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ジューダス・クライスト【第六話】お題:異世界転生・歴史探訪 嘘つき同士の友情・最期の晩餐 希望と空虚・臆病者・快楽に溺れる 据え膳食わぬは男の恥 正解と正しいは違う・推し活沼 長い卓が まるで石のように静かに横たわっている。 私は、その中央に鎮座していた。 左右に、十二の男たちが波のように連なる。 背後に並ぶ窓から 夕刻とも夜ともつかぬ淡い光が差し込み その者たちの輪郭を 冷ややかに浮かび上がらせた。 陰気な、実に陰気な奴らだった。 これは、嗚呼、あの時の 桶狭間前夜のヤタケタ酒宴の時のようだ。 あの酒宴は酷かった。 盛り上がりもクソもなかった。 今から死のうってのに もうみんな己の葬式を始めているような そんな暗くて陰鬱で 酒はノニジュースのような飲める地獄と化し 肴はシュールトレミングの如き 腐った臓腑の風味を醸し出していた。 私が宴席を盛り上げようと 洒落を言っても悉く駄々滑り 部屋は風もないのに 地獄の冷気に包まれているかのような 有様だった。 あんなコキュートスな宴はもう懲り懲りだ。 というかなんだ今度は。 私は女として うまくイングランドに取り入って さる侯爵の愛人として 安泰な生活を手に入れたはず。 なのになんでまた 別世界に飛ばされなきゃならんのだ。 帰せ。私をドンレミ村に返せ。 大体なんだこの胡乱な衣は。青と赤って。 進むのか止まるのかはっきりしろよ。 もしくは中間とて黄金色とかにしろよ。 蒼ざめて血に染まるみたいな暗示かこれは。 なんか卓にはパンと杯置いてあるけども。 なんだこんな粗末な食事。 こんなもんが最期の晩餐とか正気ですか。 と思って男たちの顔を見渡した私の目は ある一点で止まった。 一瞬にして顔が蒼ざめた。 次の一瞬で、顔色が血の気一色に染まった。 私の右隣。 長髪の陰キャと 白髪のおっさんのその向こう。 そこに、絵守がいた。 奴の顔は バタ臭い西洋人のものになっていたが 私にはわかる。 何故かわかる。 何故かは知らんが とにかくこいつは絵守だ。 青い外衣を身に纏って項垂れていた絵守は しかしてやがて私と中空で目が合った。 絵守の方でも私と同じ 知覚現象が起こったのであろう。 数舜おいて、奴の顔色が 一瞬にして外衣と同じ色に染まった。 気付くと私は卓を乗り越えて 絵守に飛び掛かっていた。 「貴様! ここで会ったが百年目だこの野郎!」 私の右ストレートが絵守の鼻っ柱を マトモに捉えた。 絵守は椅子ごとひっくり返って吹っ飛んだ。 なんだか知らないうちに 私のパンチは何人もの人を殴り 屠ってきたかのように鋭くなっていた。 おかげでいつぞやの時のように 手首を捻らずに済んだ。 って、あれは私の妄想の中の話だった。 いや、違う。 私はその後に現実でこいつをぶん殴って 豚箱送りになったのだ。 その時もしっかり手首をグネっていた。 しかし なんとも清々しい気分じゃあないか。 このわけのわからん 夢の世界に来てからというもの 数多の時代で、私は何度 この顔を殴ってやりたいと 神に願ったことか。 それに、この世界には 悪辣な公安もヤメ検軍団もない。 ざまあみやがれ。 嗚呼、夢が叶いました。 否。否否否。 こんなもので済むと思うなよ。 もしこいつをここで仕留めきれずに 元の世界に戻ったりしたら こいつはまた前と同じ手口で 俺を豚箱に送ろうとするに違いない。 そうはいくか。 その前に トニーと同じところに逝かせてやるよ。 …って、誰だそれ。 記憶を混濁させながらも 私は勢いそのままに絵守を追撃。 馬乗りになって 奴の顔面をパウンドで殴打した。 「貴様がッ!死ぬまで! 殴るのを辞めないッ!」 「イエス様!お気を鎮めてください!」 「主がご乱心だ!」 「はやくユダから引き離せ! 死んでしまうぞ!」 十一人の陰キャが慌てて止めに入り 私を羽交い絞めにした。 「離せ! そいつだけは生かしちゃおけねえ!」 「ではイエス様の言う裏切り者とは ユダのことなのでしょうか?」 「裏切り者?嗚呼そんなもんじゃ済まねえ。 こいつは俺の名誉と引き換えに 己が地位を手に入れやがった 悪辣な簒奪者だ」 そこまで言って 私は息が続かなかなくなった。 どうやらこの身体の持ち主は 大してフィジカルに余裕がないらしい。 🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁 ※𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦開設したので フォローお願いします✨ ※公式LINEが凍結してしまったので 再登録お願いします🙇♀️ブログ一覧
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ジューダス・クライスト【第四話】(お題:異世界転生・歴史探訪 嘘つき同士の友情・最期の晩餐 希望と空虚・臆病者・快楽に溺れる 据え膳食わぬは男の恥 正解と正しいは違う・推し活沼) 「あなた、本当に神の声を聞いたの?」 青龍偃月刀の錆となったはずの私の前に 地味な恰好の バタくさい顔をした女が立っていた。 外国人。それも一人ではない。 私は西洋っぽい異国で 大勢の老若男女に取り囲まれていた。 全員、随分とボロい恰好をしている。 男は農作業用のシャツとズボンに革靴。 女は長いワンピースかエプロンに頭巾。 みんな似たり寄ったりで田舎臭い感じだ。 そしてなんと、私も周りの女達と同じような 長めのワンピースを身に纏っていた。 馬鹿な。 私に絵守のような趣味はないぞ。 といって絵守にそんな趣味が あるかどうかは実際知らない。 知らないが、あの男のことだ。 絵のモデルが見つからずに 自分で女物の衣服を着て 鏡の前で色々着替えているうちに 「あら意外と似合うじゃない」 みたいな感じでそっちの道に目覚め 私と会っていた時分にも ひょっとしたら下に 女性用のランジェリーを身に纏って 得々としていたのかもしれない。 なんて悍ましい男だ。 よし、元の世界に戻ったらきっと 生放送のテレビ前で奴の衣服を剥ぎ取り その歪んだ性癖を白日の下に晒してやろう。 待ってろ絵守。 お前の出世も私が今生に戻るまでだ。 それまで束の間の栄華を 謳歌しているがいいさ。 くわつはつはつはつ。 なんて文学的な笑い声を 地の文であげている私は まだ文学に未練があるのだろうか。 なんだか悲しくなってきた。 そもそも夢の中とはいえ 何でこう何度も死ななきゃならんのか。 馬鹿は死んでも治ってないし。 てことは何かい。 私の文学はまだ枯れてないってことかい。 じゃあ私は私の文学に 決着を着けに戻らなきゃならない。 そう、まだ私の人生は ちゃんと終わっていない。 張り詰めていた思いが溢れ 涙が自然と頬を伝った。 「私は行かなければならない」 口からも、想いが溢れていた。 「またご神託か」 「正気で言ってるのか? 王太子の元へ行くとか フランスを救うとか」 「でもお前まだ今年で十三だろう」 男達が嘲笑交じりに冷やかすのを遮って 井戸端会議のリーダー格っぽい オバハン二人が私の弁護を買って出た。 「年なんか関係ないさ。 この子はね、村はずれの妖精の木に 毎日一人で祈ってるんだよ」 「そうさ。この娘ほど信仰心が厚けりゃ 神様もほっとかないだろうよ。 なあジャンヌ、今日も声を聞いたのかい?」 なんだ?一体この人達は 何を言っているんだ?声?嗚呼、声ね。 そりゃ毎日聞こえているよ。 あの塹壕戦の時もそうだった。 ん?塹壕戦?なにそれ? なんかふっとリアルな光景が… そういえば、元の世界で 希死念慮を誤魔化すために Netflixでプライベート・ライアンを つけっぱにしてた時があったっけ。 嗚呼そうか。 あの時も絵守の声が聞こえていた気がする。 これは大賞を狙えそうですぞ! とかなんとか。嬉しそうにニヤついた顔で。 「声なら聞こえます。かつての友の声。 今の彼はサタンの手先です」 「かつての友?イングランドのことかい? 奴らが友なわけあるかね」 「でも元は同じ国みたいなもんだったろ」 何故か私の独白に共鳴して 井戸端会議が続いていく。 奇跡だ。私は奇跡を起こしている。 さながらオルレアンの乙女だ。 というか私はさっきジャンヌって 呼ばれてなかったか? それになんだか体が怠い。 凄まじく怠い。 股から何か魂が抜けていく ような感じがする。 意識が遠くなる。 そして私はそのまま路ばたに突っ伏した。🍎アカリ🍎 X 𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁 ※𝐈𝐧𝐬𝐭𝐚𝐠𝐫𝐚𝐦開設したので フォローお願いします✨ ※公式LINEが凍結してしまったので 再登録お願いします🙇♀️ブログ一覧
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