本が売れているようで
編集者から珍しく電話がかかってきた。
2月に出した短編集がランキングに入って
地上波にその名前が
表示されるかもしれないとのこと。
何でも「殿様の昼飯」という番組らしい。
ということは
ばらずし・お吸い物・茶わん蒸し
などに並んで私の本がグズグズに煮込まれ
ほどよい糊のようになって
供せられるということだろうか。
その場合、もしハードカバーの
ポリプロピレンが溶けきれずに残り
殿様の喉に詰まり
あわやご逝去などの事態に到ったならば
私は一体どうなってしまうのだろうか?
その殿様が古ローマの
ヘリオガバルス並の暗君だったならば
ワンチャン私の石像がたてられたり
何となれば何万石かもらって
地方大名として
左団扇で暮らせるかもしれない。
しかし、普通に考えれば切腹であろう。
その場合、介錯人は
こちらで頼めるのだろうか?
今も伝説の首切り役人
山田浅右衛門の家業は
続いているのだろうか?
もしかの山田浅右衛門の
紙一重の秘技を目の当たりに出来るのならば
今際の際に是非ともお願いしたいものだ。
と、いつものように妄想が白痴の彼方に
飛び立とうとするのはおいといて。
これは結構凄いんじゃないか?
商業出版ほどの広告も営業もなしに
これと言って推せるような
パンチラインになる経歴もない帯の本が
しかも、しがない一夜職の女の本が
直木賞作家などと
同じランキングに入るなんて。
「これは結構凄いんじゃないですか?」
「まあ、急遽差し込みのニュースや
撮れ高のある企画とかが入ってきたら
放送されないかもしれませんけどね」
「そんなこと言わずに
とりあえず一緒に喜んでくれといた方が
××さんの功徳にもなると思うんですがね」
「そうですか、まあ売上が正式に出るのは
五月くらいになりますから」
「じゃあ五月は五月晴れですね」
「まあ五月雨にならないよう祈りましょう」
「あの、まあまあ言うの
辞めてもらってもいいですか?」
私はヒロユキのような口調でそう言って
電話を置いた。
そして無事、放送に乗った。
更には後日
三省堂池袋書店に行ってみると
週間ランキングノンフィクションで
一位になった我が本が
棚にふてぶてしくふんぞり返っていた。
帯に「西村賢太氏推薦!」
と書かれているような幻が一瞬見えた。
今思えばあれは
私の中で浮世と黄泉路の境界が
ノンフィクションと私小説の間くらい
曖昧になりつつあったためだろう。
それにしても、まさか初出版した本が
あのアドラーの隣に並ぶ日が来ようとは。
明日は空から
グングニルが降ってくるんじゃないかしら。
とにもかくにも
地上波に出た上にこの上守備である。
さしもの私もこれを自慢…
いやさ宣伝しなければなるまい。
それが渡世
いや、人情、いや仁義
または十界互具における
一念三千の法理の顕現であろう。
私は一体何を言っているのか。
わからない。
そもそも私が写メ日記で
こんなことを嘯いて
果たして喧伝になるのか。
それとも宣伝カーをレンタルして
渋谷スクランブル交差点の真ん中に乗りつけ
壇上で泡沫候補の断末魔の如く
「ノンフィクション!ノンフィクション!」
と叫べぶべきなのだろうか。
わからない。私には何もわからない。
🍎アカリ🍎
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