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Blog@Kinpeibai
「愛は茶色く古びて」〜クロ子、子供貰うってよ〜③「最後に、この子がさっきの子の 同腹犬の女の子ですねー」 白い悪魔、来たれり。 そのポメラニアンの女は ブリーダーさんの腕の中で 既に狂っていた。 目はもはや白目を剥いていた。 荒れ狂うベルセルクであった。 「クロ子、ポメラニアン飼いたいの?」 「うーん。警察犬が務まるくらい 頭良いっていうからさ。 しかしこれは捕まる方の面構えだな」 彼女は捕れたてのハンマーヘッドシャーク のようにのたうち回り 危うくブリーダーさんの 胸の高さから転落しかけた。 慌ててブリーダーさんが腰を低くすると 彼女は錐揉みして回転しながら 地面を滑った。 スパイラルアロー! という必殺技の掛け声の 幻聴が聞こえた気がした。 そして彼女はその勢いのまま跳躍。 一気に呂布の上に圧し掛かり 彼の顔面にパウンドの雨を降らし始めた。 クロ子たちは、彼女を女帝エリザベス …通称ベスと呼ぶことにした。 呂布はベスの電撃的奇襲に 成す術もなく転がり落ちた。 彼はその時 テーブルに強か顎を打ち付けた。 そして地面に頽れた。 呂布は泣いた。本気で泣いていた。 女に辱められた屈辱か。 漢の矜恃を示せなかった慚愧か。 否。いずれにもあらず。 ただ痛いから泣いていた。 「情けない奴!」 アカリは未だガンダムの口になっていた。 「アカリちゃん。 生後二か月のポメラニアンに そんなこというのはやめなよ~。 黒歴史だよ?」 「わかるまい! 音響を遊びでしているシロッ子には!」 「いい加減にしなよ~アカリちゃん。 エゴだよ。それは」 「ぐぬぬ…」 そうこうしているうちに 呂布はすっかり立ち直り ケロッとした顔で大地を走り回っていた。 ベスは呂布と同じ轍を踏み ソファから降りられず歯噛みしている。 と、その時。ベスが飛んだ。 顎を盛大にテーブルに打ち付けて。 ベスは泣いた。以下略。 「やっぱり姉弟ですねー。 行動パターンが似ているというか…」 クロ子が少し馬鹿を見るような目で ブリーダーさんに慰められているベスを眺めながら言った。 「そうなんですよー。 ホントに二人とも元気で仲が良くって…」 ブリーダーさんが言い終わるや否や ベスは駆け出していた。 そして呂布の尻に噛みつき またもパウンド。 呂布は仰向けになり蹴りを連打。 堪らず距離をとるベス。 「これは…アリ猪木状態!」 アカリが珍しく ガンダムネタ以外を口にした。 「何それ?蟻命錠剤?」 「違うよ。プロレスラーとボクサーの 意地の張り合いだよ。世紀の凡戦だよ」 「へ~?アカリちゃんって 格闘技詳しいの?」 「いや、なんかお父さんが言ってた。 ありゃねえよなぁって」 「じゃあアカリちゃんは詳しくないの?」 「トランキーロ!」 「何それ?」 「焦んなよってこと」 「意味わかんないし」 「私もよくわかんないけど プロレスに意味求めるなんて ナンセンスだよ」 アカリとシロ子が駄話に興じていると 助走をつけたベスが宙を舞っていた。 ベスはボクサーではない。 故に飛び出した 必殺のフライングボディプレス。 呂布、堪らず寝返りを打って 背中で防御しようとする。が、間に合わず。 完全なるマウントポジション。 ベスのパンチが呂布の顔面を襲う。 呂布、身を捩ってこれを交わし 時にパリングで以て辛くもこれを凌ぐ。 孔子はすっかり深い眠りに落ちている。 「お姉ちゃんの方が強いんですねー」 クロ子が他人事のように言う。 「あの、止めなくて大丈夫なんですか? なんかお姉ちゃん、思い切り 弟の首元噛みちぎろうとしてますけど」 アカリが漸くタオルを投げようとする。 「大丈夫ですよー。 姉弟ですから、こんなもんです」 そのタオルは、理論的な説明を放棄した 優柔不断な審判によって投げ返された。 その後も姉弟の争いは続いた。 時には地上戦。時には空中戦。 立ち技、寝技、投げ技を駆使しながら 二人は戦い続けた。 しかしてやはり優勢なのは常にベスであった。 しばらくすると 二人は何事も無かったかのように 揃ってケージに入って行き おやつを貰い、寄り添って眠りについた。 「へぇ。ホントに姉弟なんですねー。」 「そうなんですよ。 何だかんだで仲がいいんです」 「…そうなんですかね?」 アカリはブリーダーさんの 言葉を訝っていた。 呂布の首元を狙うベスのあの目。 あれは完全にござっていた。 このままでは、いつか呂布がベスに 『姉より優れた弟など存在しない』などと 難癖をつけられ、ガソリンを撒いた屋上で ベスに焼かれてしまうのではないかしら。 『今は悪魔が微笑む時代なんだ!』 アカリの脳裏に、ダークサイドに堕ちた ベスの嘲笑が響き渡った。 アカリは『じゃあしょうがないかぁ』と 適当に納得して暴走する 己が思弁に折り合いを付けた。 🏮 燈 🏮 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️kinpenakari.otoiawase@gmail.com ご予約詳細は🈁ブログ一覧
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愛は茶色く古びて 〜クロ子、子供貰うってよ〜①――自分ならきっと 上手に愛せると思っている。 愛するものが、まだ家に来ていないうちは。 黒田クロ子は悩んでいた。 離島育ちで武家育ちの彼女は 道場でクロ吉という頑固一徹な親父に 『漢』の何たるかを だいぶファンキーに叩きこまれて育った。 そんなクロ子は実家の道場で 空手のブラックベルトを取り 離島でクロ子に敵う男は クロ吉以外にいなくなっていた。 しかしクロ子は 「大きくなったらパパと結婚する!」 なんて乙女ッティーな性質でもなかったため やむなく島を出て結婚相手に相応しい男を 内地に探しに出た。 …と、クロ子は言い張っているが アカリは「ただの都会への憧れだろう」と これを真に受けて聞くことはなかった。 しかしある日 喫茶店に呼び出されたアカリとシロ子は クロ子への認識を改めざるを得ない話を 彼女の口から聞くこととなった。 曰く、都会の男は軟弱者ばかり。 今まで漢と見込んで付き合ってきた者たちも 結局はカッコツケだけの ハッタリベイビーであり それらに比べてみれば離島の男たちの方が 何倍も『漢』らしかった。 都会の男がこんな体たらくでは 結婚も子育てもできないまま 一生を終えてしまう。 その前に女として 命を育む経験をしておきたいと言うのだ。 「だから子供をさ 引き取ろうと思うんだよねぇ」 アカリは激怒した。 クロ子は先日、マッチョイズムの権化の如き 筋肉達磨彼氏と別れたばかり。 そんな失恋の中でヤケになって 己への慰みに子供を引き取ろうとは なんたる自分勝手か。 アカリは、必ず親友から かの邪智暴虐なる観念を 除かなければならぬと決意した。 「クロ子! 命を、命を何だと思っているんだ! 遊びでやってんじゃないんだよ!」 アカリは某・女のような名前をした ガンダム乗りの如く吠えたてた。 クロ子は一瞬、面喰った顔をしたが やがて破顔、爆笑した。 「ちょっとアカリ。 その必死な顔やめて。面白過ぎる」 「…ッ!馬鹿にして! そうやって事の重大さを スカすんじゃないよ!」 「いやいや 私だって命を迎えるわけだからさ。 別に半端な覚悟じゃないんだって」 「自分にはお父さんがいるのに 子供からはパパを取り上げるなんて! エゴだよそれは!」 「アカリちゃん~。 最近サブスクでハマってるからって 浅い知識でガンダム語録 連発するのやめなよ~。 本気のガノタに絡まれたら 話ついていけなくなるくせに~」 「ぐぬぬ…」 シロ子がアカリに水を差す。 しかし痛いところを突かれたアカリは 少々心にダメージを負ったため しばし黙して、精神のベクトルを 我が尊厳の回復の方向へ面舵いっぱい。 言葉を思弁に変えて 己がレゾンデートルを 保持することに努めた。 「てかアカリさぁ。 いちいちパパなんて大袈裟だって。 ワンちゃん狙いなのに 男なんていらないっしょ?」 「クロ子ちゃん ゆきずりの男と ワンナイトで子供作る気なの?」 「よくもそんなことが言える! それが人間のすることか!」 「アカリちゃん。 いい加減、ネトフリでゼータしか 見てないのバレるよ?」 「ぐぅ…」 そういえばシロ子がガンダムを ジークアクスまで全て網羅していることを 思い出したアカリは 虎になった李徴の如く 叢から月を仰いで咆哮したかった。 しかし咆哮の代わりに出たのは ぐぅの音であった。 「だからさー。 ワンちゃんお迎えすんのに 何で彼氏が必要なのよ?」 「???ワンチャンヲオムカエスル?」 クロ子の話を詳しく聞いてみたところ もう東京の男に望みは託せない。 子供を授かる機会なんて 今後ないかもしれない。 故に、犬を我が子として育てよう。 と言うのだ。 「人間の子供も犬の子供も 同じ命を預かって育むことには 変わりないっしょ?」 「クロ子!いつも言葉を捏ねくり回して 人を弄んで!」 「アカリちゃん さっきからカミーユのセリフ 言いたいだけだよね?」 「うん」 「でも私もクロ子ちゃんの言には賛成だよ~。 人生で命を育んだかどうかで 世界の見え方が 変わっちゃうかも知れないもんね~」 「じゃあさ、二人とも付いてきてくれる? 今日、千葉のブリーダーさんのとこに ワンちゃん見に行く予定なんだ。 車は私が出すからさぁ。 どうせ今日二人とも予定ないでしょ?」 🏮 燈 🏮 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️kinpenakari.otoiawase@gmail.com ご予約詳細は🈁ブログ一覧
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