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罰の配達人(お題:罪と罰)【結】ああ、もうババア、ハンコ押しちゃったよ。 どうしよ。マジで万事休す。 何か、何かないか…。 「…ん?あれ?ここの箇所 すみません ちょっと訂正お願いしたいんですが… どうも、手持ちのボールペンが…」 「はい?どうしました?」 「いえ、ボールペンのインクが 切れてしまったようでして… なにせ急いで出てきて 持ち合わせがこの一本しかなくて…」 「ああ、はいはい。ボールペンですか。 確か寝室に…ちょっと待っててくださいね」 …ボールペン冷蔵庫の脇にないんかい! …はぁ。とはいえ助かった。 何という僥倖。 やはり奇人に奇策あり。されど隙また多し。 というのは俺がたった今 即席で拵えた故事成語もどきであるが こういうのMCバトルで言ったら 出典不明でも湧くかなぁ。 って、そんなことを言ってる場合じゃない。 暴力抜きのヒップホップなんて クソ喰らえだ。ノーモア非暴力。 そんなことを思いながらも 俺の手はオートで カードをすり替える動きをしていた。 「それじゃあ どうもお手数おかけしました。 進捗は追って こちらからご連絡いたしますので」 「はいはい。よろしくお願いしますね。 しかし物騒な世の中になりましたね。 どこで何が悪用されるかわからないわ」 まさに目の前で おそらくあなたの人生一の 悪用がなされようとしています。 そう心で呟いて、俺はババア宅を去った。 公園のトイレで銀行員の扮装を解いて その服を手持ちの鞄に突っ込んだ。 予め下に来ていたユニクロのスウェットと ジーパン上下になった俺は その足でダシコとの 待ち合わせ場所に向かった。 何でもそのダシコは 広告代理店のサラリーマンらしい。 なんだってそんな正業の人間が ダシコなんかやるんだ? むず痒い感情が心中に起こった。 それは約束のコンビニ前に着いてからも 収まらなかった。 男は浅野谷と名乗った。 神田の老舗蕎麦屋みたいな名前しやがって。 ムカつく。 なんでだ? 何で俺は初対面のこの男に ムカついているんだ? よくわからんが 思えば出かけに西澤から この男のことを聞いてから 俺はずっとこいつに ムカつき続けている気がする。 「このカードでそこのATMから 残高全額引き出しておいてくれ」 俺はそう言って浅野谷にカードを手渡した。 それからそのまま反対側の出口へ向かい 浅野谷をほったらかして 西澤の雑居ビルに直帰した。 「しくじった」 「ああ。聞いたよ。 彼、今頃 頑張って走って逃げてるんじゃないかな」 「地獄へ向かってか?」 「まあ、どうしたってそうなるね。 しかし珍しいな。 相川くんが失敗するなんて」 「ダシコの罪が こっちまで波及してきたんだよ」 「君がいつも言ってるやつ? 無知は罪だって。 でもその罪を被るのは そいつのみとも言ってなかった?」 「ああ。だからあいつのは 罪じゃなくて罰だな」 「誰からの?」 俺からの。と言おうとして止めた。 浅野谷が失敗するのは必然だった。 何故なら、俺はババアの家で カードをすり替えなかった。 つまり、あいつに渡したカードは替え玉。 100パーセント監獄行きの片道切符だった。 「西澤。前にお前 安全圏にいる温い自分なんて 罰を受けるべきだ。 みたいなこと言ってなかったか?」 「ん?そんなこと言ってた俺? …まあ俺の言いそうなことではあるような ないような」 「そんで俺なんてさ 罰を受ける前提で生きてるわけよ。 俺は近い将来、兄貴を殺すわけだからな」 「ああ、それやっぱ本気なんだ。 止めないけどさ。意味なく怖いから」 「だから俺は思うんだ。 あいつが被ったのは罪じゃないって」 「罪じゃないなら何なのさ」 「まともな人間の分際で こっちの世界に足を突っ込んだ。 その天罰かな」 言って相川はソファに仰向けに寝転がった。 真昼間でも暗く沈黙している 蛍光灯の錆びた色が 瞼の裏に包まれて消えた。 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁 ※𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦開設したので フォローお願いします✨ ※公式LINEが凍結してしまったので 再登録お願いします🙇♀️ブログ一覧
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罰の配達人(お題:罪と罰)【承】兄貴はハッパのプランターを 勝手に俺の家で栽培して捕まった。 俺が女の家を泊まり歩いている 最中のことだった。 俺は全く事情を知らなかったが 突然、信号待ちの車をノックされ そのまま逮捕された。 しかし俺は取り調べで何も吐かなかった。 大麻取締法違反。 その栽培ともなると罪は重い。 そこに暴対法が乗っかると凄い刑期になる。 幸いにして兄貴は組での重労働に 嫌気が差して逃走。 名簿からは除籍されていたが それでも7~8年は出てこれない。 俺は少しでも兄貴の刑を軽くするために 塀の中から色々と鳩を飛ばした。 ある日、担当刑事が言った。 「お前の兄貴は 全部お前がやったって吐いてるぞ」 俺は我が耳を疑った。 しかし目の前には供述資料がある。 兄貴は俺を裏切った。 俺は兄貴を庇うのを辞めた。 全て本当のことを話した。 だが実際、警察は最初から裏が取れていた。 俺がやっていないこともわかっていた。 全ては兄貴を完全に堕とすため。 そのために俺の証言が必要だった。 俺はまんまと警察の思い通りに 動いてやったというわけだ。 だがそんなことはどうでもよかった。 間もなくして出所した後も 俺は兄貴のことが許せなかった。 あと6年後…7年後… 出て来たその時に、必ず殺す。 ケジメも何もなしに 不義理を踏み倒したままの兄貴には どうせ組からの追手がかかるだろう。 その前に殺す。そう決めた。 「6割だ」 「へ?」 西澤が間の抜けたような声を出す。 「リスクを背負うのは俺だ。 最低でも6割じゃなきゃ納得しない」 「いやいや、流石にそれは横柄でしょうよ」 「だったら土下座しろ」 「…え?なんで?」 「さっきのお前の発言を俺は許さない。 撤回もさせない。帳消しにしたいなら6割。 それが嫌なら土下座して俺の靴を舐めろ」 「あ~…いやはや、参ったね」 西澤は困ったように頭を掻いて 再びガラス管を炙った。 それからまた大きく仰向けに 紫煙を吐き出した。 「わかった。わかった。わかりましたよ。 全く口は災いの元だね」 「自分の商売道具を悪く言うなよ」 俺は部屋に入って 初めてリラックスした調子で表情を緩めた。 「自分で言うのもなんだが 俺は完璧主義だ。 プレイヤーとしての仕事は 完遂すると約束するよ」 「そりゃ頼もしいことで」 西澤は弛緩したような口調でそういうと 元のようにテレビに向きなおった。 「お前、そんなに鬼平犯科帳好きなの?」 「いや、嫌いだよ。正義の顔をした暴力。 全く嫌になるね」 「じゃあ何で見るんだよ」 「俺さ、捕まった事ないんだよね」 「そうなのか」 「そうだよ。 マエがないから海外でトバシ作って 仕入れたりしやすいわけ。 でも相川くんが言うみたいにさ やっぱ安全圏にいて、労力もリスクも テレアポと変わんないようなことやって それでブラックの世界にいる自分って やっぱなんか温いなぁ とか思ったりするわけ」 「まあ、そりゃあ、うん。そうかもな」 「でもさ、これ見てると 俺みたいな温い奴が 容赦なく鬼平に捕まんの。 ざまあねぇなぁって。 ひょっとしてこれ、俺の代わりに 捕まってくれてんのかもなぁって。 そんでいつか俺も、公金で 悪党狩ってるだけの公安ヤクザに捕まって ざまあねぇことになったら 少しはこいつらの 気持ちがわかんのかなぁって」 「ふ~ん。 でもお前みたいな温い奴がいないと 仕入れ役がいなくなって困るんだからさ。 結局は適材適所だよ。 そりゃ お前は良いご身分で羨ましいけどな。 世の中の役回りなんてくじ運だから。 仕方ないよな」 「あらお優しい。いや嫌味か。 しかしムカつくよな、鬼平犯科帳」 「俺は二課刑班課長の方がムカつくけどな」 「うまいこと言うね。 相川くん、MCバトルとか出てみたら? 向いてるかもよ」 「手出していいなら考えとくよ」 あれから西澤の仕事を20回以上受けたが 今のところ一度も失敗はない。 何せ相手は世間ずれした年寄りだ。 世の中のことなどまるでわかっていない。 馬鹿な家出少女と同じだ。 彼女たちはカップ麺1個の報酬で 体を売られる。 それがとても理不尽なことだとは考えない。 何故なら何が理不尽かを知らないから。 「無知は罪」というが その罪を被るのは、そいつのみだ。 だから俺的には どんどん無知の罪が増えてくれると助かる。 みんなで広げよう白痴の輪。 それはとてもとても綺麗な白に違いない。 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁 ※𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦開設したので フォローお願いします✨ ※公式LINEが凍結してしまったので 再登録お願いします🙇♀️ブログ一覧
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