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Blog@Kinpeibai
「愛は茶色く古びて」〜クロ子、子供貰うってよ〜②かくしてクロ子の言う通り その日一日 異性との甘い アバンチュールなプロミスも なかったアカリとシロ子は クロ子の運転するスズキのハスラーに乗って 千葉のド田舎へと向かった。 そして初めて立ち入る 大きなブリーダー施設の中の、広い面接室。 しばらく待っていると 女のブリーダーさんが一匹の グレーのポメラニアンを連れてやってきた。 男の子だがとても大人しく 何だか厭世的だった。 クロ子がワシャワシャと触っても 「今何かしたかね?」 という態度で恬然としている。 動きも何だか 託宣を諦めた虚無僧のようで 生後二か月にして 妖艶なアンニュイを漂わせていた。 クロ子たちは、この男のことを 『孔子』と呼ぶことにした。 続いて更にブリーダーさんが またポメラニアンの男の子を連れてきた。 茶色い毛並みを纏ったその男は ブリーダーさんの腕の中で猛り狂っていた。 その男は、ブリーダーさんの腕の中から 解き放たれるや否や 猛然と孔子に向かって頭から突貫した。 四足歩行でのダッシュヘッド。 数多の格闘技の武技を以てしても これに太刀打ちできる技はそうあるまい。 クロ子たちは 茶色い彼のことを『呂布』と呼んだ。 孔子は右腹部に 思い切り呂布の頭突きを被弾し 柔らかに身を捻りながら吹き飛んだ。 と、見せ掛けて跳躍。 ソファにそのまま大の字で着地すると そのまま動かなくなった。 それは孔子の戦略だった。 三十六計逃げるに如かず。 その言葉の起源を辿れば孫子に行きつくが そこはやはり天下の孔子。 儒家と兵家の隔たりがあろうとも 戦乱の世で他の諸子百家についても 網羅していたのではないかしらん。 クロ子は孔子の鮮やかなる戦線離脱に 心中で喝采を送った。 孔子は既に寝息を立てていた。しかし、そんなことで 呂布の気性が収まるはずもない。 彼はソファの上の孔子に食ってかかろうと 必死にその崖をよじ登ろうとした。 そして エナメルの崖から滑り落ちること数回。 ついに登頂に成功した。 ただ、彼は気付いていなかった。 手足の短い彼は このレッドクリフを登ることは出来ても 降りる=落ちることは叶わぬということを。 そして実際の呂布はレッドクリフに 参加すらしていないということを。 彼は鳴いた。情けなく鳴いた。 無期懲役を言い渡された 虜囚のように鳴き叫んだ。 もう二度と 娑婆の土を踏むことが叶わないのか? この、生まれてまだ二か月しか経たない 可愛い盛りのこの俺が?そんな理不尽があってたまるか。 嗚呼、世の中の残酷さというのは さほどに際限がなく 容赦もないものなのか。 ならば俺はこの理不尽な世の中を この高みから憎み続けてやる。 彼はそんな想いをその相貌に顕しつつ ソファの上に寝転がると 苦々しい態度で不貞寝を始めた。 孔子は、その一部始終を 大悟した人のような顔で見ていた。 いや、寝ていた。 🏮 燈 🏮 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️kinpenakari.otoiawase@gmail.com ご予約詳細は🈁ブログ一覧
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本が売れているようで編集者から珍しく電話がかかってきた。 2月に出した短編集が ありがたいことに 地上波の『殿様の昼飯』的な番組で 何度か取り上げてもらっていたので またその類の吉報であろうか? 番組名からして ばらずし・お吸い物・茶わん蒸しなどに並んで 私の本がグズグズに煮込まれ ほどよい糊のようになって 供せられるということだろうか? 最初に番組で紹介されると聞いた時は、 そんなことを思っていた。 その場合、もしハードカバーの ポリプロピレンが溶けきれずに残り 殿様の喉に詰まり、あわやご逝去 などの事態に到ったならば 私は一体どうなってしまうのだろうか? その殿様が古ローマの ヘリオガバルス並の暗君だったならば ワンチャン私の石像がたてられたり 何となれば何万石かもらって地方大名として 左団扇で暮らせるかもしれない。 しかし、普通に考えれば切腹であろう。 その場合 介錯人はこちらで頼めるのだろうか? 今も伝説の首切り役人 山田浅右衛門の家業は 続いているのだろうか? もし、かの山田浅右衛門の紙一重の秘技を 目の当たりに出来るのならば 今際の際に是非ともお願いしたいものだ。 と、いつものように妄想が白痴の彼方に 飛び立とうとするのはおいといて。 今回の編集者の鼻息は荒かった。 「神保町で村上春樹の新刊を 週間ランキングで抜いたそうで。 東野圭吾の次 二位にランクインしたそうです」 これは結構凄いんじゃないか? 商業出版ほどの広告も営業もなしに これと言って推せるような パンチラインになる経歴もない帯の本が しかも、しがない一夜職の女の本が 一時的とはいえ かの春樹の新刊を超えるなんて。 「これは結構凄いんじゃないですか? 私がハルキストでなくても 凄いんじゃないですか?」 「まあまあ 何度かテレビでも取り上げられましたから 物珍しさで手に取る人も 増えたんじゃないかと」 「そんなこと言わずに とりあえず一緒に喜んでくれといた方が ××さんの功徳にもなると思うんですがね」 「そうですか、まあ次の売り上げが出るのは 11月くらいになりますから」 「じゃあ11月は編集の方々で集まって 祝賀会しましょうよ」 「まあまあ、11月は頭からケツまで 会議でいっぱいなんで難しいですね」 「あの、まあまあ言うの 辞めてもらってもいいですか?」 私はヒロユキのような口調で ハルキストの編集者に そう言って電話を置いた。 後日、書店に行ってみると 週間ランキングで 東野圭吾と村上春樹に挟まれた我が本が クロックムッシュ、いやクロックマダム いやさケイゴ・ムラカミサンド KMサンドされて 棚にふてぶてしくふんぞり返っていた。 帯に「西村賢太氏推薦!」 と書かれているような幻が一瞬見えた。 今思えばあれは 私の中で浮世と黄泉路の境界が ノンフィクションと私小説の間くらい 曖昧になりつつあったためだろう。 それにしても まさか初出版した本が あのケイゴ・ムラカミの隣に 並ぶ日が来ようとは。 明日は空からケラウノスが 降ってくるんじゃないかしら。 とにもかくにも 地上波で紹介された上にこの本の並び。 さしもの私もこれを自慢 …いやさ宣伝しなければなるまい。 それが渡世、いや、人情、いや仁義 または十界互具における 一念三千の法理の顕現であろう。 私は一体何を言っているのか。わからない。 そもそも私が写メ日記でこんなことを嘯いて 果たして喧伝になるのか? それとも宣伝カーをレンタルして 渋谷スクランブル交差点の真ん中に乗りつけ 壇上で泡沫候補の断末魔の如く 「ノンフィクション!ノンフィクション!」 と叫べぶべきなのだろうか。 わからない。私には何もわからない。 🍎 燈 🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️kinpenakari.otoiawase@gmail.com ご予約詳細はブログ一覧
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