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ジューダス・クライスト【第二話】(お題:異世界転生・歴史探訪 嘘つき同士の友情・最期の晩餐 希望と空虚・臆病者・快楽に溺れる 据え膳食わぬは男の恥 正解と正しいは違う・推し活沼) 「殿。ご決断を」 目を覚ますと 暗い顔をした軽装の武士みたいな奴らが 私を取り囲んでいた。 「え?何?」 「今川軍の攻勢を待っては滅びを待つばかり。 ここが先途。 明日の明朝、最期の名誉のためにご出陣を」 猿のような顔をした小男が 物凄い剣幕で詰め寄ってくる。 これは何ですか。あれですか。 流行りの異世界転生ってやつですか。 私の脳髄はいつの間に 読んでもいないラノベの類に 侵されていたんだ。 いや、広告の力とは恐ろしい。 人の今際の際にまでこうやって ズカズカ踏み込んでくるんだから。 つまり私は今、今際の際に夢を見ている ということか。 するってぇと何かい。 状況から察するに、この私は今 桶狭間前夜の信長ってところかい。 一日署長ならぬ一日信長。 それにしても、よりによって とんでもない一日を選んでくれたもんだ。 神よ。そんなに私のことが嫌いなのかい。 嗚呼そうかい。 「念の為に、城の周りを見回って参ります」 猿が最期の大仕事 のような勢いで飛び出そうとする。 「あ~、いいよいいよ。 こんな夜分に斥候に出ちゃ落馬しちゃうよ。 てかさ、今川義元との戦力差舐めてる? 舐めてますよね? こんな尾張の守護代の守護代が どうにかなる相手じゃないでしょう。 最期くらい笑って散りましょう。 何が名誉の突撃ですか。 そんな何の益体もないことより 今宵は宴じゃ。最期の無礼講の大饗宴じゃ。 とにかく酒もってこい酒」 私はヤタケタだった。 転生しても鬱はどうにもなっていなかった。 今から戦?冗談じゃない。 おそらくこの猿めは羽柴秀吉だろうが 今こいつを外に出すと 今川軍が目と鼻の先で酒宴を開いてるのを なんか凄い士気上げる感じのテンションで 報告してきてくるに違いない。 そうなったら確実に めんどい戦をする羽目になる。 こんな雷雨の中をよ。 無理無理。 あの壁んとこに飾ってある甲冑とか めちゃくちゃ重いに決まってんじゃん。 ここはあれだ。一発、敦盛かましとくか。 「人間五十年、下天のうちをくらぶれば 夢幻のごとくなり。 …っていうのはさ。 人の命なんてマジ一瞬なわけじゃん。 でもね、僕なんかはその一瞬を 最期まで愉しみたいって、そう思うわけ。 今を楽しめない輩は 天国なんて行けやしませんよ。 結局、浮世なんてのは 僅かな時間の中で どれだけ欲望を満たせるかが 勝負だと思うの。 何?武士道?馬鹿言っちゃいけねえや。 それこそ己の本懐に背くことですよ。 ゆとりさとり世代に笑われますよ。 誰が好んで死に急ぎたい奴がありますか。 え?煩悩?はは。 大いに結構じゃないですか。 煩悩煩悩。ぼかぁ煩悩を全うするために 生まれてきたのかもしれないなぁ」 今日は朝まで飲むぞ。 私は権威で以て 一歩も譲らず馬鹿を押し通した。 家臣たちは青い顔をしながらも それに追随するしかなかった。 葬式みたいなヤな感じの宴になった。 酒を注ぐ音が 閑寂の和風広間に寒いくらい侘しく響いた。 「最期の無礼講なんだから 盛り上がっていこうぜ」 私の酒宴激励も半ば無視 みたいな空気だった。 肴には誰も口をつけなかった。 みんなの視線が痛かった。 最悪な酒宴だった。 痛みそのもののような酒宴だった。 今頃、今川軍は 大層盛り上がっているだろうに。 こちらの宵は酔いも回らず 空を覆う闇夜が永遠のように感じられた。 致し方ない。とにかく今、何もしたくない。 そのためならば、私はどんな暗君にもなろう なったろうやないかい。 男には、何が何でも やらなきゃなんねえ時があるんだ。 そして翌日。織田家は普通に滅びた。 そりゃもう圧倒的に滅びた。 今川軍は馬鹿みたいな強さで なんかもう笑った。 降り注ぐ矢の雨の中 私は本丸にちらかった酒瓶に蹴躓き 勢いその先の 土鍋に頭を突っ込んで気絶した。 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁 ※𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦開設したので フォローお願いします✨ ※公式LINEが凍結してしまったので 再登録お願いします🙇♀️ブログ一覧
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トニーの馬鹿【議】(お題:タイムスリップ 言語の壁、コミュニケーションの今昔) 再び、夢を見た。夢の中でトニーは 航空会社時代の親友たち 四人と語らっていた。 もう会えないと思っていた四人の仲間。 今頃、彼らは元気にしているだろうか。 だが夢の中のトニーは 純粋にトニー本人というわけではなかった。 トニーはトニーそっくりな日本人の男に 身体を借りていた。 これは筆山?いや違う。 どうやら波佐間という男だった。 妻を亡くして根暗になっている男だった。 その妻は逢坂命という美貌の人であった。 古語で言うところの超マブいスケであった。 トニーは波佐間が可哀想だった。 しかし、トニーと一体になっている 波佐間は笑っていた。 良かった。この男はまだ笑えるのだ。 トニーは感謝した。 ありがとう波佐間。 あなたのお陰で最期に友に逢えた。 何とか波佐間も 会いたい人に会えるといいんだが。 トニーは考えた。 しかし、考えるうちに不安になってきた。 世界には同じ顔をした人間が 三人はいるという。 ということは、トニーは夢の中とはいえ もはやそれをコンプしてしまった。 そして、ドッペルゲンガーのジンクス。 あの呪いが本当ならば…。 翌朝、トニーは冷たくなっていた。 老衰だった。32歳であった。 「…寿命短すぎねえか?」 ロバートが呟いた。 「仕方ないだろう。 トニーは太く短く生きる宿命だったんだ」 同僚のスコットが言った。 「俺らの知らないうちに 三人分くらいの人生を生きてたのかも」 トラヴィスが絵を持ってくる。 「その絵は?」 「なんかコンクールに出すって言ってた。 画家になるのが夢だって」 「じゃあ俺たちで出しといてやろうぜ」 ロバートが絵を手に取った。 「いいのか?一応、トニーの遺品だぞ」 スコットが少し心配そうな顔をする。 「いいだろ。ひょっとしたら 夢が叶うかも知れないんだし」 トラヴィスは乗り気だ。 「航空会社に軍人、次は画家か。 確かに三人分だな」 「まあそう言うなよ。 トニーは夢追い人だったのさ」 「ところでこれ、何の絵なんだ?自画像か?」 ロバートは訝し気な目で絵を見ている。 「わかんない。 自画像にしちゃ変な絵だよな」 「なんて題名なんだ?」 「確か…よみち…って言ってたような」 「なるほど。夜の道ってことか。 わかんねーけど」 いくら見ても意味がわからない絵なので ロバートは考えるのを辞めた。 トニーの絵は、なんと大賞を受賞した。 絵守彩人という画家との 同時受賞であった。 びっくりしたロバートは 慣れないドレスコードに身を包んで 美術館へ向かった。 トニーの作品は、絵守彩人の作品の隣に 華美に展示されていた。 まず絵守の作品は 作家が俯いて机に向かっている シンプルなものだ。 顔も見えない程に項垂れているその姿から 絶望が色濃く伝わってくる。 『筆山文彦』という題名だ。 聞いたことのない作家だが 実在するのだろうか?まあ創作だろう。 そして、金縁の額に入れられて すっかり立派に見えるトニーの作品。 月明りが照らす夜道を トニーそっくりな男と、美貌の女… 古語で言うところの超マブいスケが 仲睦まじく手を繋いで 幸せそうに笑い合いながら歩いている。 そしてその脇の、道から外れた暗がりで これまたトニーと同じような顔をした二人が 掴み合いの喧嘩をしている。 三人の男と一人の美女は 光り輝く展示の中で 一際幸せそうに 一方では一際険悪そうに見えた。 「やっぱりわけわかんねー絵だなぁ」 ロバートは絵の前に立って 30分くらいその謎を眺めていた。 が、やはり全く意味が解せず 馬鹿馬鹿しくなってきて 考えるのを辞めて帰宅した。 額縁の下に そのわけわかんない絵の名前が より一層わけわからなく印字されていた。 『黄泉路』 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁 ※𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦開設したので フォローお願いします✨ ※公式LINEが凍結してしまったので 再登録お願いします🙇♀️ブログ一覧
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