～前回のあらすじ～ オカルトマニアに太刀打ちできない   ｢アトラスはワシの兄でな… ティタノマキアで ティタン神族が負けたせいで オリュンポスの神々に 苦役を課されてての…｣ ｢天空を一人で担いで支え続けろ 言われてな… 今でも頑張ってそれに耐え続けてる 不憫な兄なのよ…｣ ｢相変わらずえげつないことしてますね 神々ってのは…そういや なんでプロメテウスさんは お咎めなしなんですか？ 同じティタン神族ですよね？｣ ｢ワシはほら、そんなこともあろうかと 先にゼウスに寝返ってたから！｣ ｢ズルい！ アトラスが聞いたらブチギレますよ！｣ ｢ワシだってお前ら 人間のために動いたせいで 三万年も肝臓啄まれとったんじゃ！｣ ｢それと神族への裏切りは 全く関係ない事柄でしょう！｣ ｢まあまあ！ともかくアトラスは このヘスペリデスの園の中心で 天空支えとるから！ とにかく事情を話して 林檎のことを頼んでみるのじゃ！｣ ｢あれ？一緒に付いてきて 頼んでくれないんですか？｣ ｢…いやそれは流石に… 合わせる顔がないというか… ワシすっかり自由謳歌しちゃってるし…｣ ｢…この人…後ろめたい自覚あるくせに… よくそんな兄のいる世界の果てまで フラフラ遊びに来れたもんだな…｣ ｢アトラスに会ったら伝えておいてくれ… 弟のプロメテウスは… 元気に世界中を引き語って回ってると…｣ ｢…１回ギター置いて反省して 謝っといた方がいいと思いますよ…｣     ティタノマキアよりこの方 ずっと天空を支え続け ヘスペリデスの園の中心で 身動きをとることも許されないアトラス そんな彼は代わりに他の五感が 異常発達してしまっており ヘスペリデスの園での プロメテウスの振る舞いは 全てアトラスに見聞きされていた ｢…あの愚弟…よくも この俺のところまで来て… それもあんな下手糞な歌をわざわざ… なんたる嫌がらせかッ…！｣ そんなアトラスの苛立ちなど 知る由もないヘラクレスが アトラスの元へとやってきた ｢アトラスさん！お疲れ様です！ あの…弟のプロメテウスさんから 聞いたんですけど…｣ ｢ほう…プロメテウスか… 弟は俺に何か言っていたか…？｣ ｢とっても反省してました！自分だけ 裏切って逃げ延びて恥ずかしいって！｣ ｢アトラスさんに申し訳ないと 心から謝っていたと伝えて欲しいって 懇願されましたよ！｣ ｢今は自分もゼウスに 課せられた罰で動けなくて 実際に会って謝罪できないのが辛いけど 許して貰えなくとも 兄を思う気持ちは変わらないって！｣ ｢なるほど…わざわざ 俺が罰を受けている地までフラフラと… それでいて聞くに堪えん 弾き語りをして回るのに忙しいと…｣ ｢あちゃあ…全部バレてましたか…｣ ｢…正直…今更あいつの薄情さ加減に 驚くこともないがな…｣ ｢いやぁ…なんかどうもすみません…｣     ｢…それで？お前は俺に ヘスペリデスを説得して 林檎を取ってきて貰いたいんだろう？｣ ｢…仰る通りで…話が早くて助かります…｣ ｢…そうだな…愚弟のために 嘘を付いてまで 俺を慮ろうとしたお前には 正直感心しているところがある… 協力できるならしてやっても いいところだが…｣ ｢ええ！？ホントですか！？ ありがとうございます！ てっきり庇い立てた罪で 怒られるもんかと！｣ ｢…だが天空を支えている俺は この通り動くことなどできない…｣ ｢…すまんが俺に助力を頼もうとも 物理的に無理な相談だ…｣ ｢ああ！それなら任してください！ 林檎を取ってきて貰ってる間は 俺がそれ支えときますから！｣ ｢…貴様…人間風情に この俺の代わりが務まると 思っているのか？…｣ ｢いや､こういうのは得意分野なんですよ! 貸してみてください！」 ｢…本気で言っているのか？ …冗談を撤回するなら今のうちだぞ…｣ ｢アトラスさんもずっとその体制で 肩凝ってるでしょ！ たまには歩いて運動しないと！｣ ｢戯け人間！己が分を弁えろ！ 俺の務めが軽いと侮辱するか！｣ ｢うるせえ！ 良いから貸せっつってんだろこの野郎！｣ ヘラクレスは再三の問答に 苛立ち癇癪を起こした！ そして無理やりアトラスを タックルで吹き飛ばし､入れ替わりに そのまま天空を支えて見せた！ ｢な…！なんという膂力！ それにこの俺を いとも簡単に吹き飛ばすとは…｣ ｢わかったらさっさと林檎とってこいや! なんだこんなもん 大したことねえじゃんかよ！ 両手離しでもいけるわ！｣ 天空から両手を離し 背中で転がそうとするヘラクレス ｢やめろ！ 天空を揺らすな！取ってくるから！ しっかり固定して支えといてくれ！ 頼むぞ！｣     ｢…しかしあんな力の人間がいるなんて… 俺が天空を支えている間に､人間の フィジカルに革命でも起こったのか？｣ ヘラクレスの想定外の膂力に驚きながら ヘスペリデスの元へ向かうアトラス ｢！？お父様！？ どうしてここに…天空は！？｣ ｢ああ…それが、とんでもない力の人間が 代わりに支えてくれているんだ！｣ ｢人間ですって？…お父様！ それは違うわ！ きっと地獄から遣わされた怪力の悪魔が 人間の姿でお父様を欺いたのよ！｣ ｢ということは…そのうち… この楽園に悪魔の軍勢が差し向けられる かもしれないということ…｣ ｢大変！ きっと神々の誰かが何か魔王サタンを 怒らせるようなことをしたんだわ！ 急いで私達も黙示録の 封印を解かないと！｣ 「お前達！父親が天空を担いでる間に オカルト趣味に没頭しおって！ こんなギリシャ神話に関係のない本など 拾ってくるんじゃない！｣ アトラスは娘達から旧約聖書 魔導書の数々を取り上げ 破り捨ててそのまま 口に放り込み呑みこんだ！ ｢なんてことを！お父様 さてはデミウルゴスの罠に 嵌ってしまってるんだわ！｣ ｢わけのわからんものに 没頭するのはやめて、ちゃんと オリュンポスの神々を信仰しなさい！ とんでもない呪いをかけられても 知らんぞ！｣ ｢そんな…私達に信仰の自由はないの!?｣ ｢悪魔崇拝の許可も信仰の自由も ギリシャ神話に登場してる限りは 諦めなさい！｣     ～次回、アトラスは林檎を渡すのか～   🍎アカリ🍎   ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp アカリの全貌はこちら♥️