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ジューダス・クライスト【第三話】お題:異世界転生・歴史探訪・ 嘘つき同士の友情・最期の晩餐 希望と空虚・臆病者・快楽に溺れる 据え膳食わぬは男の恥 正解と正しいは違う・推し活沼 気が付くと私は、掘立小屋の中にいた。 なんか長袍に身を包んだ 荒くれ者な感じの奴らが屯っている。 何処だ此処は?集会所? 桶狭間で善照寺は燃えた。 私は今川義元に討たれ炙られ 今川焼きになったんじゃなかったのか? 「兄者、いい加減に観念しねえか」 虎のような髭を生やした骨太マッチョが 怒ったような顔をしている。 その横には、長身マッチョが ヴィダルサスーンみたいな感じで 二尺はありそうな サラサラな黒髭を撫でている。 「そもそも兄者は漢の高祖 劉邦の末裔だとか言ってるけどさ。 それだけじゃもう限界だって」 「言うな張飛。 それがなくなったら兄者は ただの四十七の草鞋編みのおっさんだ」 二尺髭が割って入る。 どうやら私はまた死ねなかった。 というか元の世界にも戻れていない。 そしてさっきから兄者兄者って 私はこいつらの長兄なのか? 「その、じゃあ僕は君たちの兄として 何をしたらいいのかね?」 目の前に詰め寄る巨漢二人を前に 恐る恐る聞いてみた。 「だから言ってるじゃねえか。 荊州に未だ誰にも仕えず勉強ばっかしてる 臥竜って奴がいるから スカウトに行こうって」 「臥竜?隠れた逸材的な?」 「優秀にも関わらず 未だ曹操にも孫権にも下っておらん。 これは我らの好機ですぞ」 二尺髭も虎髭と意見は同じらしい。 嗚呼、なるほどね。 今度は私、劉備玄徳ですか。 脳筋みたいな連中の集まりなわけだ。 だってこんな学も身分もない フィジカルだけのおっさんのとこに 頭良い人材が集まるわけないもん。 こんなアウトローばっか集めて。 もう義賊っていうか山賊じゃん。 アウトレイジじゃん。 ファッキンジャップくらい わかるよバカヤロー。違う。 ここは今ファッキンチャイナだ。 玉無し野郎のせいで宮廷がメチャクチャだ。 いや、玉はあるのか。竿がないんだった。 竿がないのを馬鹿にされ 性欲あるのにヤれもせず。 そりゃ宦官も性格歪みますわな。 そもそも竿切り落とす時点で 生存率半々みたいな話だったけ。 でも十常侍のせいで乱世乱世。 黄巾の乱れより 睾丸の乱れの方が問題ですわな。 って私はさっきから何を言っているのか。 幸い私にはちゃんと玉が二つある。 実弾も二発ある。 この虎髭と二尺髭が かの燕人張飛と美髭公関羽だろう。 ただこの二人も脳筋には変わりないわけで じゃあ私はやっぱり臥竜こと諸葛亮孔明に 例の三顧の礼とやらをしなきゃならんのか。 やだなぁ。あいつ絶対性格悪いもん。 大体アラフィフの私が 二十代の小僧相手に頭下げに行くって もう行く前からキツい。 でも脳筋だらけのこの空気はもっとキツい。 「乗るしかねえって。 このビッグウェイヴに」 「兄者。ご決心なされい」 張飛と関羽に半ば無理やり諭されて 私は隆中の山道を登る羽目になった。 何故か外来語を使った張飛が ヴの発音の時にこれみよがしに 下唇を噛んでみせる感じが なんか凄くしんどかった。 上り坂もしんどかった。 大男三人は道中無言であった。 道はそんくらい険しかった。 これを三回もやるのか。 いや、二度と御免なんですけど。 そう思っているとボロい庵が見えてきた。 「もし。臥竜の先生はおりますかな」 玄関口で声をあげて尋ねると 茶坊主みたいなのが出て来た。 「兄は留守です」 すんごい無礼な、素っ気ない態度で 茶坊主はそう抜かした。 「ほう、では君は諸葛亮の弟の諸葛均君かね」 「え?何故私の名前を?」 私は詐術に打って出ることにした。 こんなところに三回も来てたまるか。 「私には神通力がありましてね。 その者の本性を 一瞬で見破る力があるのですよ」 「マジか兄者。すげえ」 張飛が神を見るような目で私を見ている。 許せよ弟。今お前の兄は稀代の詐欺師だ。 「兄君がわざと留守を装って 私を試そうとしていることもお見通しです。 いや私も舐められたものだね。 こんなことは私のような 仙術使いにとって児戯に等しい。 さあ、諸葛亮を出しなさい」 「無理です。兄は帰りません」 「ほほう。 まだ私を謀ろうというのかい坊主。 そもそも私は諸葛亮が 竹藪の中に隠れているのを ここに来る前に見かけているのですよ」 「え?本当か兄者」 「ええ。バレないと思って ニヤニヤ笑いを浮かべていましたね。 実に不快な顔でした」 これは事実だった。 私は史実をしっていたので 竹藪を注視しながら進んできたのだ。 ビンゴだった。 殴りたくなるような含み笑いだった。 思い出したら何だかムカついてきた。 「しかし、何と言われようと とにかく兄は留守です」 「ではその兄はいつ帰ってくるのかね?」 「わかりません」 「それもそう言えと兄に言われたのかね」 「はい」 「この指示待ち人間のド餓鬼が!」 私は茶坊主こと諸葛均を殴り飛ばした。 矮躯な諸葛均は 茶の間まで吹っ飛んで行った。 「兄者!子供相手に何をなさる!」 「そうだぜ!いくらなんでも大人気ねえや!」 髭兄弟が揃って非難の声をあげた。 「うるさい! こんな自分のないガキが増え過ぎたせいで 我が日本はすっかり骨抜きの イヌイヌのダメダメじゃないか!」 私は怒声を張り上げた。 諸葛均は茶の間で失禁したまま動かない。 「何をいってる兄者? にっぽん?なんだそれ? あんた気狂いになっちまったのか?」 張飛がドン引きしている。 関羽は茶の間に上がり 諸葛均の体を検めた。 「…兄者。小僧は死んでおりますぞ」 関羽がドン引きしながら言った。 私は絶句した。 やめろ。そんな目で見るな。 私は最近の若者の 根性を叩き直してやろうと正義の鉄槌を…。 帰り道。皆、無言であった。 途中の竹藪の間から 諸葛亮が嗚咽して臥せっているのが見えた。 誰も何も言わなかった。 そして軍師を欠いてグダグダなまま 博望坡の戦いが始まった。 兄弟二人は目も合わせてくれなかった。 私はヤケクソになって 総大将の夏侯惇へ向かって単騎駆けした。 その途上、横合いから馬の嘶きが聞こえた。 次の瞬間、目の端に、 白刃が一閃するのを見た。 私は気付けば低い地べたから 倒れ伏した己の首なし胴体を見ていた。 「その手で幼きを虐る外道。 もはや、我が主にあらず」 大刀が、鈍い光を放ちながら 鮮血に曇っている。 「桃園の誓い、ここに潰えたり」 関羽は青龍偃月刀を振った。 赤が弧を描いて土に散った。 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁 ※𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦開設したので フォローお願いします✨ ※公式LINEが凍結してしまったので 再登録お願いします🙇♀️ブログ一覧
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ジューダス・クライスト【第一話】(お題:異世界転生・歴史探訪 嘘つき同士の友情・最期の晩餐 希望と空虚・臆病者・快楽に溺れる 据え膳食わぬは男の恥 正解と正しいは違う・推し活沼) ――裏切りによって救われ 救いによって裏切られた。 引き籠りを始めてから五年が経った。 実家暮らしではない。 生活保護の一人暮らし。 小説が全く書けなくなった私は どの出版社からも見放され いつからか絵守も訪ねてこなくなった。 絵守はもはや大御所画家だ。 今の絵守にかかれば 庭先でバーベキューしながら 肉汁に塗れたナプキンに 左手で描いたウナギイヌだって 数万ドルは下らない。 なんならAIに描かせてサイン入れるだけで 飛ぶように売れる。 というか絵守はだいぶ前から そういうことをやっている。 もはや絵描きというかただの署名人だ。 著名人の署名人だ。 芸術家としては廃人である。 呆れて怒りすら湧いてこない。 いや、怒りが枯れたのか。 かつて絵守は スランプで項垂れている私の姿を 勝手に模写し、その絵が何故か 国際的に評価され 世界にその名を知らしめた。 しかもタイトルは私の実名だった。 コケにされた私は絵守をぶん殴った。 絵守はヤメ検の弁護士団を雇って 容赦なく私を裁いた。 金のない私の国選弁護士は 全く使い物にならず 私は執行猶予なしの傷害罪で コテンパンに起訴され 嘘のようなスムーズな流れで 刑務所に収監された。 そして2年間。 塀の中の煉獄を私は何とか生き延びた。 しかし外の世界に戻ってみると 絵守の絵は尾鰭がついて 評価され続けていた。 私の事件が絵画に纏わるスキャンダルとして これに更なる付加価値を 与えてしまっていたのだ。 「筆山文彦」。 私の実名は絵画と共に悪い意味で 世間に注目されるようになっていた。 そんな私が、新しく小説を書いたら 話題になるだろうか。 冗談じゃない。 何が悲しくてやっと娑婆に戻ってきてまで 事情も解せぬ有象無象に コケにされなきゃならんのだ。 じゃあ名前を変えたらどうか。論外だ。 そんなことをすれば絵守に男として 心まで完全敗北したことになる。 それから私は、小説が書けなくなった。 今じゃ絵守のせいだと気焔をあげて 奴を殴りに行く気力もない。 愉快な反社の仲間たちと 寝食を共にする体験は一回で懲り懲りだ。 そういえば二八番君は元気してるだろうか。 彼とは同じ正業の者同士 随分と支え合ったものだ。 なんだか段々、不良のお歴々の方々の 武勇伝や案件話に傾聴して 乗り気になっていたから こりゃ出獄後は向こう側の人に なってそうだなと思ったものだが。 今も元気にダシコをやっているのだろうか。 辞めときゃいいのに。 頑張って広告業界に戻ればいいじゃないか。 まだ若いんだし。 嵌めた相手にお礼を返す みたいなこと言ってたけどさ。 でもそれも若気の至りなのか。 よし、若いうちにしか できないならやればいい。 私にできるのは、その若さの代償が 浦島太郎の玉手箱にならぬよう 祈ることくらいだ。 なんてことを私が 言えた義理ではないのだが。 何しろ私は、五年前から 国民の皆さまの血税で 何もせずただ日々を 無駄に削っているだけの生ける屍だ。 だからといって 無駄遣いなどしているわけでもない。 生かさず殺さず徳川幕府。 参勤交代路銀で衰退。 どころか私ときたら散歩すらしない。 兎角、何もやる気が出ない。 ゲーム廃人になる気も起こらない。 ただただ苦しみを胸に 毎日天井の染みを数えるだけの生活。 こんな引きこもりが他にいるだろうか。 これって割と常人にとっては 苦行なんじゃないだろうか。 ブッダの修行くらい キツいんじゃないだろうか。 だったらなんで、いつまで経っても 私に解脱の救済が訪れないんだろうか。 嗚呼、楽になりたい。 何もしてないのに苦しい。 というか、この世に 何もしないことほど苦しいことなんてない。 それは、こと私の場合に 特に顕著なだけかもしれないが。 世間から這い放たれた 人間に圧し掛かる重圧。 社会性から切り離された予期不安。 内から己を責め立てる呵責。 己がこれほど引き籠りに 向いていないとは思わなかった。 引きこもりなんて 落伍者の極楽暮らしじゃないか と羨んですらいた。 違う。 怠けるにも才能というものが要るのだ。 そして己はこれの才能に全く恵まれず ひたすら苦渋に苛まれ続けている。 しかしもはや手遅れ。 最初の一年くらいで 乾坤一擲の一念発起をしていれば まだ望みはあったかもしれない。 が、五年という月日は 私から生きる気力そのものを 恐怖というネガティヴに返還し続ける。 毎日、益体もない 希死念慮ばかりを膨らませ続ける。 だったら死ねばいいじゃないか という話だが 人間には生存本能というものがある。 やはり肉体的に苦しいことは 体がこれを極力拒否するように 出来ているのだ。 漫画やドラマのように インスタントには逝かない。 そんな理屈を捏ねずに この雑居ビルの屋上から あいきゃんふらいすればいいものを そんな理屈を殺せずに 何もない生に縋り付いて ここまで生きてしまった。 ここ五年 コンビニの店員とすら話していない。 もはや時代はセルフレジ。 人類はついに 金を払う時すら他人を必要としなくなった。 「こんにちは」「袋ご利用ですか」 「ありがとうございます」 言葉が文字に置き換わり 市井からコミュニケーションが剥奪され 都会には社会復帰の ささやかなトレーニング場すらない。 職安もそのうち ペッパー君だらけになるだろう。 警察はペッパー警部になり 和人はこぞってアメリカ・インディアナ州の ペッパータウン集落に集まり 祖国日本に見切りを付けて新国家を樹立。 国歌はレッド・ホット・チリ・ペッパーズの カリフォルニケイションだろう。 何がカリフォルニアだ。 ブルジョワの堕落め。 そんなところに移住するくらいなら 私はスリランカで菩提樹に塗れて 浄化されたタタリ神みたいに クニャクニャになってしまいたい。 しかしもはや進退窮まっている。 この生活を何とか 楽にする方法はないだろうかと 私は通販で般若心経を購入した。 そしてこれを一日中唱えた。 十万回くらい唱え続けた。 何も起こらなかった。 ヤケになって食生活を 三食カップ麺にしてみた。 非常に苦行である。 もう二日目で胃がムカムカする。 そこで般若心経だ。 色即是空。空即是色。 この世界は俺がみている幻想なんだ。 本当の俺は実はもっと違うところで 溌剌として生きているに違いない。 じゃあこの惨憺たる現実は俺の夢か。 夢なのか。なんだ夢だったのか。 早く言ってくれよ。 そんで早くうぇいくあっぷぷりーず。 いつの間にか掻きこみ過ぎた麺が 気管に詰まり、私は鼻から 豚骨を噴出させながら仰向けに倒れていた。 嗚呼、このまま窒息やら血糖値関係やらで 楽になれないかな。 目の前には相変わらず 天井の染みが広がっていた。 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁 ※𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦開設したので フォローお願いします✨ ※公式LINEが凍結してしまったので 再登録お願いします🙇♀️ブログ一覧
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