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Blog@arabian行列と覚醒とイチゴ大福巷で人気の和菓子屋に並んでみた。 元来、面倒くさがりの私が 行列に並ぶなんて滅多にしないことだ。 でも、人生 たまにはチャレンジ精神を発揮しないと 心が不貞腐れてしまう。 ところが、並んで早々に後悔した。 前後からじわじわと迫りくる圧迫感。 人々の微かな苛立、 淡い期待、小さな嘆息。 それらが入り混じるこの密度の高い空間で、 私はただひたすら立ち尽くしていた。 「これなら鬼コーチに 罵声を浴びせられながら 校庭を何周も走る方が マシなんじゃないか?」 そういえば、あの体育の先生、 元気にしてるかなぁ。 連想ゲームのように郷愁に耽っていたら、 いつの間にか私の番がきていた。 しまった。完全に油断していた。 注文も決めてないし、 財布も準備できていない。 背後からじりじりと焦燥の視線を感じる。 一刻も早く注文してトンズラしなければ! 「えっと、あの!イチゴ大福!」 すると、店員さんがにこやかに微笑み、 口を開いた。 「イチゴ大福は多種類ございます。 形や色、餡の種類も選べます。 例えばこちらのイチゴ大福は…」 とても混雑しているのに、 一切の急かしもせず、 全ての客に平等なホスピタリティを 発揮するその姿勢。 まさに 絹のように きめ細かいおもてなし である。 商魂たくましいだけのインスタントな 「木綿接客」には、 ぜひこれを見習っていただきたい。 その間にも、 私の背後のプレッシャーは 増大し続けていた。 しかし、途中から私は 悟った 。 「あ、もう、いいや。 和菓子屋の風情を楽しもう」 そう、私はプレッシャーを 乗り越えたのだ。 同調圧力を超えた先にこそ、 ニュータイプとしての覚醒がある。 重力に心を縛られた連邦が腐敗したのは、 所詮、外圧に呑みこまれることしか できなかったオールドタイプの 必然的結末だったわけである。 だがしかし、 人に迷惑をかけてはいけない。 これが同調圧力かって? いや、そこが曖昧だからこそ、 人生はおもしろいのだ。 ああ、イチゴ大福、おいしい。 🍎アカリ🍎 ꫛꫀꪝ✧‧˚X 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁ブログ一覧
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Blog@arabianお喋りマッサージ店の罠肩が痛い。 ここしばらくの無理が祟ったものか どうにもこうにも重く、張っている。 私は一人 近所にできたばかりの マッサージ店の前に立った。 表の立て看板には 子供が殴り書きしたように 「まっさーじ!もみほぐし!」とある。 風情など一切考慮しない 潔いほどの正直さである。 斯様な看板があるものだから 入店にはどうも気後れするのだが かといって、肩の痛みを放置すれば 今後ますます悪化するのは目に見えている。 私は観念し、扉を押した。 すると、店の奥から 異様に明るい声 が飛んできた。 「いらっしゃい!肩こりひどいね? 見るだけでわかるよ!」 私は 知らぬ間に そこまで分かりやすい人間に なっていたらしい。 何か一言、反論しようかとも思ったが どうせ今さら抗ったところで 肩こりが治るわけでもない。 私は黙って施術台にうつ伏せになった。 と、店主は力強く肩を押しながら 唐突に言った。 「いやぁ、昨日ね 不思議な夢を見たんだよ!」 嫌な予感がする。 「宇宙人がね、私の店に来たんだよ! 最初は普通の客かと思ったんだけど 肩を押したら『ピピッ』って音がしてね!」 私は 目をつぶったまま ゆっくり息を吐いた。 なるほど。そういう種類の御仁か。 こういう時 必要以上に相槌を打つと 余計に話が長引く ものである。 私は努めて無言を貫くことにした。 だが、店主はそんな客の態度など 一向に意に介さぬ 様子であった。 「でね、その宇宙人が言うには 地球人の肩こりは重力のせいだって!」 なるほど、それならば 我々が火星へ移住すれば 肩こりも軽減されるというわけか。 実に結構な話である。 私は半ば諦めながらも 黙って押され続けていた。 しかし、確かにこの店主 話は奇天烈だが、腕は悪くないらしい。 肩の痛みが徐々に消えていくのを感じた。 が、その矢先 再び店主が口を開いた。 「ところで君 前世はカエルだったかもしれないね!」 私は うつ伏せのまま顔を上げた。 「…カエル?」 「そう! なんだかそんな気がする!」 私はこれまで生きてきて 自分の前世を疑われた経験はなかった。 *** 施術が終わる頃には 肩こりはすっかり解消されていた。 しかし、それと引き換えに 心の疲れは倍増していた。 私は支払いを済ませ そそくさと店を出ようとする。 「また来てね!」 店主は 実ににこやかに 言った。 私は微笑みを返しながら 「いや、もう十分です」と思った。 が、数日後 私はまたこの店の前に立っていた。 何が私をここへ向かわせたのかは 今となっては分からない。 🍎アカリ🍎 ꫛꫀꪝ✧‧˚X 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁ブログ一覧
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