～前回のあらすじ～ まあテュポンとエキドナの子なら 余裕っしょ   ｢…まさか貴様が そこまでの力を持っていようとは…｣ ｢いやはや、ハデス様に そう言われると恐縮です！｣ ｢…想定外の事ではあるが… 冥王に二言はない！ ケルベロスを連れていけ！｣ ｢ありがとうございます!大事にします!｣ 「待て！やるとは言っていない！ 我の愛犬だぞ！ちゃんと散歩したら 連れ帰って来なさい！｣ ｢わかってますって！ ちょっとティリュンスまで散歩させて 帰ってくるだけですから！ 任せてください！｣ ｢うむ…しばしの別れだ… 達者でな…ケルベロス…｣ ｢…この人、冥王って みんな怖がってるけど… ただの動物好きの良い人なんじゃ…｣ ｢…あ！ちょっとハデス様！ そういやお願い事があるんです！｣ ｢ん？なんだ？まだ何かあるのか？｣ ｢あの、ここの途中で椅子に 捕らわれてた人間のことなんですけど…｣ ｢…ああ…あいつらか… あれがどうかしたか？｣ ｢…あのテセウスってヤツは 俺の友達でして…その… 何をしたのかは知らんのですが…｣ ｢あいつらは我の妃、ペルセポネを誘拐 しにきた身の程知らずの馬鹿どもだ｣ ｢ええ！そうなんですか！？ テセウスのヤツ何考えてんだ！！｣ ｢まあ…ペルセポネを 我がものにしようとした愚か者は ペイリトオスとかいう馬鹿の方で…｣ ｢もう１人のテセウスとかいうのは 自分がスパルタ王妃ヘレネの誘拐を 手伝って貰ったお返しに 手を貸していたようだがな…｣ ｢う～ん… 何というホームラン級の馬鹿…｣     ｢しかしハデス様！ テセウスはペイリトオスへの恩義から 断れずに手を貸したわけでしょう？｣ ｢なら情状酌量の余地があっても いいんじゃないかと思いませんか？｣ ｢…我にテセウスを許し…解放しろと？｣ ｢要件だけ言っちゃうとそうなります！｣ ｢百歩譲って…恩義から断れずに… としても、手を貸した時点で 冥界の恐ろしさを軽んじ 冥王たる我を愚弄したことには変わらん｣ ｢いやいや！俺が知ってるこいつは ハデス様の恐ろしさも よく理解してました！ 馬鹿だから見つからずにいけると 思っちゃったんですよ！｣ ｢あとほら！こいつ一応 ラビリントスに潜って ミノタウロス退治したことあるから そのせいで冥界もイケると 思っちゃったんです！きっと！｣ ｢…こいつはあの ミノタウロス退治の英雄なのか？｣ ｢実はそうなんです！ そういう半端な成功体験ってのは 人を狂わせるもんでして！｣ ｢フン…貴様にとっては ミノタウロス退治すらも 半端程度のものか…そうだろうな…｣ ｢戦ったことはないですが！ ケルベロスに及ぶべくもないでしょう！｣ ｢…貴様がテセウスのことを そこまで擁護するというなら… 世にとっては賊でも…貴様にとっては 真の友人なのだろう…｣ ｢…まあ小さい時からの腐れ縁でして… お恥ずかしい…｣ ｢そしてテセウスは賊ではあるが… ミノタウロスを倒した英雄でもある…｣ ｢…よかろう！貴様の武勇に免じて テセウスは解放してやろう… 後は好きにしろ！｣ ｢さすが冥王様！話がわかる！ …ついでにペイリトオスも…｣ ｢それは絶対に許さん！｣ ｢ですよね！ まあ自業自得だペイリトオス！ 良い奴に生まれ変われよ！｣     その後、ヘラクレスはテセウスを解放！ ケルベロスを連れて カロンのところへ戻って来た！ ｢げ！？嘘じゃろ！？ ホントに戻ってきよったあやつ！｣ ｢お～いジジイ！ちょっとデカイ犬と 怪我人いるけどよ！何とか乗るだろ！｣ 乱暴にケルベロスとテセウスを 船に放り込むヘラクレス！ ｢やめろ！船がひっくり返ったら どうしてくれるんじゃ！｣ ｢なんとかなるって！まあジジイには この船漕ぐの大変だろうからよ！ 俺が代わりに船頭やってやらあ！ 櫂貸しな！｣ 凄まじい膂力で船を漕ぐヘラクレス！ 櫂の一薙ぎ毎に津波のような 大水が後方へ破裂し、船は爆発的な 推進力でもって進んでいった！ …それに比例して船の揺れも 尋常ではなかった！ ｢な…！ちょ…！ゆっくり… ゆっくり漕いでくれええ…！｣ …この後、冥府の渡し守カロンは ヘラクレスを通した件で ハデスに罰せられ、１年間投獄されて 鎖に繋がれたそうな…可哀想に！ そしてヘラクレスは冥界を脱出！ 地上に連れ出されたケルベロスは 初めて見る太陽の光に驚いて吠えかかり その時､口から激しく飛び散った唾液から 猛毒植物である トリカブトが発生したとか そして助け出したテセウスと 地上にて解散したヘラクレス ｢もう二度と悪さすんじゃねえぞ～！｣ …この後テセウスは 今までしてきた悪さが祟り 恨みを買った敵対者たちに 連合して攻められ 故国を追われ、亡命先で 野垂れ死ぬ運命を辿りますが… 詳しくはテセウス編をご参照ください…     そしてティリュンスにケルベロスを 連れて戻ることに成功したヘラクレス ｢エウリュステウス！これで最後だ！ 目当ての犬を連れてきてやったぞ！ 特と見やがれ！｣ 冥府の番犬ケルベロスは エウリュステウスを見ると、恐ろしい 唸り声をあげて飛び掛からんとした！ ｢どうどうどう！｣ ヘラクレスが宥めると 途端に大人しくなるケルベロス 元々人懐っこい性格なのか 帰路の最中でヘラクレスに すっかり手懐けられていた しかし、ケルベロスを 一目見ただけで当のエウリュステウスは 恐怖に凍り付いており 襲われようとした時には 魂が抜けかけていた ｢もうたくさんだ！ 冗談じゃない！早く！ その化物を冥界に連れて帰ってくれ！ 頼むから！｣ 泣き叫び懇願するエウリュステウス ｢いや…あんたらが 連れてこいつったんじゃん…｣ 地上に連れてこられたケルベロスは あまりにも獰猛な為 ヘラクレス以外誰も扱うことが出来ず… 元々の約束通り ヘラクレスがすぐに冥界へ連れて帰り 無事ハデスの元へと送り返された ｢おお！ケルベロス！ 地上の者に意地悪されなかったかい？｣ ｢いやいや！怖くて誰も 近づきさえしない有様でしたよ！｣ ｢…こんなに愛らしいというのに…やはり 地上の者達の品性には問題があるな…｣ ｢全くですね！よーしよしよし…｣     冥府の番犬ケルベロスさえも ねじ伏せたヘラクレスに エウリュステウスは すっかり意気消沈していた ｢デルフォイからの神託は 全て果たされた！ 良くやったぞヘラクレス！ お前のような英雄を頂いた 我が国も鼻が高い！｣ ｢私とて辛かったのだ… あのような無理難題を課すなど… 私はいつも反対したんだ！｣ ｢しかし権謀術数渦巻く 宮廷内の権力争い激しく… 私はお前のことを怖れた部下の暴走を 止めることが出来なかった！｣ ｢許せヘラクレス！ 私は王でありながら… 権力欲に取りつかれた愚かな部下達の 傀儡になることしか出来なかったんだ!｣ ｢ところで！この地にはお前にとって 悪い思い出も多いことだろう！ ここに晴れてお前の解放を宣言する！｣ ｢さあ！お前は自由だ！ 何所へ也と行くと良い！ もうこんな悪い思い出の土地に 戻ってくる必要はないんだ！｣ ｢この国はお前にとって狭すぎる！ 外に出て！世界をその手に握れ！ お前にはそれが出来る！ 私はそう信じているぞ！｣ デルフォイの神託は 全て果たされたとして ヘラクレスを解放することを 宣言したエウリュステウス ｢…はああ…あんな化物を 膝元に置いておけるものかよ… これで体よくミケーネから 追っ払えたらいいんだけどなああ…｣     ～次回､甦れ！ヘラクレスの妻メガラ！～   🍎アカリ🍎   ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp アカリの全貌はこちら♥️