ。 今の絵守にかかれば 庭先でバーベキューしながら 肉汁に塗れたナプキンに 左手で描いたウナギイヌだって 数万ドルは下らない。 なんならAIに描かせてサイン入れるだけで 飛ぶように売れる。 というか絵守はだいぶ前から そういうことをやっている。 もはや絵描きというかただの署名人だ。 著名人の署名人だ。 芸術家としては廃人である。 呆れて怒りすら湧いてこない。 いや、怒りが枯れたのか。 かつて絵守は スランプで項垂れている私の姿を 勝手に模写し、その絵が何故か 国際的に評価され 世界にその名を知らしめた。 しかもタイトルは私の実名だった。 コケにされた私は絵守をぶん殴った。 絵守はヤメ検の弁護士団を雇って 容赦なく私を裁いた。 金のない私の国選弁護士は 全く使い物にならず 私は執行猶予なしの傷害罪で コテンパンに起訴され 嘘のようなスムーズな流れで 刑務所に収監された。 そして2年間。 塀の中の煉獄を私は何とか生き延びた。 しかし外の世界に戻ってみると 絵守の絵は尾鰭がついて 評価され続けていた。 私の事件が絵画に纏わるスキャンダルとして これに更なる付加価値を 与えてしまっていたのだ。 「筆山文彦」。 私の実名は絵画と共に悪い意味で 世間に注目されるようになっていた。 そんな私が、新しく小説を書いたら 話題になるだろうか。 冗談じゃない。 何が悲しくてやっと娑婆に戻ってきてまで 事情も解せぬ有象無象に コケにされなきゃならんのだ。 じゃあ名前を変えたらどうか。論外だ。 そんなことをすれば絵守に男として 心まで完全敗北したことになる。 それから私は、小説が書けなくなった。 今じゃ絵守のせいだと気焔をあげて 奴を殴りに行く気力もない。 愉快な反社の仲間たちと 寝食を共にする体験は一回で懲り懲りだ。 そういえば二八番君は元気してるだろうか。 彼とは同じ正業の者同士 随分と支え合ったものだ。 なんだか段々、不良のお歴々の方々の 武勇伝や案件話に傾聴して 乗り気になっていたから こりゃ出獄後は向こう側の人に なってそうだなと思ったものだが。 今も元気にダシコをやっているのだろうか。 辞めときゃいいのに。 頑張って広告業界に戻ればいいじゃないか。 まだ若いんだし。 嵌めた相手にお礼を返す みたいなこと言ってたけどさ。 でもそれも若気の至りなのか。 よし、若いうちにしか できないならやればいい。 私にできるのは、その若さの代償が 浦島太郎の玉手箱にならぬよう 祈ることくらいだ。 なんてことを私が 言えた義理ではないのだが。 何しろ私は、五年前から 国民の皆さまの血税で 何もせずただ日々を 無駄に削っているだけの生ける屍だ。 だからといって 無駄遣いなどしているわけでもない。 生かさず殺さず徳川幕府。 参勤交代路銀で衰退。 どころか私ときたら散歩すらしない。 兎角、何もやる気が出ない。 ゲーム廃人になる気も起こらない。 ただただ苦しみを胸に 毎日天井の染みを数えるだけの生活。 こんな引きこもりが他にいるだろうか。 これって割と常人にとっては 苦行なんじゃないだろうか。 ブッダの修行くらい キツいんじゃないだろうか。 だったらなんで、いつまで経っても 私に解脱の救済が訪れないんだろうか。 嗚呼、楽になりたい。 何もしてないのに苦しい。 というか、この世に 何もしないことほど苦しいことなんてない。 それは、こと私の場合に 特に顕著なだけかもしれないが。 世間から這い放たれた 人間に圧し掛かる重圧。 社会性から切り離された予期不安。 内から己を責め立てる呵責。 己がこれほど引き籠りに 向いていないとは思わなかった。 引きこもりなんて 落伍者の極楽暮らしじゃないか と羨んですらいた。 違う。 怠けるにも才能というものが要るのだ。 そして己はこれの才能に全く恵まれず ひたすら苦渋に苛まれ続けている。 しかしもはや手遅れ。 最初の一年くらいで 乾坤一擲の一念発起をしていれば まだ望みはあったかもしれない。 が、五年という月日は 私から生きる気力そのものを 恐怖というネガティヴに返還し続ける。 毎日、益体もない 希死念慮ばかりを膨らませ続ける。 だったら死ねばいいじゃないか という話だが 人間には生存本能というものがある。 やはり肉体的に苦しいことは 体がこれを極力拒否するように 出来ているのだ。 漫画やドラマのように インスタントには逝かない。 そんな理屈を捏ねずに この雑居ビルの屋上から あいきゃんふらいすればいいものを そんな理屈を殺せずに 何もない生に縋り付いて ここまで生きてしまった。 ここ五年 コンビニの店員とすら話していない。 もはや時代はセルフレジ。 人類はついに 金を払う時すら他人を必要としなくなった。 「こんにちは」「袋ご利用ですか」 「ありがとうございます」 言葉が文字に置き換わり 市井からコミュニケーションが剥奪され 都会には社会復帰の ささやかなトレーニング場すらない。 職安もそのうち ペッパー君だらけになるだろう。 警察はペッパー警部になり 和人はこぞってアメリカ・インディアナ州の ペッパータウン集落に集まり 祖国日本に見切りを付けて新国家を樹立。 国歌はレッド・ホット・チリ・ペッパーズの カリフォルニケイションだろう。 何がカリフォルニアだ。 ブルジョワの堕落め。 そんなところに移住するくらいなら 私はスリランカで菩提樹に塗れて 浄化されたタタリ神みたいに クニャクニャになってしまいたい。 しかしもはや進退窮まっている。 この生活を何とか 楽にする方法はないだろうかと 私は通販で般若心経を購入した。 そしてこれを一日中唱えた。 十万回くらい唱え続けた。 何も起こらなかった。 ヤケになって食生活を 三食カップ麺にしてみた。 非常に苦行である。 もう二日目で胃がムカムカする。 そこで般若心経だ。 色即是空。空即是色。 この世界は俺がみている幻想なんだ。 本当の俺は実はもっと違うところで 溌剌として生きているに違いない。 じゃあこの惨憺たる現実は俺の夢か。 夢なのか。なんだ夢だったのか。 早く言ってくれよ。 そんで早くうぇいくあっぷぷりーず。 いつの間にか掻きこみ過ぎた麺が 気管に詰まり、私は鼻から 豚骨を噴出させながら仰向けに倒れていた。 嗚呼、このまま窒息やら血糖値関係やらで 楽になれないかな。 目の前には相変わらず 天井の染みが広がっていた。 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁 ※𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦開設したので フォローお願いします✨ ※公式LINEが凍結してしまったので 再登録お願いします🙇♀️ブログ一覧
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トニーの馬鹿【思】(お題:タイムスリップ 言語の壁、コミュニケーションの今昔) こうして、両軍の間に 暗黙のクリスマス休戦が取り交わされ 兵士たちは束の間の安息を夜に送っていた。 筆山はだいぶ未来のアニメの話を ロバートに聞かせた。 ロバートは コードギアスの結末を聞いて涙した。 そして深夜。 唐突に、ドイツ軍の塹壕の中から 喧騒が響いた。 何やら揉め事のような雰囲気。 「Hey, lass das!」 「Rauszugehen ist keine gute Idee!」 「しゃらっぷみーは まいはーとうぃるごーおん」 どうも誰かが 塹壕の外に出ようとしているのを 流石に危ないと止めているようだ。 そしてとうとう、その何者かが 塹壕の外へ飛び出てきた。 一人だけ、変なドイツ語?を喋っていた その人だろう。 ロバートが素早くその人影に銃口を向ける。 他のフランス兵も同様に。 「やめろ!」筆山は叫んだ。 ロバートはびっくりしたような顔をして しばらく筆山の方に首を向けていたが やがて塹壕内に向き直って言った。 「Attendez! Ne tirez pas! C’est la trêve de Noël aujourd’hui. Pas de massacre. Vous comprenez?」 どうやら撃つなと言ってくれているようだ。 その間も、変なドイツ語?のドイツ兵は 両手を上げながら ゆっくりとこちらへ近づいてくる。 武器を持っていないことを確認した フランス兵たちは お互いを発砲しないよう説いた。 「Il n’a pas d’arme. Ne tirez pas. Moi non plus, je ne veux pas tirer.」 誰も撃たなかった。 「トニーお前も出て行ってこいよ」 ロバートが耳元で囁いた。 「え?いやそりゃ危なくないか?」 「大丈夫だ。お前のキツイ歌のお陰で みんな久しぶりに人間に戻れたんだ。 向こうも同じさ。誰も撃ちゃしない。」 そしてロバートはまた 塹壕内に向けて演説した。 「Notre héros Tony va sortir comme ambassadeur de Noël. Ne l’arrêtez pas.」 ちょっと止めて欲しかったけど 誰も止めてくれなかった。仕方ない。 筆山は塹壕から思い切って飛び出した。 ドイツ軍の塹壕から銃口の気配。 慌てて筆山は両手をあげる。 それから 目の前の人影にゆっくり歩み寄った。 ロバートの言った通り。 誰一人、発砲する者はいなかった。 やがて、両軍のクリスマス大使は 戦場の真ん中で邂逅した。 いつ発砲されるかわからないまま ここまで歩く恐怖は 途轍もないものがあった。 そしてそれは相手も同じ。 そんな勇気と友好の志を持った相手となら 今日くらい、塹壕から出て平和に過ごそう って話ができるかもしれない。 筆山は握手を求めて手を差し出した。 相手もそれに応えるように 手を差し出してきた。 と、その時。 暗闇でよく見えなかった 相手の顔に月光が差した。 次の瞬間 筆山はそいつの顔をぶん殴っていた。 もんどり打って大地に倒れたそいつの顔は 筆山と瓜二つであった。筆山は更に追撃。 馬乗りになって 己の顔をしたそいつをボコボコにした。 「おい!トニー!貴様! 全部!全部貴様のせいだ! この野郎! 元の場所に返せ!元の場所に戻りやがれ!」 トニーは何も答えない。 おそらく転倒した際に 頭を打って気絶したんだろう。 「何だお前!なんでドイツ軍にいんだよ! 裏切り者め!ふざけるなよ! お前のせいで俺はなぁ…」 それを見ていたドイツ軍は これをフランス軍の騙し討ちと思い 筆山を蜂の巣にした。 フランス軍もこれに応戦して マシンガンを乱射した。 筆山もトニーも みんなグチャグチャのミンチになった。 クリスマスの夜、両軍は 第一次世界大戦において 最も苛烈な戦闘を行った。 後にこの話は 「クリスマスの悲劇」として語り継がれ… …というところでトニーは目を覚ました。 ルームメイトのロバートが眠い目をこすって 二段ベッドの上から覗き込んでいる。 「どうしたんだトニー? いきなり飛び起きて。 やけにうなされてたぞ?」 「ろんぐたいむのーしーゆー。 みーはいんまいどりーむで のべりすとでごんした。 ばってんほわいとぅるーすなみーは あーみーかららなうぇい。 いくすちぇんじのべりすとなみーが あーみーとれーにんぐ。 せやけどさどんりわーるどうぉーに とらぶるとらべる。 みーはくりすますまで なんでんかんでんさばいばるだんす。 ほんでさいれんないしんぎんしたら あーみーずぴーすふる。 みーはそこでとぅるーすなみーと みーつしたばい。 ばってんのべりすとなみーは むかちゃっかふぁいあで とぅるーすなみーを ぱうんどふぉーぱうんどでしふぉんけーき。 ほいであーみーず おーるぶらっでぃうぃんたーすのう れいんぼーまうんてんなってもてん」 「ん~? つまりお前は夢の中でお前に間違われて その途中で第一次世界大戦に タイムスリップして お前はお前に出会うけども 結果的にドッペルゲンガーに絡まれて ボコボコにされるみたいな感じで お前は死んで、そのせいで ドッペルゲンガーもみんなも死んで せっかくのクリスマスが台無しに… ん~?意味わかんねぇ。 なんだそりゃ」 まだ夜中だった。 「とにかく、もう起こすなよ」 ロバートは再び ベッドの上に戻って横になった。 トニーもまた眠ることにした。 ベッドの隅に立てかけた 描きかけの絵のキャンバスが 目に飛び込んできた。 キャンバスには月明りが照らす 異国の夜道が描かれていた。 何かが足りない気がする。 その絵を眺めながら トニーは微睡みに落ちていった。 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁 ※𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦開設したので フォローお願いします✨ ※公式LINEが凍結してしまったので 再登録お願いします🙇♀️ブログ一覧
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