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罰の配達人(お題:罪と罰)【転】「カードの再発行のため、こちらの書類に 口座番号の記載をお願いします」 「ああ、はい。ここに書けばいいのね」 今のところカケコは成功している。 そして俺がここにいる時点で 通報もされていない。 もしここでバレても 即トンズラすれば足がつくことはまずない。 イージーゲームだ。 「ああ、それから口座番号の最期の4桁。 そこは暗証番号記入でお願いします」 「え?そうなの?」 「再発行手続きの上で 必要な確認事項ですので」 「ああ、そうなの。はいはい」 クリア。この手口は意外に優秀だ。 最初は俺も、そんなにホイホイ暗証番号を 漏らす馬鹿がいるものかと訝った。 ところが蓋を開けてみれば 今のところ打率10割である。 人間ってのは、ルールの前に盲目になる。 こういう規約なので。 こういうルールなので。 そう聞いた瞬間に 自分の頭で考えるのを辞めてしまう。 目の前にレールが敷かれれば とりあえずそこから はみ出ないことが目的になる。 何時何処で誰が敷いた レールかもよくわからないまま。 社会全体がそうだ。 ましてや、レールから外れずに 安穏と生きてきた この手の富裕層ジジババは 手続きというルールを目の前に翳された瞬間 従順な子羊に成り下がる。 あとは俺が犬のように その羊を奈落へと追い立てればいい。 でもそしたら 羊飼いは西澤ってことになるのか。 ムカつくな。まあいい。 せいぜい飼い犬に手を噛まれないよう 上手く笛を吹いてもらおうじゃないの。 …と、ババアが記入を終えたようだ。 「うん…うん…はい。 ご確認させていただきました。 ではその、カードの方は後日発行し 郵送させていただきますので 最期に、ここに ご捺印をお願いできますか?」 「ああ、ええ。そこの冷蔵庫に…」 …冷蔵庫!? ヤバい。思わぬピンチ。 大体のジジババは ハンコを別の部屋まで取りに行く。 少なくとも今まで応接室や居間に ハンコを置いていた輩などいなかった。 しかしてこのババアは、あろうことか すぐ後ろの冷蔵庫脇の小物入れに このハンコ大国ニッポンにおいて 最重要機密道具である ハンコを入れているのである。 なんたる不用心か。 いや、この場合においてはその例外的奇行が 豈図らず俺の急所にヒットしているのだが。 ううむ。どうしよう。 困った。マジで困った。 目の前に獲物のカードがあるにも関わらず これではすり替えることができない。 何とかしてババアに隙を作らせなければ。 「あ、ハンコそんなところに 置かれてるんですか。不用心ですよ。 気を付けてくださいね」 「ええ、確かに言われてみれば… あれ、どこにいったかな?」 「ひょっとしてアレじゃないですか? 用心を見越して ご主人が別のお部屋に持っていったとか…」 「いえ、ありました。 ちょっと奥の方に入ってたものですから」 「ああ、はい。そうですか」 ババアはそれから間を置かず ハンコを持って席に着いた。 「あ~…ではこちらの方にご捺印を… 朱肉ってございますか?」 「え?そちらで ご準備してくださってないんですか?」 「申し訳ございません。 なにせ突然の急命で 取る物も取り敢えず…」 「ああ、そうでしたか。 はいはい、待ってくださいね。 朱肉も冷蔵庫のところに…」 …チッ!俺は内心で舌打ちした。 まあそりゃそうか。 ハンコと朱肉を 別々の場所に置く方がどうかしている。 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁 ※𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦開設したので フォローお願いします✨ ※公式LINEが凍結してしまったので 再登録お願いします🙇♀️ブログ一覧
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罰の配達人(お題:罪と罰)【起】――罪は誰のものでもないが 罰だけは届けに行く。 「芋蔓銀行から参りました。受口と申します」 言いながらババアに名刺を手渡す。 「あの、何が原因かは芋蔓銀行さんの方で まだわかっていないのですか?」 胡乱な目つきでババアが問い返してきた。 なんだか訝しんでいるような口調だ。 こっちのセキュリティに問題が あるんじゃないかと言いたいんだろう。 どうせ普段から迂闊に個人情報を ホイホイあちこちに書き込んでいるくせに 太々しいババアだ。 そうやって被害者ヅラして責任転嫁しながら 生きてきたんだろう。 こんな高級住宅地でふんぞり返ってるような ジジババどもは皆そうだ。 十分前のこともろくに覚えてないくせに 何かあると何でもかんでも 周りのせいにしやがる。嗚呼、ヤダヤダ。 こういう老害にはなりたくないね。 「現在調査中でございます。 被害拡大を未然に防ぐため 取り急ぎ伺いました。 とりあえずこちらの方からご確認を…」 俺は早口でそう言うと、早速 カードの再発行手続きに取り掛かった。 「当銀行の鴨川様名義のカードから 不正な引き落としが確認されました。 今、担当のものを向かわせますので 早急にカードの再発行手続きを よろしくお願いします」 西澤がトバシの携帯で モシモシしたのが15分前。 まともな人間ならこの時点で相手にしない。 知らない携帯番号に 出るなんてことをまずしない。 だが、このババアは出た。 この時点で、こいつが世間並みの判断力も 欠いている馬鹿だということがわかる。 そして西澤の話を鵜呑みにして 半ばパニックになったババアは しばらく思考停止 真っ先に口座を確認することもしない。 そこでババアが冷静さを取り戻す前に 俺が訪問する。 そのギリギリ怪しまれない インターバルが15分。10分だと早過ぎる。 これは現場経験で身に着けた勘だ。 「まあ、口座を確認されたところで 不正アクセスのお引き落としに関しては こちらで処理しておいた~ とでも言っときゃ問題ないよ」 去年、雑居ビルのワンルームで 初めて会った西澤の眼は 真っ赤に充血していた。 カーテンを締め切った部屋には ソファー、長テーブル、丸椅子 液晶テレビ、パソコンデスク トバシの携帯、カップ麺の段ボールなんかが 雑多に配置されていて、纏まりがなかった。 「口座確認からの即通報 ってケースもあるだろう」 「相川くんは心配性だなぁ」 西澤は真っ赤に充血した目を テレビに向けている。 「ちょっとでもヤバい匂いしたら トンズラすりゃいいだけじゃん」 「俺は走るのが苦手なんだよ。 地に足がついてないからな」 「うまいこと言うね」 西澤は画面から目を離さず ガラス管に火を当てた。 水がぼこ、と鳴った。 甘い匂いが部屋に広がる。 なんだかムカついてきた。 「取り分は? 草吸って電話してるだけのヤツが 多く貰う道理はないぞ」 「相川くんさぁ、勘違いするなよ。 案件も替え玉もトバシも 全部こっちが用意してんだよ。 相川くんは全部お膳立てして貰った上で 指示通り動くだけ。立ち位置わかってる?」 言いながら西澤は 天井に紫煙を大きく吹きかけた。 西澤の言い分は最もだった。 俺はそういう細々したことが嫌いだ。 片耳の形が変わるまで 受話器を離さないなんて御免だし 足元を見てくる板屋に頭を下げながら トントン以上の条件で 替え玉を作らせる話術もない。 だが俺は知っていた。 西澤のもう一つのシノギである援デリ。 そこの女がほとんど 外国人少女であることを。 「どうだろうな。 少なくとも俺はロリペド野郎に 頭を下げることは絶対にしない」 「なんだと?」 西澤が初めて赤目をこちらに向けた。 韓流アイドルのなりそこないのような 中途半端に整った顔に、覇気のない無表情。 不愉快な面構えだった。 「お前がトバシ作りに行く口実で タイで滅茶苦茶やってんのは 聞いて知ってんだよ。 んでそこで買い叩いた未成年使って 富裕層に売り飛ばして 自分も商品に手つけてお楽しみか。 いいご身分だよな。反吐が出る」 「相川くん、仕事しにきたの? それとも喧嘩売りに来たの?」 西澤の眉間に八の字が浮かんだ。 修羅場を潜ったことのない浅い溝。 「元泥鰌会の不良 だかなんだか知らねえけどな。 兄貴分に裏切られて組抜けて 最近娑婆に出て来たばっかの影戻りがよ。 仕事振って貰えるだけでも ありがたいと思えや」 「今なんつった?」 殺意が、彼方の塀に常に向けられている 殺意が目の前に溢れた。 「あ、ヤバごめん。言い過ぎた」 西澤がしまった というような顔をして見せた。 「次に兄貴の話をしたら殺す」 冗談ではなかった。本気だった。 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁 ※𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦開設したので フォローお願いします✨ ※公式LINEが凍結してしまったので 再登録お願いします🙇♀️ブログ一覧
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