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ジューダス・クライスト【第三十二話】お題:異世界転生・歴史探訪 嘘つき同士の友情・最期の晩餐 希望と空虚・臆病者 据え膳食わぬは男の恥 正解と正しいは違う 「上出来じゃないか。 後はペルシアをどう挑発するかだな。 史実上、クセルクセスは 業を煮やして攻勢に出るまで 四日間動かなかった。 しかし、今の僕たちには そんな時を待つ理由もメリットもない」 「流石にあんな遠くの移動宮殿まで 一息で声が届く訳ないからな。 伝言ゲームだ。 人伝になる度に、噂は酷くなる」 筆山は動く気配のない、隘路の先の ペルシア兵たちに向かって呼びかけた。 「やいペルシア。貴様らの王は腑抜けか? 二十万の軍勢を率いておきながら たった三百の我らが怖いのか? 貴様らの王が もし本当に王の中の王であるならば 今日中にでも我が首を来りて取れ。 貴様らが腰抜けの集まりだからといって 我らが腰を落ち着かせる理由にはならない。 我らはスパルタ。 戦場の血に飢えたる狼の群れ。 貴様らの中にもし一人でも勇者があるならば 槍を持って今すぐ進み出ろ。 誓って死体にしてやる」 筆山は持って生まれた悪魔根性をフル稼働し 昼夜問わず ペルシアの前線部隊を罵り続けた。 そして三日目。 クセルクセスの耳に それが届いたのであろう。 打って変わって ペルシア軍の猛攻撃が始まった。 敵の部隊が我先にと 押し合いへし合いしながら 隘路に入り込んで前進してくる。 筆山たちの前に 鈍色の長いペルシア絨毯が敷かれた。 「後退しろ!」 筆山は躊躇なく全軍を後退させるた。 ペルシア軍は よほど罵倒が堪えていたのであろう。 それを見て取るや、目を血走らせて 騎虎の勢いでグングン迫ってきた。 「よし!前進!元のラインまで戻れ!」 スパルタは瞬時に反転。 元の位置まで進軍を開始した。 五メートルの長槍の穂先が敵の前進を阻む。 リーチが違い過ぎる。 ペルシア兵たちは槍衾の前に その動きを止めざるを得なかった。 流石は後のマケドニア名君 フィリッポス二世考案の革命武器。 当然、今のペルシアに こんなものの対処法がわかるはずもない。 「今だ!投擲!」 筆山の後方から二十五本の火炎瓶が 一斉に空に飛び出した。 それらは回転しながら、十数メートル先へ。 全く同時に、全く同じ距離へ着弾した。 ペルシア兵たちは頭から油を被り それらは衣服を伝って燃え広がり ペルシア絨毯が炎に包まれた。 「追い風だな!煙材を持て!」 スパルタの前線兵士に 後ろから有毒煙材の詰まった容器が 運ばれてくる。 兵士がそれに着火すると 忽ち煙がペルシア絨毯より広く広がって 更にその向こう側まで覆い尽くした。 炎が、更に燃え広がっていく。 この煙は五感にダメージを与える。 更にサービスで油も混ぜてある。 煙は、絨毯の遥か後方まで広がり 炎と共に隘路を包み込んでいった。 火だるまになったペルシア兵たちは 恐慌状態に陥り、たまらず後退を始める。 「カタパルト!」 筆山の掛け声からしばらくおいて 火炎壺が四つ。 遥か後方に後退していく ペルシア兵に追い打ちをかけた。 遠方から悲鳴が上がる。 これと火炎瓶とでは油の量が違う。 当然、威力も広がりもその数倍。 隘路を埋め尽くしていたペルシア軍は 一瞬にして炭化した肉の道になった。 テルモピュライに、人肉の焼ける 何とも言えない匂いが漂っている。 「ハッハッハ! 僕はかつて焼きたてのパンになりたいと 願ったことがあったがね! やはり僕は焼く方が 性に合っているようだ!」 筆山は追い打ちをかけるように ペルシア軍に向かって高笑いを響かせた。 「僕はかつてローマ葡萄パンを 焼いた神の子だ! ペルシア絨毯如きじゃ 全くまだまだ焼き足りないね!」 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁ブログ一覧
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ジューダス・クライスト【第三十話】お題:異世界転生・歴史探訪 嘘つき同士の友情・最期の晩餐 希望と空虚・臆病者 据え膳食わぬは男の恥 正解と正しいは違う カルネイア祭の最中、農奴ヘイロータイや 周辺民ペリオイコイたちは忙しかった。 祭りの裏で、ヘイロータイは 大量のオリーブ油や動物脂をかき集め ペリオイコイの職人たちは 陶器やガラス瓶を拵えまくった。 硫黄や松脂、怪しげな草木を集めて 容器に密閉したもの 槍を二つ繋ぎ併せて長くしたもの などが大量に生産され 大型の投石機・カタパルトと共に 街の倉庫に並べられていた。 祭りでは 選ばれた精鋭三百のうちの五十が ガラス瓶を投げて飛距離を競ったり また別の二十五が、カタパルトを使って 狙った場所に壺を落としたり 更にまた別の二十五が 風を読んで特定の方向へ煙を流したりと 斬新な余興を催して点数を競っていた。 残りの二百はひたすら 長槍を使用した密集形態 ファランクスの練習をしていた。 筆山はその合間に 一メートルくらいの大型の声筒を使って 声が何処まで届くのかの実験に興じていた。 そして一週間が経った。 老人たちに約束した、出兵の日である。 筆山が家を出ようとすると 妻のゴルゴが泣いている。 あの、同じ名前のスナイパーと 比較して劣らない逞しい身体の女が 涙を流している。 「心配するな。一週間程度で戻る。 まだ再婚など考えるなよ。 吉報が届いたら、宴の準備をしておけ」 筆山はそう言って、六尺近くある妻の頭を その遥か上からポンポンと叩いた。 老人たちは 揃いも揃って心配そうな顔をしている。 「本当に、これで大丈夫なんでしょうか? 王が二人倒れるということだけは 万が一にも、何卒、まあ、そのぉ」 おずおずと一人の老人が聞いてきた。 「わからん。 わからんが、やれるだけのことは この一週間で全てやった。 準備も訓練も万全だ。 後はやってみることだ」 広場に出ると スパルタ市民たちが見送りに出ている。 筆山は声筒を使って、群衆に宣言した。 「スパルタに後退はない。 だが今回は、その鉄則に もう一つ付け足す必要がある。 スパルタには前進あるのみ。 私は必ず勝って帰る。忘れるな。 スパルタは必ず勝つ」 群衆がどよめいた。 そのどよめきは 筆山にとって不快なものであった。 「なんだこいつら。 王様、絶対死ぬけどしょうがないよね。 みたいな感じで送り出しに来たのか。 不敬罪で全員処刑にしようかな」 筆山が隣の絵守に愚痴った。 「まあ、あれが普通の反応だろうよ。 まさか三百でどうにかできると思うヤツも いないだろう」 絵守はいつもの調子でスカしている。 対して、筆山は尚のこと納得がいかない。 「そんなこと言ったって 負けたら王様を両方とも失うんだぞ」 「スパルタの体制なら 王は死んでも国は死なないからな。 それに、アギアス家にもエウリュポン家にも 世継ぎが既にいる状態だ」 「なんだよ。 僕たちが死んでも変わりはいるってのか。 ウーバーイーツじゃないんだぞ」 「さあ。もしかしたら割り箸くらいかもな」 「やめろよ。なんだか 蕎麦でも食いたい気分になってきた」 筆山たちは軽口を叩きながら スパルタを後にした。三百。 うち二百は長槍を携えて武装し 筆山は大型声筒も携帯している。 残りの百は軽装で カタパルト四基 火炎瓶五千本、火炎壺八百個 有毒煙材二百個を 荷車に積んでラバに引かせたり 袋に背負ったりして運んでいる。 筆山たちにとっては ぶっちゃけこの行き道が一番きつかった。 荷は重いし、ラバの世話は面倒だし 道は険しいし、何より遠いし。 何か気晴らしにでもと 筆山は声筒でスパルタ兵に 今生の祖国の歌謡曲を 歌い教えながら進んで行った。 絵守はラップを教えていった。 立ち寄った宿では兵士たちが ラップバトルで盛り上がり過ぎて 決闘沙汰になりかけた。 なんでも相手が悪口ばかりで喋ってるだけ。 ライムもフローも感じない。 お前にはHIPHOPが足りてない云々。 その場は絵守が 巧みなフリースタイルを披露して収めたが やはり妄りに異文化を撒き散らすのは 転生者として良くない振る舞い なのかも知れない。 筆山はそんなことを思いながら 気が付けばみんなでキューティーハニーや ムーンライト伝説を口遊んでいた。 ポップスを歌うと足取りが軽くなり 演歌を歌うと重くなった。 あまりにも行軍速度が落ちるので 水戸黄門は歌うことを禁止した。 ラバが不貞腐れて動かなくなるので ドナドナも禁止した。そして、スパルタを経ってから二週間弱。 筆山たちは アンパンマンのマーチを熱唱しながら ついにテルモピュライに到着した。 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁ブログ一覧
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