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罰の配達人(お題:罪と罰)【承】兄貴はハッパのプランターを 勝手に俺の家で栽培して捕まった。 俺が女の家を泊まり歩いている 最中のことだった。 俺は全く事情を知らなかったが 突然、信号待ちの車をノックされ そのまま逮捕された。 しかし俺は取り調べで何も吐かなかった。 大麻取締法違反。 その栽培ともなると罪は重い。 そこに暴対法が乗っかると凄い刑期になる。 幸いにして兄貴は組での重労働に 嫌気が差して逃走。 名簿からは除籍されていたが それでも7~8年は出てこれない。 俺は少しでも兄貴の刑を軽くするために 塀の中から色々と鳩を飛ばした。 ある日、担当刑事が言った。 「お前の兄貴は 全部お前がやったって吐いてるぞ」 俺は我が耳を疑った。 しかし目の前には供述資料がある。 兄貴は俺を裏切った。 俺は兄貴を庇うのを辞めた。 全て本当のことを話した。 だが実際、警察は最初から裏が取れていた。 俺がやっていないこともわかっていた。 全ては兄貴を完全に堕とすため。 そのために俺の証言が必要だった。 俺はまんまと警察の思い通りに 動いてやったというわけだ。 だがそんなことはどうでもよかった。 間もなくして出所した後も 俺は兄貴のことが許せなかった。 あと6年後…7年後… 出て来たその時に、必ず殺す。 ケジメも何もなしに 不義理を踏み倒したままの兄貴には どうせ組からの追手がかかるだろう。 その前に殺す。そう決めた。 「6割だ」 「へ?」 西澤が間の抜けたような声を出す。 「リスクを背負うのは俺だ。 最低でも6割じゃなきゃ納得しない」 「いやいや、流石にそれは横柄でしょうよ」 「だったら土下座しろ」 「…え?なんで?」 「さっきのお前の発言を俺は許さない。 撤回もさせない。帳消しにしたいなら6割。 それが嫌なら土下座して俺の靴を舐めろ」 「あ~…いやはや、参ったね」 西澤は困ったように頭を掻いて 再びガラス管を炙った。 それからまた大きく仰向けに 紫煙を吐き出した。 「わかった。わかった。わかりましたよ。 全く口は災いの元だね」 「自分の商売道具を悪く言うなよ」 俺は部屋に入って 初めてリラックスした調子で表情を緩めた。 「自分で言うのもなんだが 俺は完璧主義だ。 プレイヤーとしての仕事は 完遂すると約束するよ」 「そりゃ頼もしいことで」 西澤は弛緩したような口調でそういうと 元のようにテレビに向きなおった。 「お前、そんなに鬼平犯科帳好きなの?」 「いや、嫌いだよ。正義の顔をした暴力。 全く嫌になるね」 「じゃあ何で見るんだよ」 「俺さ、捕まった事ないんだよね」 「そうなのか」 「そうだよ。 マエがないから海外でトバシ作って 仕入れたりしやすいわけ。 でも相川くんが言うみたいにさ やっぱ安全圏にいて、労力もリスクも テレアポと変わんないようなことやって それでブラックの世界にいる自分って やっぱなんか温いなぁ とか思ったりするわけ」 「まあ、そりゃあ、うん。そうかもな」 「でもさ、これ見てると 俺みたいな温い奴が 容赦なく鬼平に捕まんの。 ざまあねぇなぁって。 ひょっとしてこれ、俺の代わりに 捕まってくれてんのかもなぁって。 そんでいつか俺も、公金で 悪党狩ってるだけの公安ヤクザに捕まって ざまあねぇことになったら 少しはこいつらの 気持ちがわかんのかなぁって」 「ふ~ん。 でもお前みたいな温い奴がいないと 仕入れ役がいなくなって困るんだからさ。 結局は適材適所だよ。 そりゃ お前は良いご身分で羨ましいけどな。 世の中の役回りなんてくじ運だから。 仕方ないよな」 「あらお優しい。いや嫌味か。 しかしムカつくよな、鬼平犯科帳」 「俺は二課刑班課長の方がムカつくけどな」 「うまいこと言うね。 相川くん、MCバトルとか出てみたら? 向いてるかもよ」 「手出していいなら考えとくよ」 あれから西澤の仕事を20回以上受けたが 今のところ一度も失敗はない。 何せ相手は世間ずれした年寄りだ。 世の中のことなどまるでわかっていない。 馬鹿な家出少女と同じだ。 彼女たちはカップ麺1個の報酬で 体を売られる。 それがとても理不尽なことだとは考えない。 何故なら何が理不尽かを知らないから。 「無知は罪」というが その罪を被るのは、そいつのみだ。 だから俺的には どんどん無知の罪が増えてくれると助かる。 みんなで広げよう白痴の輪。 それはとてもとても綺麗な白に違いない。 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁 ※𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦開設したので フォローお願いします✨ ※公式LINEが凍結してしまったので 再登録お願いします🙇♀️ブログ一覧
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走れ、二八番(お題:ランナーズハイ)【吽】そして次の日。午後3時。 浅野谷は仕事用のスーツを着て 小都会のコンビニ前にいた。 相手は余程の金持ちということで きっと高級ブランドショップの 近くかなんかで落ち合うのだろうと 高を括っていたのだが、さにあらず。 しかし、何故にこんな 陳腐な場所を指定してきたのか。 「上級国民の方々は 市井で目立つのを嫌います。 だから市井に溶け込んで 普段ご自分たちが絶対にお召にならない 一般国民の生活物資を大いに買い漁って その感慨を味わってみたい。 なんて物好きな方も多いんです」 ははあ、なるほど。 ではその金持ちは、このコンビニごと 買い占めるつもりかしらん。 その場合 俺は何を手伝ったらいいのだろうか。 商品説明?荷物持ち? …そんな思弁に耽っていると 向こうから、上下ユニクロのような ラフな格好をした男が 駆け足でこっちに向かってきた。 男は受口と名乗った。 何でも市井に溶け込むために こんな安っぽい恰好をしているのだと言う。 なるほど異常な金持ちともなると こんな買い物一つするにしても 一々何かと大変な手順を 踏まなければならないのか。 ひょっとしたらこの人たちの魂は 俺たちのそれより 不自由なのではなかろうか。 刹那的異文化コミュニケーションの中 浅野谷は受口に対して ちょっとした同情を勝手に覚えた。 「じゃあ俺は店内の商品を ちょっと物色してるから このカードでそこのATMから 残高全額引き出しておいてくれ。 なに、ちょうど 要らなくなった口座なんでね。 結構お金が嵩張るかもしれないから 紙袋かなんかに入れて纏めたら 俺に渡しに来てくれ」 「ええ? ホントに全額出しちゃっていいんですか?」 「ああ全額だ。早くしてくれ。 こっちも時間が惜しいんでね」 そういうと受口は店の死角に消えていった。 仕方がないので、浅野谷は言われた通りに キャッシュカードをATMに突っ込んだ。 「このカードはお取り扱いできません」。 冷たく突き放すように そんな一文が表示された。 どういうことだ? 受口がカードを間違えたんだろうか。 とりあえず受口を探そう。いない。 外は?いない。 あれ?どゆこと? おーい、受口さーん。 それからしばらく探しても 受口は見つからなかった。 急用でもできたのか? それにしたってカードを置いていくなんて いくら上級国民とはいえ 迂闊過ぎやしないか? というかこれ、金はどうなるんだ?金は? そう思って心配になった浅野谷は 急ぎ焦って架田に電話した。 「はいはい」 「あ、架田さんですか? 受口さんがいなくなっちゃったんですけど」 「ああ、それね。 カードが使えなくなったのは 被害者が勘付いて通報したからだよ」 「へ?」 「だから被害届だされるまでの スピード勝負なんだよ。 受口は、成功した時に、あんたが金を 持ち逃げしないように見張ってた。 だからカードが使用できませんって 表示を確認した時点でとっくに撤退してる。 今、警察がATMからの情報で そっちに向かってるから あんたは… とりあえず頑張って逃げてみたら?」 浅野谷の頭の中で 架田の言葉がグルグル回っていた。 え?なにこれ?どういうこと? 一個も意味わかんなかったんですけど。 「え~と とりあえず逃げればいいんですか?」 「うん。まあマスクもしないで ATMのカメラにばっちし映ってるから ぶっちゃけ無駄なんだけどね。 あ、知ってる? ATMのカメラって 赤外線で全部透けて見えるんだぜ。 だから普通のマスクじゃ 付けても付けなくても一緒。酷い話だよな。 乳首まで透けて見えるんだぜ? 人権侵害もいいとこだよ」 「ええと、じゃあ逃げなくていいんですか?」 「どっちでもいいよ。 大体こういうの引き受ける奴って 馬鹿な大学生とか シャブ中が相場なんだけどね。 あんたみたいに 正業やってる人間は珍しいよ。 こっちは捨て駒で使うだけだから 別に誰でもいいんだけど」 「そうですか。 それにしても架田さんは なんで用済みの僕と こんなにお喋りしてるんですか?」 「そりゃ案件が潰れて暇になったからだよ。 あんたも暇なら逃げたら? そんでどっかで顔変えれば もしかしたらもしかするかもよ」 「そうでしょうか」 「そうだよ。走れフォレストガンプ」 最期まで飄々とした調子で話していた架田は そういって電話を切った。 気が付くと浅野谷は走っていた。 何処へ向かってかはわからない。 何かから逃げるために走っていた。 一寸先すら見えない 不条理の霧の中を走っていた。 理不尽が透明な壁となって 行く先に等間隔に立ち塞がっていた。 浅野谷は走り続けた。 走りながら透明な壁を ぶつかりながら叩き割っていった。 壁を一つ割る度に破片が体に刺さって 刺さったところから 血の代わりに、思考そのものが 流れ出ていくような感じがした。 それは得も言えぬ恍惚感を生んだ。 壁を割る度に、浅野谷の頭の中は どんどん白くなっていった。 浅野谷は走り続けた。 壁を割り続け、体中が破片だらけになった。 頭の中も真っ白になった。 やがて肉が見えない程に 破片が体を埋め尽くした。 すると、白一色の頭の中が突然 絶頂に達したかの如く スパークして弾けた。 と同時に、身体全体の筋肉が膨張し 突き刺さっていた破片を跳ね返し 辺り一帯へ四散させた。 破片は道行く通行人たちに突き刺さって 人々はあまりの痛みにその場に倒れ伏し 転げ回り、のた打ち回った。 対して浅野谷の方は 破片によって空いた穴から 一斉に空気のようなものが 抜け出し始めていた。 その噴射により 浅野谷は遥か天空の青へ 吸い込まれるようにして消えた。 雲を突き破って高みに到達した浅野谷は こんだ地平と平行になり 零式艦上戦闘機のように 空を切り裂きながら大気圏を疾駆した。 太平洋を渡り、アメリカ大陸を 横断しつつあった浅野谷はしかし ドミニカ共和国辺りでガス欠となり 中身を失った体は皮だけのフニャフニャ。 シチューの素を入れ忘れたシチューのような グダグダな存在となってしばらく滑空を続け バミューダトライアングルに 差し掛かったところで謎の渦に巻き込まれ そのまま虚数空間の彼方に消えた。 浅野谷の行方は誰も知らない。 目が覚めて、飛び起きた。 全身が汗でびっしょりだ。 嗚呼、なんだ夢か。 それにしてもなんたる夢か。 縁起でもない。 「28番、何起きてんの。早く寝て」 柵の向こうから 感情の籠らない不愛想な声が飛んできた。 「あ、はい。すみません」 浅野谷は再び 煎餅布団に包まって身を小さくした。 ベトついた汗が不愉快に体を冷やしていく。 浅野谷はその冷たさに身を委ねて静止した。 夜も眩しく雑居房を照らす蛍光灯の光が いつまでも瞼の裏から去ってくれなかった。 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁 ※𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦開設したので フォローお願いします✨ ※公式LINEが凍結してしまったので 再登録お願いします🙇♀️ブログ一覧
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