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Blog@Kinpeibai
「愛は茶色く古びて」〜茶色い朝〜⑤私はすぐに呂布&ベスを 避難させてからうんち除去にとりかかった。 否、とりかかろうとした。 しかし、右の部屋にもうんち。 左の部屋にもうんち。 二人の興奮状態はもはや最高潮である。 となれば一体 どこに避難させるべきであるか。 ええい、儘よ。 私は消毒液をまず居間中央の逸品に噴出。 当然、腕にじゃれついてくる 呂布&ベスの猛攻。 もう片方の手でケージの隅に 辛うじてロックする。 なんとかこれをトイレに流し そこそこ匂いが落ちるまで洗浄した。 その時の私が、片手でネイルの相手をして 舐めプの愉悦に浸る 某宇宙の帝王のような 心持ちだったかというと、さにあらず。 正直両手でも足りない。 猫の手も借りたいが、相手は犬だ。 しかもその手は今、助力でも何でもなく 遊んでくれと言う呪詛にとりつかれた 亡者の手招きでしかない。 そして私はなんとか呂布&ベスを 一応の掃除が済んだ居間へと避難させ トイレの掃除にとりかかった。 掃除は、一瞬で終わった。 何故なら、スノコの上のうんちは 完全に押しつぶされていて ほとんど下に落ちており トイレに流す芸術品も 少量だったからである。 …ということはつまり。 私は、ここからが本当の地獄だと 覚悟を決めた。 決めねばならなかった。 愛する我が子のために 起きたての身体に 自らうんちを擦り付けるような 無益無法の洗浄を これより行わねばならぬからだ。 だってそうだろう? このうんちを潰したのは 呂布かベス。手か足か。 最悪、ローリングか。 それは定かではないが ケージの中に手を入れて洗浄しても 大人しくならないこやつらを 洗浄する方法は一つ。 抱っこだ。 地母神の如き慈愛をもって こやつらが如何に 不浄の呪いを帯びていようと それごと包み込む。 それって愛ですかね。 愛ですよ。 愛がなきゃやってられませんよ。 もしくは人間が霊長類と奢り高ぶって 色々な罪障を動物たちに齎してきた その贖罪ですよ。 私は、天に向かって十字を切り 空に向かって九字を切った。 私は切支丹でも陰陽家でもないので なんだか心の隙間風が強くなって 洞窟の向こうへ抜けようとする足取りが 重くなったように感じた。 それでも、私は行かねばならない。 モンスターや罠を怖れて 洞窟を進むのを恐れては いつまでも水を怖れて畳水練を続ける 愚かな自称未来のメダリスト。 そんな奴は五十代くらいになって 適当な酒場で 『俺は昔メダルを取ったことがある』と 虚構と自我の区別もつかなくなり 虚偽罪で逮捕拘留。 ベトナム人とオーストラリア人の 同室になり イスラムとキリストに挟まれて 出てきた時にはすっかり禅の道に目覚め 浅はかなる多家の衆生を救うべく 第四のメシアとして名乗りを上げ ユダヤ、キリスト、イスラム圏から 総攻撃を喰らい頓死する。 そんなおっさんにはなりたくない。 私は己が将来が今この己の一手に かかっているという使命感から ベスをその身に抱いた。 何だか据えた匂いがした。 そんな事はお構いなしに ベスはペロペロと 眼球や耳に舌を突っ込んでくる。 アブノーマルなプレイを 辞めないベスをあやしながら その四肢を清める。 そして全身の匂いを検分。臭い。 どう考えてもほんのり香る 露店の怪しげなお香の匂いがする。 私は犬用スプレーをベスの全身に振りかけ ウェットティッシュでふきふきしては キッチンペーパーでからぶきして仕上げた。 呂布にも同じことを施した。 抱きかかえられて ふきふきされている時の二人は 親の苦労などどこ吹く風。 洞窟から吹きすさぶ風に 涼んでいるかのような悠々自適とした 態度でリラックスしていた。 そんな二人の体臭は、なんというか 初日にお迎えした時の ような感じの匂いではなく やはり少し据えた匂いがする。 しかし私は七難八苦を超えて昨日 この二人をお風呂に 二時間がかりで入れたばかり。 少なくともあと二週間は 余程の緊急事態でない限り お風呂に入れるべきではない。 私は、今日中に トリミングの予約を取ることを心に決め 犬と言うものは 元来これくらいの匂いが丁度良いのだ。 完璧な清潔を求めることは 猫かわいがりというものだ。 こいつら猫ですらないし。 と言う言葉のロジックで以て この件に目をつぶった。 未だ私は洞窟を抜けること叶わず 半ばの洞穴で難儀している。 その洞穴には 据えた犬の匂いが漂っていた。 こうして今日も 私は風の吹く方へ向かって この匂いを体に纏いつつ 歩一歩と足を踏み出すのであった。 🏮 燈 🏮 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️kinpenakari.otoiawase@gmail.com ご予約詳細は🈁ブログ一覧
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「愛は茶色く古びて」〜クロ子、子供貰うってよ〜③「最後に、この子がさっきの子の 同腹犬の女の子ですねー」 白い悪魔、来たれり。 そのポメラニアンの女は ブリーダーさんの腕の中で 既に狂っていた。 目はもはや白目を剥いていた。 荒れ狂うベルセルクであった。 「クロ子、ポメラニアン飼いたいの?」 「うーん。警察犬が務まるくらい 頭良いっていうからさ。 しかしこれは捕まる方の面構えだな」 彼女は捕れたてのハンマーヘッドシャーク のようにのたうち回り 危うくブリーダーさんの 胸の高さから転落しかけた。 慌ててブリーダーさんが腰を低くすると 彼女は錐揉みして回転しながら 地面を滑った。 スパイラルアロー! という必殺技の掛け声の 幻聴が聞こえた気がした。 そして彼女はその勢いのまま跳躍。 一気に呂布の上に圧し掛かり 彼の顔面にパウンドの雨を降らし始めた。 クロ子たちは、彼女を女帝エリザベス …通称ベスと呼ぶことにした。 呂布はベスの電撃的奇襲に 成す術もなく転がり落ちた。 彼はその時 テーブルに強か顎を打ち付けた。 そして地面に頽れた。 呂布は泣いた。本気で泣いていた。 女に辱められた屈辱か。 漢の矜恃を示せなかった慚愧か。 否。いずれにもあらず。 ただ痛いから泣いていた。 「情けない奴!」 アカリは未だガンダムの口になっていた。 「アカリちゃん。 生後二か月のポメラニアンに そんなこというのはやめなよ~。 黒歴史だよ?」 「わかるまい! 音響を遊びでしているシロッ子には!」 「いい加減にしなよ~アカリちゃん。 エゴだよ。それは」 「ぐぬぬ…」 そうこうしているうちに 呂布はすっかり立ち直り ケロッとした顔で大地を走り回っていた。 ベスは呂布と同じ轍を踏み ソファから降りられず歯噛みしている。 と、その時。ベスが飛んだ。 顎を盛大にテーブルに打ち付けて。 ベスは泣いた。以下略。 「やっぱり姉弟ですねー。 行動パターンが似ているというか…」 クロ子が少し馬鹿を見るような目で ブリーダーさんに慰められているベスを眺めながら言った。 「そうなんですよー。 ホントに二人とも元気で仲が良くって…」 ブリーダーさんが言い終わるや否や ベスは駆け出していた。 そして呂布の尻に噛みつき またもパウンド。 呂布は仰向けになり蹴りを連打。 堪らず距離をとるベス。 「これは…アリ猪木状態!」 アカリが珍しく ガンダムネタ以外を口にした。 「何それ?蟻命錠剤?」 「違うよ。プロレスラーとボクサーの 意地の張り合いだよ。世紀の凡戦だよ」 「へ~?アカリちゃんって 格闘技詳しいの?」 「いや、なんかお父さんが言ってた。 ありゃねえよなぁって」 「じゃあアカリちゃんは詳しくないの?」 「トランキーロ!」 「何それ?」 「焦んなよってこと」 「意味わかんないし」 「私もよくわかんないけど プロレスに意味求めるなんて ナンセンスだよ」 アカリとシロ子が駄話に興じていると 助走をつけたベスが宙を舞っていた。 ベスはボクサーではない。 故に飛び出した 必殺のフライングボディプレス。 呂布、堪らず寝返りを打って 背中で防御しようとする。が、間に合わず。 完全なるマウントポジション。 ベスのパンチが呂布の顔面を襲う。 呂布、身を捩ってこれを交わし 時にパリングで以て辛くもこれを凌ぐ。 孔子はすっかり深い眠りに落ちている。 「お姉ちゃんの方が強いんですねー」 クロ子が他人事のように言う。 「あの、止めなくて大丈夫なんですか? なんかお姉ちゃん、思い切り 弟の首元噛みちぎろうとしてますけど」 アカリが漸くタオルを投げようとする。 「大丈夫ですよー。 姉弟ですから、こんなもんです」 そのタオルは、理論的な説明を放棄した 優柔不断な審判によって投げ返された。 その後も姉弟の争いは続いた。 時には地上戦。時には空中戦。 立ち技、寝技、投げ技を駆使しながら 二人は戦い続けた。 しかしてやはり優勢なのは常にベスであった。 しばらくすると 二人は何事も無かったかのように 揃ってケージに入って行き おやつを貰い、寄り添って眠りについた。 「へぇ。ホントに姉弟なんですねー。」 「そうなんですよ。 何だかんだで仲がいいんです」 「…そうなんですかね?」 アカリはブリーダーさんの 言葉を訝っていた。 呂布の首元を狙うベスのあの目。 あれは完全にござっていた。 このままでは、いつか呂布がベスに 『姉より優れた弟など存在しない』などと 難癖をつけられ、ガソリンを撒いた屋上で ベスに焼かれてしまうのではないかしら。 『今は悪魔が微笑む時代なんだ!』 アカリの脳裏に、ダークサイドに堕ちた ベスの嘲笑が響き渡った。 アカリは『じゃあしょうがないかぁ』と 適当に納得して暴走する 己が思弁に折り合いを付けた。 🏮 燈 🏮 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️kinpenakari.otoiawase@gmail.com ご予約詳細は🈁ブログ一覧
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