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Blog@arabian
愚愛の祭壇おぱんちゅうさぎは 脳みそがほぼないに等しい。 これは公式に定められていることだ。 だが、それは決して空虚を意味しない。 彼には、たしかな勇気がある。 ただの蛮勇と片付けてしまうには、 あまりにも純粋な、潔癖な正義感がある。 私は軍隊蟻を思い出した。 あの小さな生き物たちも、 脳みそはほぼないのだ。 それなのに、 彼らは迷うことなく前進し、 隊列を崩すこともなく、 己が肉体を繋げて橋を架ける。 その姿はまるで神の意志を 体現する機械のようでもあり、 また、天使のようにも思える。 天使。余計な思考を持たぬものたち。 神の布いた法を粛々と執行する者たち。 そこに、情状酌量などという 甘やかな概念が入り込む余地はない。 ただひたすらに、 善を善とし、悪を悪として断罪する。 完全なる秩序。神が作ったシステム。 ならば、おぱんちゅうさぎもまた、 そのようなアルゴリズムに 支配されているのだろうか。 いや、違う。 おぱんちゅは、笑う。怒る。泣く。喜ぶ。 彼には、感情がある。 つまり、おぱんちゅは人間なのだ。 思索せず、 ただ命令に従う機械や天使とは違う。 彼は、天と地の狭間に立つ 曖昧な存在なのだ。 もし、おぱんちゅうさぎが 純粋な天の使いだったなら、 どうなるだろうか。 私は、今までクレーンゲームで 救い上げたおぱんちゅたちを、 天使の階級順に並べてみることにした。 最下位のエンジェル。 これは人間との橋渡しをする存在だ。 だから、人間に最も近い。 私は、一番下の段に、 媚を売るのが上手な、 愛らしいおぱんちゅたちを置いた。 その上に、アークエンジェル、 プリンシパリティを並べる。 まだ、人間的な面を色濃く残している。 次に、中位の天使たち。 パワー、ヴァーチャー、ドミニオン。 このあたりになると、 悪魔と交戦することが多いため、 堕天の危険性も高い。 私は、中段に、 悔恨や悲痛に打ちひしがれた 表情のおぱんちゅたちを並べた。 そして、最上段。 ソロネ、ケルビム、セラフィム。 もはや人間の目では捉えられぬ存在。 上位の天使の姿ほど醜悪とも言われる。 悪魔が人間を誘惑するために 美しき姿をとるならば、 その対極にある天使の姿は、 むしろ恐ろしくあるべきだ。 私は、一番上に、 邪悪な笑みを浮かべるおぱんちゅや、 憤怒に駆られ歯茎を剥き出しにした おぱんちゅを並べた。 ダメだ。これでは地獄ではないか。 天の階級に従い並べ祀ろうとも、 どうしたって悪魔的な 可愛さが抜けきらない。 おぱんちゅうさぎは、 蟻のような機械仕掛けのアルゴリズムにも、 神の作ったシステムにも従属しない。 彼は、ただ、己の信じる善を貫こうとして、 実に馬鹿馬鹿しく、益体もなく、傷つく。 だが、それでもなお、善行を辞められない。 それは全く確かに愚かな人の姿だ。 天使のような人というのは、 只人の目には 一等滑稽に映るものかもしれない。 私は、祭壇のように積み上げられた おぱんちゅたちを見上げた。 私を惑わす新しき地獄。 そのなんと愛らしいことか。 🍎アカリ🍎 ꫛꫀꪝ✧‧˚X 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁ブログ一覧
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Blog@arabian
津軽への道ロシアの北部では、 二階の窓から水を撒くと、 地面に着く前に凍りつくという。 動画で見た。ひゅう、と風が鳴る。 恐ろしくなって、 思わず携帯を握る手が震えた。 このような世界に生きる人々と、 果たして私が、 同じ霊長類に属しているなどと言えるのか。 私は寒さに脆弱な人間である。 ロシア人は、きっと違う生き物だ。 冬になると、私はエゾモモンガに擬態する。 防寒のためである。 厚手のトレーナーに、 モコモコのパーカー、 さらにオーバーサイズの ジャケットを羽織る。 そこへ大判のマフラーを ぐるぐる巻きにして、 極めつけは頭部をすっぽりと覆う防寒帽。 かくして、私の姿は エゾモモンガそのものとなる。 だが、それでも寒い。 どれほど着込んでも、 関節の隙間から忍び込んでくる 冷気には抗えない。 もう衣服に頼るのは限界である。 最後の手段として、私は化学の力を借りる。 酸化鉄の発熱反応、 すなわちホッカイロの登場である。 背骨に沿って三枚、腹部に一枚。 こうして私はようやく冬と対等に立つ。 都会の冷たさは、 大量のホッカイロと共に乗り切れる。 人の温もりなどなくとも、 生きていけるのだ。 そう思っていた。 だが、東京の最低気温を調べてみると、 せいぜい零度程度ではないか。 ちょっと待ってほしい。 私はもう、ロシア人を 同じ霊長類と思ってはいない。 それどころか、 彼らと肩を並べることすら恐れ多い。 けれども、日本にもいるのだ。 ロシアの寒さに肩を並べるような人々が。 東北の冬を見よ。 仙台はマイナス十度にもなるという。 津軽に至っては、どれほどの寒さだろう。 考えただけで震えが止まらない。 もし私が迂闊に旅に出て、 囲炉裏があるから 大丈夫だろうなどと高を括り、 電気もガスもない古びた民宿を借り、 薪も火種もなく、夜を迎えたなら、 翌朝には間違いなく凍死している。 常識外れの数ホッカイロを貼ろうと、 尋常ならざる量 ヒートテックを重ね着しようと、 そんなものは東北の冬には無力であろう。 そして、わざわざ東京の荷物を 見せびらかしにだけやってきて 没した変人として語り継がれるのだ。 そうか、私は太宰治の故郷を 巡ることすらできぬのだ。 仕方がない。 今夜はせめて「津軽」を 枕元に置いて寝ることにしよう。 もしも、気温を凌駕するほどの熱が 私の心に灯り、 旅路を決意する日が訪れたなら、 そのときは出立の前に必ず「晩年」 と題する本を一冊 書き残していくことにしよう。 🍎アカリ🍎 ꫛꫀꪝ✧‧˚X 公式LINE ✉️arabi_akari_otoiawase@outlook.jp ご予約詳細は🈁ブログ一覧
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