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ジューダス・クライスト【第三十八話】お題:異世界転生・歴史探訪 嘘つき同士の友情・最期の晩餐 希望と空虚・臆病者 据え膳食わぬは男の恥 正解と正しいは違う 「やあ。 随分と遅かったじゃないか。筆山君」 絵守が熱の乏しい声を出した。 近衛の男は既に事切れている。 「なんて様だよ絵守。 僕の方はペルシアを滅ぼし終えて 万々歳だってのに。 君はまた何処ぞへ転生する気かい」 「いや、僕はこの戦争に 最初から仕組まれていた裏切りを 返り討ちにしたんだ。 この手で討ち取った。 大義は果たしたよ」 「さてどうだろうね。 今までの原則的に 死んだらオジャンなんじゃないかい」 「さあ、わからないが、なんとなく 今回で終わりな気がする。 だから、君に言っておきたいことがある」 「なんだい、藪から棒に。大袈裟だな」 「まあ聞けよ。最期かもしれないんだ」 絵守の声に真剣な気配が宿った。 その様子に、筆山はしばし言葉を失った。 それを見て取った絵守は 途切れ途切れに語り出した。 「僕がこんな世界に来た理由はね 今生の生活がつまらなかったからなんだ。 あんな絵を描いて 下手にセレブの仲間入りをしたせいで 毎日下らない余興ばかり。 見栄と虚栄に囲まれて 僕の心は疲れ切っていた。 そのうち すっかり絵も描けなくなってしまった。 それで、酒に逃げるようになった。 あんまり身の置き場所がなかったもんでね。 呑まなきゃ耐えられなかった。 毎日毎日、苦しかった。 だから毎日毎日呑んだ。 シラフじゃない時がなかったくらいさ。 当然、医者には止められた。 完全にアル中だった。それでも呑んだ。 もはやそうしなきゃ生きていられなかった。 気が付いたら、救急車で運ばれてた。 どうも飲酒運転で 事故を起こしたらしくてね。 運ばれてる途中の意識しか 定かじゃないんだが。 まあ、愚かな行為に逃げ続けた神罰さ。 それでこんな世界まできて 今それも終わろうとしている。 君にここで会えたのは僥倖だよ。 最期に伝えなきゃいけないことを 伝えられるんだから。 僕はね、もっと早く 素直に君に会いに行けばよかったんだ。 でも、プライドがそれを許さなかった。 だって、僕は君に 此処まで上がってきて欲しかったのに 君は何時まで経っても 全く来てくれなかった。 どころか筆まで置いてしまった。 全くダメなヤツだと思ったよ。 そんな意気地のない男に 誰がこちらから会いに行っやるものかって。 君もそうだったんだろう? 理由は同じか逆か知らないが 君は君で君のプライドが許さなかった。 わかるさ。 僕は君のことなら何だってわかる。 なんでかって 天邪鬼の似た者同士だからね。 でも僕は、君といた頃が一番楽しかった。 君と一緒なら ずっと絵を描いていられたに違いない。 嗚呼、全く。 あんな絵を描くんじゃなかったよ。 あれを切符に移り住んだ遠い先が ろくでもない空虚だったんだから。 僕は、君とじゃなきゃ 何処にいてもつまらないんだ。 君を散歩に誘っていた頃が 今はとても、尊く、懐かしい」 そこまで言い終えて 絵守は動かなくなった。 筆山は絵守の身体を抱きしめた。 いつの間にか、涙が止まらなかった。 「絵守君。なんだ。 冗談にしちゃ性質が悪いよ。 まだ何も終わっちゃいないじゃないか。 早く起きないか。おい、おい絵守」 筆山は絵守の亡骸を そう言って揺さぶり続けた。 何故だかわからないが 長い旅が終わろうとしている気がした。 筆山にはそれが耐えがたかった。 「ずるいぞ。 君だけ言いたいことを言って勝ち逃げか。 いや負け逃げか。どっちでもいい。 僕はまだ君に 言いたいことを言ってないんだぞ。 僕は君に僕のどうしようもなさを まだ全然打ち明けてないんだぞ。 狡いじゃないか。 いつも、いつも君は君一人だけで そうして遠くへ行ってしまうんじゃないか」 動く者の無いテルモピュライの隘路で ただ一人、筆山は叫んでいた。 やがて その叫びに応えるように空が割れた。 「マザファキアスホ。 まさかあの結界を破って逃げられるとは。 全くしぶとい魔王ですね」 悪態を突きながらトニーが地に降って来た。 「これは筆山。なかなか荒れたようですが ガンモドキと花火は役に立ちましたか?」 筆山は応えない。 が、トニーは一瞬で全てを察した。 そして筆山が縋り付いていた 絵守の亡骸をいきなり肩に担ぎ上げた。 「おい、何をするんだ!」 筆山は顔色を変えて トニーに情けない声を放った。 「筆山。絵守画伯はもはや こちら側の人間ではありません。 彼は私が責任を以て送り届けます」 トニーは感情のない声でそう告げた。 「やめろ!そいつを連れて行くな! 俺を一人にするな! 俺は、そいつがいなくて これから一体どうしろっていうんだ? 俺は、もう此処にいる意味もない!」 筆山はトニーの外套を 引っ掴んで止めようとした。 トニーはビクともしない。 「そうです。 あなたにはもう 此処にいる理由はありません。 元の世界へ帰るといいでしょう。 それでは、ハブアキットカット」 トニーは背中の大剣で以て 一瞬で筆山の頭上辺りを斬り付けた。 空間が裂け、暗黒が覗いた。 「ちょ、チョマテヨッ…!」 筆山は異空間に吸い込まれて テルモピュライから消えた。 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁ブログ一覧
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ジューダス・クライスト【第三十六話】お題:異世界転生・歴史探訪 嘘つき同士の友情・最期の晩餐 希望と空虚・臆病者 据え膳食わぬは男の恥 正解と正しいは違う 「なんだ。全然抜けるじゃないか。 絵守君。君ねぇ いくらトニーと触れあってたいからって 三文芝居はよくないよ。 チェキ会だったら剥がされて出禁だよ」 「いえ、絵守画伯は本気でした。 あなたがおかしいのです筆山」 絵守は画伯呼びなのに 自分は呼び捨てにされたことに 憤慨した筆山はしかし レオニダスがヘラクレスの血を引いている 云々の話を思い出した。 見ると絵守は 推しのソロイベ抽選会に外れた人。 みたいに愕然として項垂れている。 「おのれアギアス家。 我がエウリュポン家の恨み 末代まで忘れるな」 「肩を落とさないで下さい。 そんなあなたにはこれをプレゼント」 トニーはそう言って 打ち上げ花火を取り出した。 「トニオ・サルバドール・ マクダニエル・ゴンザレス画伯。 一体どうしてこんなものを?」 「こないだ縁日で買った土産物です。 片が付いて景気付けに打ち上げれば 達成感も倍増です」 「どこの縁日だよ。 それよりこの剣、なんか変な造りだな」 引き抜く時には気が付かなかったが 剣の柄にはトリガーのようなものがあった。 そこへ怒気を孕んだペルシア兵たちが 丁度良く突撃してきた。 筆山は早速そのトリガーを引いてみた。 きっとこれで刀身が 赫い刃になって攻撃力上昇。 上弦の鬼の再生も防げる。 私は息の呼吸くらいしか使えないが。 なんてことを夢想していると 利き手に激しい反動。 見れば剣先が食虫植物のように開いている。 そこから何発もの鉄塊が ペルシア兵に襲い掛かり 鎧ごとぶち抜いてミンチにしていた。 知っている。 私はこの武器を嫌という程知っている。 あの時、こいつのせいで私は 塹壕などを掘らなければならなかったのだ。 「おい何が魔剣だよ。 こりゃ直剣の形をした マシンガンじゃないか」 「ですからガンモドキ(銃もどき) と言っているでしょう。 あなた達が戦うのは 悪魔じゃありませんから。 人間相手ならこれが一番効果的です。 あなたがこの魔剣に選ばれたのは その恐ろしさを身をもって 知っていたからこそです。 別に血筋とかそういうのは 今回全然関係ありません」 絵守は何のことだかわからず 話についていけなかったが とりあえずエウリュポン家が アギアス家を呪う理由が 無くなったことだけは何となく理解できた。 「うるさい。 そもそもこんなもん剣でも刀でもないって。 ただの銃小火器だって」 「細かいことはいいっこなしです。 私は今から サタンと決着をつけなければなりません」 「そういえば何でお前 そんな風な感じになっちゃったの?」 「私は黄泉路の果てで デビルハンターとして転生しました。 今の私の生業は 片っ端から悪魔を狩ることです」 「なんか既視感のある肩書と見た目だけど まあいいや。 もとい、サタンを追って 此処に来たとか言ってなかったか?」 「はい。 私とヤツは遥か遠い時空で戦っていました。 しかしヤツは突然、何かに呼ばれたように 急に別の次元へと転移しました。 おかげで私もその後を追って こんな大昔まで来る羽目になりました。 もう面倒くさいんで今度こそ逃がしません。 あなたたちは勝手に あなたたちの戦争をやっていてください。 私とサタンのことはお気になさらず。 それではアイルビーバック」 そう言うとトニーは筆山たちの前から 一瞬で姿を消した。 サタンは地形も生物も関係なしに ただ大地を蹂躙しながら進んでいた。 もはや筆山たちが陣取る隘路まで 残り十歩足らず。 その時、突如として目の前の空間が割れ 同時に無数の銀の塊が サタンの眉間に叩き込まれた。 「ウィンチェスター大聖堂の 銀十字を鋳溶かして造った 十三ミリ爆裂徹甲弾です。 こいつを喰らって平気な悪魔はいませんよ。 とはいえ ウィンチェスター大聖堂が建造されるのは 今から千五百年も後のことですがね」 トニーの愛用二丁拳銃 パンプキン&ハニーバニーの集中砲火に サタンはたまらず膝をついて呻いた。 が、間を置かず 六枚の翼を羽ばたかせて飛翔。 その風圧に辺りで乱気流が巻き起こる。 天の光を遮るが如く 地を見下ろして中空に鎮座したサタンは そのまま下界へ向けて 口から黒い魔炎を吐いた。 魔炎は地表を覆い尽くし これに呑み込まれたあらゆる有機物は たちまちにして腐れ落ちた。 辺りを埋め尽くしていたペルシア兵たちも 大量の骨となって頽れた。 トニーは背中の大剣バッサニオンを抜き放ち 高速回転させて旋風の盾を創り これを防いでいた。 更には怯むどころか そのまま上昇しながら サタンとの距離を詰めていく。 「これでは決着までに この地が朽ち果ててしまいますね。 場所を移しましょう。 二度と逃れることのできない 私の固有結界に特別招待して差し上げます。 アスタラビスタベイビ」 トニーの大剣が大気を薙いだ。 すると何もない空間に裂け目が生じた。 そこから暗黒が覗いた。 その暗黒は、途轍もない引力で 中空のサタンとトニーを あっという間に吸い込んだ。 吸い込んだと同時に閉じた。 空間は何もなかったかのように塞がり 後には馬鹿みたいな青空が 当たり前に広がっていた。 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁ブログ一覧
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