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Blog@arabian
罰の配達人(お題:罪と罰)【起】――罪は誰のものでもないが 罰だけは届けに行く。 「芋蔓銀行から参りました。受口と申します」 言いながらババアに名刺を手渡す。 「あの、何が原因かは芋蔓銀行さんの方で まだわかっていないのですか?」 胡乱な目つきでババアが問い返してきた。 なんだか訝しんでいるような口調だ。 こっちのセキュリティに問題が あるんじゃないかと言いたいんだろう。 どうせ普段から迂闊に個人情報を ホイホイあちこちに書き込んでいるくせに 太々しいババアだ。 そうやって被害者ヅラして責任転嫁しながら 生きてきたんだろう。 こんな高級住宅地でふんぞり返ってるような ジジババどもは皆そうだ。 十分前のこともろくに覚えてないくせに 何かあると何でもかんでも 周りのせいにしやがる。嗚呼、ヤダヤダ。 こういう老害にはなりたくないね。 「現在調査中でございます。 被害拡大を未然に防ぐため 取り急ぎ伺いました。 とりあえずこちらの方からご確認を…」 俺は早口でそう言うと、早速 カードの再発行手続きに取り掛かった。 「当銀行の鴨川様名義のカードから 不正な引き落としが確認されました。 今、担当のものを向かわせますので 早急にカードの再発行手続きを よろしくお願いします」 西澤がトバシの携帯で モシモシしたのが15分前。 まともな人間ならこの時点で相手にしない。 知らない携帯番号に 出るなんてことをまずしない。 だが、このババアは出た。 この時点で、こいつが世間並みの判断力も 欠いている馬鹿だということがわかる。 そして西澤の話を鵜呑みにして 半ばパニックになったババアは しばらく思考停止 真っ先に口座を確認することもしない。 そこでババアが冷静さを取り戻す前に 俺が訪問する。 そのギリギリ怪しまれない インターバルが15分。10分だと早過ぎる。 これは現場経験で身に着けた勘だ。 「まあ、口座を確認されたところで 不正アクセスのお引き落としに関しては こちらで処理しておいた~ とでも言っときゃ問題ないよ」 去年、雑居ビルのワンルームで 初めて会った西澤の眼は 真っ赤に充血していた。 カーテンを締め切った部屋には ソファー、長テーブル、丸椅子 液晶テレビ、パソコンデスク トバシの携帯、カップ麺の段ボールなんかが 雑多に配置されていて、纏まりがなかった。 「口座確認からの即通報 ってケースもあるだろう」 「相川くんは心配性だなぁ」 西澤は真っ赤に充血した目を テレビに向けている。 「ちょっとでもヤバい匂いしたら トンズラすりゃいいだけじゃん」 「俺は走るのが苦手なんだよ。 地に足がついてないからな」 「うまいこと言うね」 西澤は画面から目を離さず ガラス管に火を当てた。 水がぼこ、と鳴った。 甘い匂いが部屋に広がる。 なんだかムカついてきた。 「取り分は? 草吸って電話してるだけのヤツが 多く貰う道理はないぞ」 「相川くんさぁ、勘違いするなよ。 案件も替え玉もトバシも 全部こっちが用意してんだよ。 相川くんは全部お膳立てして貰った上で 指示通り動くだけ。立ち位置わかってる?」 言いながら西澤は 天井に紫煙を大きく吹きかけた。 西澤の言い分は最もだった。 俺はそういう細々したことが嫌いだ。 片耳の形が変わるまで 受話器を離さないなんて御免だし 足元を見てくる板屋に頭を下げながら トントン以上の条件で 替え玉を作らせる話術もない。 だが俺は知っていた。 西澤のもう一つのシノギである援デリ。 そこの女がほとんど 外国人少女であることを。 「どうだろうな。 少なくとも俺はロリペド野郎に 頭を下げることは絶対にしない」 「なんだと?」 西澤が初めて赤目をこちらに向けた。 韓流アイドルのなりそこないのような 中途半端に整った顔に、覇気のない無表情。 不愉快な面構えだった。 「お前がトバシ作りに行く口実で タイで滅茶苦茶やってんのは 聞いて知ってんだよ。 んでそこで買い叩いた未成年使って 富裕層に売り飛ばして 自分も商品に手つけてお楽しみか。 いいご身分だよな。反吐が出る」 「相川くん、仕事しにきたの? それとも喧嘩売りに来たの?」 西澤の眉間に八の字が浮かんだ。 修羅場を潜ったことのない浅い溝。 「元泥鰌会の不良 だかなんだか知らねえけどな。 兄貴分に裏切られて組抜けて 最近娑婆に出て来たばっかの影戻りがよ。 仕事振って貰えるだけでも ありがたいと思えや」 「今なんつった?」 殺意が、彼方の塀に常に向けられている 殺意が目の前に溢れた。 「あ、ヤバごめん。言い過ぎた」 西澤がしまった というような顔をして見せた。 「次に兄貴の話をしたら殺す」 冗談ではなかった。本気だった。 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁 ※𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦開設したので フォローお願いします✨ ※公式LINEが凍結してしまったので 再登録お願いします🙇♀️ブログ一覧
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走れ、二八番(お題:ランナーズハイ)【阿】――逃げることと飛ぶことの 区別がつかなくなった午後三時。 真昼の都会の繁華街を 浅野谷は必死で走っていた。 今にも後ろから パトカーが追いかけてくるかもしれない。 横合いから警官が躍り出てきて 取り押さえられるかもしれない。 しがないサラリーマンの浅野谷にとって それは現実感の全くない悪夢だった。 普段から営業で外回りをしているとはいえ その移動のほとんどは車である。 浅野谷は決して日頃から 大地に親しんでいる類の人間ではなかった。 地面を蹴る毎に、全身に慣れない反動が ダメージとして返ってくる。 肺臓へ送り込む空気の吸引が追い付かない。 頼りない下半身が 上半身の重みに耐えきれず 重心をグラグラと揺らす。 咄嗟の判断でラマーズ法を試みるも 今度は横っ腹に激痛が走り始めた。 汗が止まらない。 頭のてっぺんから汗が下に下に垂れてくる。 もはやこれが冷や汗・脂汗・運動汗の どれなのか、区別もつかない。 浅野谷は己の運動不足を嘆いた。 そしてこんなことになってしまった 己の浅慮を何よりも厭悪した。 浅野谷にはどうしても金が必要だった。 元カノが癇癪を起こして無茶苦茶にした 家のリフォーム代、約20万円。 突発的な傷心旅行に散財した金 約15万円。 その後ヤケになって入った キャバクラの会計、25万円。 ただの失恋の傷が、気付けば どう工面しても返せないほどに 膿んで膨れ上がっていた。 なんであそこで ドンペリなんて入れてしまったのか。 それは、あのキャバ嬢に 元カノの面影を感じたからよ。 ルルル。男は船。女は港。 ただし、船が港に着くまで 無事かどうかなんてわかんないけどね。 はは。おもろ。 浅野谷は限界だった。 そんなある日 閑寂の耳鳴りがする我が家で一人 浅野谷は求人情報の フリーペーパーを捲っていた。 何か腹案があったわけではない。 単なる現実逃避である。 浅野谷は、もし自分が広告代理店に勤めず 焼き肉屋の兄ちゃんとして 溌溂と働いていたならば そもそも二八の男などと謗られる事もなく こんな事態にも 陥っていなかったのではなかろうか。 そんなパラレルワールドを空想しては 溜息をついていた。 頭の中に黒雲が蠢いていて 今にも降り出しそうだった。 もし降り出してしまえば その驟雨は瞼から流れ出るだろう。 その時は思いっきり嗚咽してやろう。 号泣して叫び回ってやろう。 そしたら神様も見るに見かねて 俺の元にドラえもんを 送ったりしてくれないかなぁ。 しかし現実的に考えれば ここで泣き叫んだ場合 訪ねてくるのはタンクトップに トライバル刺青の角刈りマッチョに違いなく 浅野谷は涙を捨てた。 すると潤んだ瞳にぼやけた 「急募」という文字が浮かんできた。 滲んで見えるその文字は 今まさに世間の荒波に呑まれ、溺れつつある 自らのSOSのようにも感じた。 「簡単なおつかい業務」 「指示通りに動くだけ」 「詳細はDM、又はお電話にて」。 ざっと目を通して浅野谷は呆れた。 呆れ果てた。嘆かわしいことだ。 今時こんなあからさまな詐欺の手口に 引っかかる阿呆がおるのだろうか。 しかしその中に気になる一節を見つけた。 見つけてしまった。「即日5万円~」。 浅野谷はすぐさま電話をかけた。 電話口に出た担当は架田という男だった。 何でも架田は上級国民に対しての 雑務全般を代行するサービス というのを行っているらしく 今回はそのクライアントから突然 明日の買い物に付き合うよう依頼があり 急なことで人手が足りず バイトを探していたのだという。 「ホントに買い物に付き合う だけでいいんですか?」 「ええ。直接クライアント様と 現地で合流してください。 後はクライアント様から 買い物の指示がありますから それに従ってください。 拘束時間は一時間もないと思います」 「え?一時間で五万円貰えるんですか?」 「上級国民の方々は忙しいご身分ですから。 ただ、買い物の大きさによっては 五万と言わず十万、二十万 という場合もありますよ」 「一時間、買い物に付き合うだけで そんなに貰えるんですか?」 「はい。上級国民の方々にとっては 金より時間なんです。 我が社のクライアントは 一時間で何百万と 稼ぐような方々ばかりですから」 浅野谷は上級国民の豪快さに嘆息した。 同時にカースト制度並みに 不平等な世の中を憎んだ。 今からでもマルキシズムに走って ネオ全共闘でも旗揚げしてやろうかしら。 いやそんなことより金だ。 金金金金金。 元気があれば何でもできる。 しかし金がなければ元気もない。 この道を行けばどうなることか。 危ぶむなかれ。危ぶめば銭はなし。 迷わずいけよ。信州には行くな。馬鹿野郎。 浅野谷の心の中に ボンバイエが響き渡っていた。 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁 ※𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦開設したので フォローお願いします✨ ※公式LINEが凍結してしまったので 再登録お願いします🙇♀️ブログ一覧
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