-
次の記事
-
Blog@arabian
ジューダス・クライスト【第九話】お題:異世界転生・歴史探訪 嘘つき同士の友情・最期の晩餐 希望と空虚・臆病者・快楽に溺れる 据え膳食わぬは男の恥 正解と正しいは違う・推し活沼 「良かった。実は安心しているんだ。 君が主と入れ替わらなかったら 主は僕の進言を聞き入れてくれない 可能性が高かったからね。 歴史は簡単には覆らない。 それは君もよく知ってるだろう。 だが、君と僕ならば 歴史の外から来た僕たちならば チャンスはある」 絵守は真実ほっとしたような顔を浮かべた。 確かに、本来のイエス・キリストであれば 戦争の申し出を受ける可能性は 極めて低かっただろう。 そこへ悪魔根性の権化のような 私が入って来たのだから これは私にとっても絵守にとっても 千載一遇のチャンスなのかもしれない。 「しかし、戦うと言って 相手はユダヤの司教たちに加えて ローマ帝国そのものだろう? 勝てる見込みはあるのかい?」 「そうだな、まずは 敵勢力について把握しておこうか。 まずはユダヤの内部抗争だ。 大祭司のカヤパ。 神殿貴族のサドカイ派。 そしてパリサイ派。 まずこいつらを叩き潰す。 しかしこれを ローマ帝国が放ってはおかない。 内戦勃発の事態を把握すれば 皇帝ティベリウスは鎮圧のため即刻 ユダヤ総督を派遣してくるだろう。 ポンティウス・ピラト。 史実でキリストの処刑を決定した ローマ軍官吏だ」 「その敵勢力は結局 全部でどれくらいなんだ?」 「全て合わせて、まあ一万二千… 多くて一万五千というところだろう」 「無理じゃん」 「だがピラトの軍さえ打ち破れば ティベリウスを出し抜いて 君が王座に君臨することも夢ではない」 「だからさぁ こっちにそんな戦力ないじゃん。 寝言は寝て言えって。 いや今己たちは寝てんのか。 失敬。前言撤回するよ。 夢だからって夢みたいな寝言ばっか ほざいてんじゃねえよ能天気野郎。 そんなだから今までも 失敗してきたんだろうが。 学習能力ないんかカス」 絵守がなんだかシゴデキみたいな感じで 主人公の座を乗っ取られそうな気がした私は 本能的に絵守に対して 罵倒の言葉を浴びせていた。 少しでも絵守の評価が落ちないかなぁ という稚拙な心理欲求から出た ラインを越えた言動に 私は己がことながら己にちょっと引いた。 そして、こんなことだから 毎回読者に嫌われるんだと、一瞬自戒した。 が、言ってしまったものは もう取り返しがつかないので 私は開き直ってこのまま 無責任なアウトローを貫こうと 刹那の決心をした。 私だって限界なんだ。 文句があるなら 転生してから言ってくれたまえ。 って、私はさっきから 誰に向かって何を言っているのか。 しかして、絵守は偉かった。 私の質の悪い悪態を受けて尚 彼は一切心乱すことなく 私の問いにあくまで真摯に応えた。 「言っただろう。 僕はこの日のために三年間 準備をしてきたんだ。 具体的にはそうだな。 まず君が主の中に入るまで 主にできるだけ力を使わせるよう仕向けた。 主の力は本物でな。 まさに奇跡を起こせたんだよ。 それで兵糧の足りない地方に行っては 片っ端からパンを出して与えた。 流行り病が起こった地方に行っては 片っ端から病を治した。 戦争があれば兵士たちの傷を 片っ端から治した。 天候が乱れそうな時は 嵐を止めることもした。というかさせた」 「なにそれ。チートじゃん」 「それがそうでもない。 主は力を妄りに使うのを良しとしなかった。 そこで僕はあの手この手で主のご機嫌を操り なんとか『妄りに力を使う』 ように仕向けてきたのさ。 正直、これが一番骨が折れたよ。 なにせ主は堅物だからな。 そう簡単に乗りこなせる馬じゃないんだ」 「救世主を馬扱いか。随分と罰当たりだな」 「それくらいの胆力がなきゃ この戦に勝機を見出すこと なんてできないよ。 僕は幾度もの失敗で学んだんだ。 どんな手段でも使わなきゃならない。 勝利するに最も邪魔なものは 人間的な躊躇だということを」 なんだか絵守が遠い人のように思えてきた。 こいつは本物の戦士だ。 幾多の戦場が彼を叩き上げたのだろうか。 兎角、認めざるを得ないのは 絵守の器の大きさだ。 それに比べて私はどうだ。 私は私のお猪口にも劣る器の小ささに 己のことながら辟易した。 しかし、持って生まれた器量は 今更変えられないので 男らしくこれを受け入れ これからも己の小ささに一々文句を言わず 開き直って積極的に人の 揚げ足を取って行こうと 刹那の誓いを神と交わした。 その誓約書を受け取るや否や 即シュレッダーに投げ込む神の姿が 瞼の裏に見えた気がして 私はいつか神殺しの大罪人 となるやもしれぬと夢想した。 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁 ※公式LINEが凍結してしまったので 再登録お願いします🙇♀️ブログ一覧
-
-
前の記事
-
Blog@arabian
ジューダス・クライスト【第七話】お題:異世界転生・歴史探訪 嘘つき同士の友情・最期の晩餐 希望と空虚・臆病者・快楽に溺れる 据え膳食わぬは男の恥 正解と正しいは違う・推し活沼 「…ありのままを画布に顕すのが 画家の仕事だ。 君はそれを利用して 有名になってくれればよかった」 ボコボコに腫れた顔で鼻血を垂らしながら 絵守は呟くようにそう言った。 「なんだと?僕を刑務所送りにしておいて」 「君の拳は効いたよ。 でも君の文学には刺激が足りない。 裁判や刑務所での生活。 文人にとってこれほど垂涎な題材はない。 それに、その経験を経た君の筆は 痛み苦しみを経て 覚醒するだろうと期待した。 それでわざわざ私財の大半を投入してまで あんな茶番な裁判を拵えた。 でも君は出獄後に何もしなかった。 一冊の本も執筆しなかった。 僕は君がそんな 残念な男だとは思わなかった。 実に失望したよ」 怒りが理性を塗り潰していく感覚が 体中に広がる。 飛び掛かろうとするが 陰キャ軍団数人に取り押さえられた痩躯に これを振りほどけるほどの膂力もなかった。 クソ。 どうやら私は、ここ一番で 最悪の体躯を引いてしまったらしい。 「戯言を抜かすな。所詮は全部 お前の私的感情による仕返しだろうが」 「嗚呼、そうだよ。それは否定しない。 君に殴られた勢いで 後頭部を床に強か打ち付けたせいで 僕はくも膜下出血になったんだ。 趣味のクンクメールも もうできなくなった。 次の月には憧れの ムエタイレジェンド・センチャイ選手との 試合が決まっていたのに。 ドクターストップさ。 嗚呼、夢が壊れました。 君にその夢の穴埋めができるかい? できやしない。 今だって、この身体じゃなきゃ 脳の血腫が破裂してお陀仏だったよ」 「だったら今ここで 僕が君の相手になってやる。 織田信長、劉備玄徳、ジャンヌダルク。 数多の英雄の伝説を打ち砕き 灰燼に帰してきたこの拳 そのムエタイレジェンドの おっさんの拳とどっちが重いか。 その身で確かめてみろ」 「…なるほど君も僕と同じか」 絵守が鼻血を服の袖で拭いながら ゆっくりと立ち上がった。 「なんだと?どういうことだ」 絵守の目に全てを察したような なんか大悟したみたいな光が宿っている。 ムカつく。 なんだ物語のキーパーソン みたいな面しやがって。 相変わらず鼻につくすかしっぺ野郎だ。 「僕も色んな歴史を破壊してきたよ。 気付いたら僕は アレクサンドロス大王になってた。 だがグラニコス河畔で 傭兵隊長メムノンにすら敵わず敗走し マケドニアは滅びた。 フリードリヒ大王になっては 三人の女帝にボコボコにされて プロイセンを陥落させた。 閻魔大王になっては 地獄に来たフリーザに瞬殺された。 僕なりに全身全霊を賭してやった結果が 悉く英雄たちの顔に泥を塗る有様さ。 自分は凡人だと つくづく思い知らされたよ」 なんということか。 絵守も私と同じ境遇 どころか絵守はきちんと目の前の問題から 逃げずに戦ってきたと言う。 それに絵守は何故か 大王にばかり転生している。 神はこんなところでも 絶妙に嫌な依怙贔屓をしている。 なんだか益々神のことが嫌いになりそうだ。 まあしかし俺のやってきたことを 鑑みればそりゃ納得なんだけどさ。 でもサイコロは振ってみないと どんな目が出るかわからないじゃない。 そこんとこどうお考えなんですかねぇ。 ねぇ神様よ。 なんて天に向かって唾を吐いていると 絵守が話の流れでとんでもない問いを 私に投げかけてきた。 「君もそうなんだろう? 懸命にやっても 英雄のように、そう簡単に 運命は変えられなかったんだろう?」 急な精神的奇襲に私は周章狼狽した。 しかしここで取り乱すわけにはいかない。 しかしながら考えれば必ずや取り乱す。 というわけで私は考えることを放棄して 喋ることのこれ一切を オートマティックな口先に委ねた。 「ええ?嗚呼、そりゃもう大変だったよ。 信長の時は秀吉が今川に寝返って捕らえられ 劉備の時は諸葛亮と関羽の喧嘩を 仲裁しようとして叩き斬られ ジャンヌ・ダルクの時は 色気づいたシャルルに犯されて 神の声が聞こえなくなった。 英雄と称えられた 偉人の本性がこうも浅ましいとはね。 今生の時分に君にやられたことよりも よっぽど酷い裏切りの連続さ。 ぼかぁもう いよいよ人が信じられなくなりそうだよ」 私は戦慄していた。 何がって、己のこの 悪魔のような性根の腐り様にである。 絵守は、目を見ればわかる。 奴は本当に一生懸命、運命に抗おうと 英雄たらんとして勇気を振り絞って 震える足を奮い立たせて戦った。 負けても、負けても、諦めなかった。 それをば私ときたら何か。 最初の最初から鬱を口実に諦めから入り ただただ怠惰と淫蕩に耽り何もしなかった。 その癖、あろうことかその上から重ねて 尊き英雄に汚名を着せて己が卑劣を誤魔化し 首を垂れるべき偉人に 罪を擦り付け続けている。 しかもその魂胆は偏に 絵守なんかに見下げられてたくないという 矮小極まる保身の一心からである。 己はそれで良心が痛まぬのか。 痛い。もう胃がキリキリする。 というか最初から胃弱なのだろうか。 この身体はどこまで脆弱なのか。 いや、脆弱なのは己の心より他ない。 これ以上、他責を重ねては 流石にふてぶてしい己の心も その下劣さを保てない気がしてきた。 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁 ※𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦開設したので フォローお願いします✨ ※公式LINEが凍結してしまったので 再登録お願いします🙇♀️ブログ一覧
-
