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仕事が終われば【烈】(お題:飛行機と出張、信頼 私の愚行、口から出まかせ) 蛍光灯が眩しくて、夏。 夢を、夢を見ていた。 夢の中の俺は屋台で テキヤのオヤジに発砲して 怒って殴りかかってきたオヤジに対して 刃傷沙汰を起こしていた。 何故か俺は大権現様に 妖刀村正を帯刀奉納に行く途中だったのだ。 またつまらぬジジイを斬ってしまった。 その刀筋を地元の大親分に見込まれ 後の俺は裏社会で大出世。 泥鰌組の次期若頭筆頭まで上り詰めた。 そんな風に人が 気持ちよく寝ていたというのに この喧しい白熱灯のせいで出世が台無しだ。 まあ大体、妖刀村正なんつっても 当時、村正って銘の刀が大量生産されて みんな村正使ってたから あっちの辻斬りも村正。 こっちの辻斬りも村正。 こりゃ妖刀じゃってな話で。 じゃあ強盗がみんなユニクロ着てたら ユニクロは妖服ってことになるけども。 果たしてそれでいいんかい? 納得できるかい? 俺が納得しても ユニクロが納得しないんじゃないかな。 つまりそんなユニクロ的な刀を 大権現様に帯刀奉納するって時点で 怪しいと思ってたのよね、俺は。 でもね、それもわかりきった上で おれは夢を楽しんでたわけじゃん? それをばこの不細工な蛍光灯ときたら。 全く無粋な野郎だよ。 「気が付きましたか?」 見れば傍らには白衣の天使 というか大権現 というようなオバハンが立っていた。 「あの、人が寝てる時に電気つけるの 辞めてもらっていいですか?」 俺はソフィストぶった口調でそう言った。 果たして、俺は生きていた。 機動隊が投擲した スタングレネードのせいで 一時は意識が不明瞭だったが 実際は病院に担ぎこまれただけで 外傷も何もなかった。 携帯から部長の声がする。 会社は俺の「勇気ある行動」 を美談として処理するつもりらしい。 そんで予定通り出張を継続して 現地法人の立て直しをするように。 とのこと。 冗談じゃない。 何が「勇気ある行動」だ? 「卑劣なる裏切り」の間違いだろうが。 パーカーたちはきっと気づいてた。 俺が裏切ってたって。 じゃなきゃいくら何でも 俺を機長室に一人で行かせたりしない。 着陸をすんなり受け入れたりしない。 「OK。道具も舞台も整ったってことだな」。 そう、確かにあの時点で パーカーたちの訴えは 世界中に拡散されることが確定していた。 だからか。 彼らは航空会社の不正を暴ければ 端から自分たちの命なんて どうでもよかったのか。 俺が裏切ってようがどうだろうが そんなことはどうでもよかったのか。 「どうせ俺たちは終わってるんだ」。 パーカーの呟きが脳裏に蘇る。 そんなことはない。 着陸までの間、俺たちは笑っていた。 あのパーカーたちの笑顔は嘘じゃなかった。 でもそれは、最後ぐらいトニーと 元同僚と仲違いせずに 楽しく過ごしたかっただけ だったのかもしれない。 実際、トニーだった俺は笑っていた。 あいつらと一緒に笑っていた。 五年間笑えていなかった俺が。 笑える話だと、あの時は思った。 今は笑えない。 何故ならあれは俺じゃないから。 笑っていたのは あいつらの同僚だったトニー。 俺は他人の人生を借りて茶番を演じただけ。 ほんの一時、トニーに体を貸しただけ。 笑えない話だ。 結局、俺はパーカーたちと出会って 罪の十字架を更に重くしただけだ。 今思えば、性の十字架なんてのは 随分と軽いもんだったなぁ。 もはや、どうでもいいことか。 とにかく、俺は仕事をしなければならない。 再度出張に出掛けなければならない。 改めてタイ行きの便に乗った俺は 窓の外に死神を探しながら パーカーたちに呟いた。 「嘘をつきました。ごめんなさい。 死ねませんでした。ごめんなさい」 バンコクに着いたのは夜だった。 空港の出口で、一人の女が 俺の名前を書いた紙を持って立っていた。 「波佐間さん?」流暢な日本語だった。 美貌の人であった。 古語で言うところの 超マブいスケであった。 なんだろう。俺はこの女を知っている。 知っているどころではない。 目の前にいるその女は 死んだはずの妻に瓜二つだった。 俺は狂ってしまったのだろうか。 とうとう幻覚まで見え始めたのか。 そういえば トニーも俺に瓜二つという話だった。 この世には、同じ顔をした人間が 三人はいると聞いた事があるが それにしたって そんなドッペルゲンガーに 出会うような奇跡が こうもポンポン続くはずがない。 ではこれはどういうことか。 察するに、俺はトニーと間違われたことで 無意識にも愚かな希望を持ってしまった。 妻の写し身も どこかに存在しているはずだと。 その即席な信仰を 俺の精神はいつしか妄信した。 そんな自分勝手な願いが こうして妻の面影を 赤の他人に投影して見せている。 そんなところだろう。 大馬鹿野郎だ。 そんなことで自分を慰めて、何になる? お前は妻とも、パーカーたちとも 死を共にせず 一人のうのうと生き残っている癖に この上、何の償いもせず自分だけの世界に 逃げ込んで自慰に耽るのか? お前はどれだけの卑怯者に成り下がれば 気が済むんだ? 死ね。死ね。死んで償え。 でもお前には自死も許されない。 クソ野郎が。 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁 ※𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦開設したので フォローお願いします✨ ※公式LINEが凍結してしまったので 再登録お願いします🙇♀️ブログ一覧
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仕事が終われば【皆】(お題:飛行機と出張、信頼 私の愚行、口から出まかせ) 「あいますとうぉーきんぐでっど」 「良いんだよ もう仕事なんてしなくていいんだトニー」 「お前は俺らがそんなに働くなっつっても 聞かなかったよな」 「そうそう いっつもTake it easy.とか言って」 「いえあ。しぇけなべいべ」 「しかしわかんねえな。 どういうことなんだ、トニー? そもそも、お前は何で 死んだことにされてたんだ?」 まずい。そこまで考えてなかった。 確かに俺がトニーとして ここにいるということは 会社が意図的にトニーの死を 捏造していたということになる。 その理由は? 聞くところによると トニーの事故は会社側の過失だ。 どう考えても過労運転事故だ。 人員不足、整備不良、安全手順違反… これが発覚すると大問題になる。 そこで会社は、トニーに裏金を渡し 退職扱いにして海外に送った。 その後「事故で死亡」という話が流れる。 当然、同僚たちはこれを鵜呑みにする。 これだ。この線でいこう。 「ええと、かんぱにせいず いっつぷろぶれむ。あくしでんつ。 ゆーはでぃさぴあ。これますと。 ぎぶみーまにぃ」 「なんてこった。 あいつら、労災隠しのために トニーの存在を消そうとしたってのか」 「監督署の調査にビビりやがったんだ」 「チェックされたら終わりだもんな」 「保身のためにトニーを殺しやがったのか」 …計画通り。 流石はかつて新世界の神を志した俺だ。 というかこいつら 俺の言ってること理解でき過ぎじゃないか? 俺だってよくわかんないのに。 どんだけトニーと以心伝心してたんだよ。 嗚呼、トニー。 見ろよ、お前には こんなに良い仲間たちがいたんだぜ。 お前は幸せものだよ。 さてここからどうしよ。 何にも考えてないよ。 火に油注いだだけだよ。 ちゃんと働け、トニー。 「そういえばわどゅゆうぉんつ?」 「ああ、クソ会社を 内部告発してやろうってことさ」 「こんだけの事件になりゃ 責任追及は免れないだろうからな」 「窮鼠猫を噛むってヤツよ」 その最後にパーカーが小さく呟いた。 「どうせ俺たちは終わってるんだ」 …お前たちはまだ何も終わっちゃいないよ。 言いかけて呑み込んだ。危ない。 俺は今カタコトなんだった。 しかしこいつらは悪漢ではない。 今ちょっと魔が差してるだけだ。 その魔が差した分の償いは 必要かもしれないが それ以上の贖罪なんて必要ない。 終わるのは俺だけでいいはずだ。 だから、俺はこいつらにこれ以上 無駄な罪を背負わせてはならない。 「ゆーしゅっどすぴーちえびわん。 あんどえびわんそれ すまほびでおでれこーでぃん。 そんでえあぷれんがらんでぃんぐしたら おーる拡散わーるどSNSするよろし」 「俺らの演説を客に撮影させて 地上で拡散させるってか。 そりゃいい考えだトニー」 「そしたらゆーしゅっどごーふろんと。 おーるおぶゆーますと。 じょいんとぱわーでぱっしょんを るっくるっくこんにちわ」 「俺ら全員で演説して誠意を伝えろってか? それはいいが、お前はどうするんだトニー?」 「みーはきゃぷてんを のっきんおんへぶんずどあ。 とーきんぐへっずYOYO」 「OK。じゃあ機長の方は任せたぞトニー」 俺は機長室へ向かった。 その後ろで彼らがゆっくりと演説を始めた。 会社の不正。揉み消し。不当解雇。 これが世に出回れば、この航空会社の信用は ゲヘナの底まで失墜するだろう。 その中心部には サタンに咥えられたユダがいる。 そして今、ここにもユダがいる。 天空のユダは俺である。 地獄に堕ちるのは俺である。彼らではない。 「もし。俺はただの乗客です。 しかし持って生まれた悪魔根性で ハイジャック犯たちを 懐柔することに成功しました。 安全に事を運ぶため、協力してください」 俺は途中で出くわしたCAに 状況を説明した。 CAはエディ・マーフィーの顔芸みたいに 目を見開いてしばらく仰天していたが やがて事情を呑み込んだ。 …というところまでは至らず 正直よくわからないが とりあえずこいつは味方だろうと 妥協して納得したような感じで 機長室まで案内された。 何だかちょっとムカついた。 「…というわけで 何とか何処かへ着陸してください」 「君は拳銃を持っていないのかね?」 機長が訝し気に俺に問う。 副操縦士もさっきから 不審な顔でこちらをチラ見してくる。 ヤな感じ。 「持ってませんよ。 ボディチェックしますか? 連中に聞いたところでは 空港の警備会社に 協力者がいるようでしてね。 そこから部品を分解した形で どうにかこうにか 機内に持ち込んだらしいです。 どうです? 俺がハイジャック犯だったら こんな情報を あなた方に漏らすわけないでしょう。 それにね、あなた方の会社は 言ったようにあの四人以外の社員からも 相当な恨みを買っている。 お二方も例外に漏れないんじゃないですか? それとも、全く心当たりがない?」 機長は一瞬 歯噛みしたような表情になって俺を見たが すぐに弛緩したような顔で前に向き直り 大きな溜息をついた。 副操縦士もチラ見を辞めて 小さな溜息を漏らして俯いていた。 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁 ※𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦開設したので フォローお願いします✨ ※公式LINEが凍結してしまったので 再登録お願いします🙇♀️ブログ一覧
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